ロシア:北朝鮮核実験に強硬姿勢 「深刻な脅威」ととらえ

2009年5月28日 23時40分

 【モスクワ大木俊治】北朝鮮の核実験を巡り、ロシアの強硬姿勢が目立っている。ロシアは戦略核軍縮条約の交渉進展を優先課題に米政権との関係改善を目指しているほか、日本に対してもプーチン首相の訪日で見せたように関係強化に動いている。核実験で自国の安全が脅かされるとの判断に加え、日米との信頼関係構築に向けた機運に水を差したくないとの意向が背景にあるとみられている。

 ロシアのシンクタンク「米国カナダ研究所」のクレメニュク副所長は、ロシアの北朝鮮に対する今回の強硬対応について「ロシア極東の安全にとってより深刻な脅威ととらえていることに加え、米国や日本に対しロシアが信頼できるパートナーだと見せたい意思もある」と分析する。

 北朝鮮が、国連安保理の議長国を務めるロシアにこれまでのように日米をなだめる役割を期待した可能性もあるが、「そうだとすれば北朝鮮は完全に見誤った。議長国の責任はきわめて重い」と同副所長は指摘する。

 4月の北朝鮮のミサイル発射でロシア外務省は「人工衛星の可能性もある」と性急な判断を避ける姿勢を見せたが、今回の核実験ではその日のうちに「明白な国連決議違反」と非難する声明を発表。27日には北朝鮮の駐露大使を呼んで深刻な懸念を伝えた。週内に予定していたバサルギン地域発展相の訪朝についても延期とした。

 ただ、外務省のネステレンコ報道官は28日の会見で、「決議に反対する理由はない」と述べる一方、「制裁という言葉は使うべきではない」と慎重さも見せた。外務省の一部や専門家から「北朝鮮を孤立させるべきではない」と強硬姿勢に自重を求める声も出ており、最終的な立場は固まっていないとの見方もある。

 今回、北朝鮮は韓国との「休戦協定に拘束されない」と表明するなどこれまでにない対応を見せ、中国やロシアを含めた6カ国協議の枠組みでは制御できないことが明白になった。北朝鮮問題でロシアは、6カ国協議の枠組みを維持することを最重要課題としてきただけに、新たな対応を迫られることに当惑しているようにも見える。

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