一般会計規模13兆9200億円の09年度補正予算が29日成立する。国会でも「アニメの殿堂」など無駄の一端が明らかにされたほどの、大盤振る舞いだ。基金の乱造にみられるように要求官庁が内容を詰め切れない事業も少なくない。景気の急速な落ち込みに、とにかく、政府として大がかりな追加措置を打っておけば、国内外に言い訳ができるという予算と言わざるを得ない。
それだけでも大問題だが、さらに気掛かりなのは歳出の大方を国債の増発で賄う不健全予算であることだ。新規国債発行見込み額は09年度当初予算での33兆2900億円に、補正で10兆8100億円が加わる。しかも、それで終わらないだろう。税収がはかばかしくないからだ。
08年度の税収見込みは当初段階で53兆5000億円だった。それが2次補正予算後では46兆4000億円に減額された。しかし、企業収益の急速な悪化で法人税は急減、個人所得税も失業率の上昇や賃金抑制で当初見通しを下回っている。決算段階では、さらに、数兆円の下方修正は不可避な状況だ。
これは、09年度の税収に跳ね返る。当初見込みは46兆1000億円だが、40兆円程度まで落ち込んでもおかしくない。国債の新発額はさらに膨らみそうなのだ。経済がプラス成長に戻ることが期待されている10年度予算でも、税収は容易には回復しないだろう。税の増減は景気動向に遅れるからである。当然、国債依存度は簡単には下がらない。
たしかに、09年度は当初予算段階から厳しい歳入状況にあった。それを促進したのが、規模にひたすらこだわった補正予算である。
09年度予算の税制改正関連法で、11年度までに抜本改革に必要な措置を取ることが盛り込まれた。経済状況の好転を前提にはしているが、政府・与党は財政が本来の機能を発揮できる税財政構造の構築に向けて動き出すことを約束しているのだ。いま政権を目指している民主党などにとっても、惨めな状況にある財政基盤の健全化は最重要課題だ。
そう考えると、経済社会安定をもたらす国民の安心や安全確立のため、歳出構造の抜本的な見直しをしつつ、持続可能な税制を構築することが急務ということになる。給付の裏付けになる強固な税制である。消費税のみならず、法人税、所得税、資産税も聖域なく見直す必要がある。低下している税の所得再配分機能の回復も課題だ。給付付き税制も選択肢のひとつだ。そうした制度を機能させるため納税者番号制度も十分検討しておく必要がある。
これが、将来、確実につけとなる補正予算の後、やるべきことだ。
毎日新聞 2009年5月29日 東京朝刊