半眼で座す巨大なブロンズ像の左手は地の平和を、右手は天から降ってきたまがまがしい物体を指している。先週末に訪れた長崎市の平和公園は、真っ青な空と赤いツツジに包まれていた。
 爆心地に近い長崎原爆資料館には、再現された被爆直後の街の惨状や遺品が展示されている。高熱で溶けた瓶やロザリオ、頭蓋(ずがい)骨が付着した鉄かぶと、放射線で肥大した脾臓(ひぞう)の標本、おびただしい黒焦げ死体の写真…。ただ言葉を失う。
 案内してくださったのは「平和案内人」のメンバーだった。高齢化する被爆者の体験を継承するために研修を受けたボランティアだ。登録者は百人を超えるという。
 週明けに飛び込んだ北朝鮮による核実験のニュースを、被爆地はどんな思いで聞いただろう。爆発規模は二十キロトンとも推測される。だとすれば長崎型原爆と同じ規模だ。
 オバマ米大統領の演説を機に核廃絶の機運が高まる世界の動きに冷や水を浴びせる暴挙。初の被爆地・広島では、被爆体験者が「自分の頭上に落ちないと分からないかもしれないが、その時では遅い」と語った。長崎からは「金正日(総書記)に原爆資料館を見てみろと言いたい」の声が上がった。
 北朝鮮への新決議採択を話し合う国連安全保障理事会が開かれているニューヨークに、この声を伝えたい。