2009年5月28日19時2分
【ソウル=箱田哲也】韓国政府は28日、北朝鮮が武力行使の可能性や朝鮮戦争の休戦協定の無効化に言及したことに強く反論するとともに軍事境界線付近などの防衛体制を強化した。韓国では自殺した盧武鉉(ノ・ムヒョン)・前大統領の国民葬が29日に予定され、社会が不安定な時期に合わせて北朝鮮が挑発行為に出る恐れがあるとして警戒を強めている。
北朝鮮は27日、地下核実験を受けた韓国の「大量破壊兵器の拡散防止構想」(PSI)全面参加表明に反発し、「休戦協定の拘束を受けない。法的に朝鮮半島は直ちに戦争状態に戻ることになる」などとする声明を出した。
これに対し韓国の外交通商省報道官は、北朝鮮側の主張は「まったく根拠のない誤り」と反論。在韓国連軍司令部も28日、休戦協定に関して「55年間にわたり休戦状態の法的根拠となり、地域の安定に大きく寄与してきた。北朝鮮を含むすべての署名当事国にとって現在も有効で拘束力がある」とのコメントを出した。
しかし米韓連合軍司令部は28日、北朝鮮の監視体制レベルを2番目に高い「レベル2」に引き上げた。国防省関係者は「特別な動きがあったための変更ではない」としているが、研究者らの間では、北朝鮮が韓国国内の北朝鮮政策をめぐる世論の分断を狙って、29日の国民葬や来月中旬に予定される米韓首脳会談前後などに軍事的な動きを見せる可能性が指摘されている。