息子が誇りに思うほど、カッコイイおやじ

――お2人が共演したのは、『JAIL BREAKERS』ですね。

久ヶ沢 『JAIL BREAKERS』は楽しかったですね。なによりも酎さん(久保酎吉)の最後のドラムがかっこいい。

久保 (笑)

久ヶ沢 DVDのシンバル越しの酎さん。あれは、いい画を撮ってましたね。そりゃ息子さんが「僕もドラムやる」って言うわけですよ。酎さんの息子さんが、スティックにサイン書いてもらったって大喜びで……

久保 今も、宝物にしてますよ。

久ヶ沢 あれ見た時、ちょっとうらやましいなと思ったんですけど。息子にとって、おとうさんが誇らしい仕事をしているっていう……

G2 徹ちゃん(久ヶ沢徹)だって、そうじゃない。

久ヶ沢 確かにうちの息子も、そこそこ好きみたいですけどね。でも、酎さんの息子さんが、おやじのことをものすごく誇りに思ってるなーって。そういう仕事って、そうはできないじゃないですか。すごくうらやましかったですよ。

久保 まあねー。でも、たまたまあれを観て、あれだけなんだけどね(一同笑)。

G2 内容も、子どもにわかりやすかったしね。

久ヶ沢 そうでしたね。うちの嫁さんと息子が観に来たんですけど、最後に大高(洋夫)さんが追いつめられて、シーンとなるところで、うちの息子がものすごく入り込んでて、「つかまえろ!」って、大きな声で言ったらしいんですよ(一同笑)。ちょうど大高さんが大きな声で言うセリフがあって、それで消されて、うちの嫁さんもホッとしたらしいんですけど。

G2 いいお客さんじゃん。

久ヶ沢 ただ、ワンポイントずれてたら、子どもの声が響いて、台無しにするところでしたよ。

G2 でも、それ響いてたら、たぶんすごいウケてたと思うよ。

久ヶ沢 確かにそうですね。でも、そのあとに大高さんに「やりにくいわっ!」って言われそうですけど(一同笑)。

G2 ああ、そういう言い方しそう。

久ヶ沢 逆に大高さんはワル(悪役)だから、「子どもには見せられないんだ」って言ってましたね。それも、僕らがよく見えるよう、ワルの部分を1人で背負ってましたからね。

久保 そうだね。それから、劇中の設定で、コンサート会場で演奏して……それが、まるでコンサートみたいな雰囲気で……もちろんマーボ(松岡昌宏)のファンがたくさんお客さんの中にいるからだろうけど、あの体験は非常に……

久ヶ沢 芝居とはちょっと違う熱気がありましたね。特に、(松岡は)ふだんボーカルをとらないですからね、お客さんも「歌うんだ!」ってね。

G2 最初は、歌う予定はなかったんだよね。ボーカルは(篠原)ともえちゃんの役がいるし。だけど、マーボが曲をいろいろ書いてきているうちに、「最後は自分で歌ったほうがいいんじゃないの?」って。あれ、最後のシーン、古田(新太)がずいぶん気に入ってたよね。

久ヶ沢 ええ、終わった後に楽屋に来て、「グッジョブ!」って。最後がすごくよかったって言ってましたね。最後の歌のところで、「ここで終われ、ここで終われ」って思ってた、って言うんですよ。そしたらホントに歌で終わったから、その潔さがすごくよかったって(一同笑)。



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生まれて初めて、当て書きをしないで書いた
『キャンディーズ』より
G2 酎さんに出てもらった『キャンディーズ』は、生まれて初めて、(役者に)当て書きをしないで書いたホンなんです。それまで、だいたい「こんな感じで書くと思うから、出てくれない?」って、役者に声をかけていたんです。俺が書くときは特に、そんなふうに、なあなあな感じで仲間内でやってたんだけど、こんなことではいかん、と。まず、自分の発想で台本を書いて、書いたものを読んでもらってキャスティングしていこう、と。そうやってつくった生まれて初めてで、最後の作品(一同笑)。それで、なんでか知らんけど、石けん職人のことを書いてしまったんだけど、その親方が演れる役者が知り合いにいない。これを演れる人がいないかな、という目でいろんな芝居を観てたら、酎さんを『発見』して、「この人にやってもらいたい」と。観たものは、親方とはぜんぜん違う、おっとりした言語学者で、最後にバシーッとしたセリフがある。

久保 ああ、『紙屋町さくらホテル』ですね。教え子が特攻隊で死んでしまって、ワーッとしゃべるところ……

G2 そこで泣いちゃった。なかなか、人の芝居を観て、笑ったり泣いたりしないひねくれ者なのに(一同笑)。それで、出てくれませんかって言って、『痛くなるまで目に入れろ』『ガマ王子(MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子vsザリガニ魔人)』を観に来てもらった。

久保 実は、それまでG2さんのことを、まったく知らなくて、芝居も観たことがなかったんです。

久ヶ沢 それから、ことあるごとに呼ばれてるんでしょう? (G2は)役者を心のよりどころにするんですよ。1回使って、たよりになるなーって思ったら(笑)。

G2 それは、甘えないと損だからさー(一同笑)。徹ちゃんだって当てにしてますからね、僕は。















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『MIDSUMMER CAROL 〜ガマ王子vsザリガニ魔人〜』
最初は、あんまりG2を信用していなかった

久保 徹ちゃんは、(G2との)最初は?

久ヶ沢 僕は、再演モノだったんですよ。超高速列車ができたんで、そのプレミアムで乗るっていう芝居(『止まれない12人』)で、初演から5年後にやった再演ですよね。むずかしい役でしたけどね……
『止まれない12人』(2003年)より
G2 自分がウルトラ警備隊の人間だと思って、警官から拳銃を奪って列車に乗り込んでるっていう……でも、初演を観たときに、「俺が演るなら、あの役だな」って言ってたよね。

久ヶ沢 そうです。初演ではミカイチ(三上市朗)が演ってたんです。彼が得意としているキャラで、それの後釜として入るので、観ている人の目もあるじゃないですか……

久保 なるほど。むずかしいよね。

久ヶ沢 そうなんです。ミカイチの当たり役だったんで、それを演るのは、うれしいけど、むずかしいなーって。

G2 最初、稽古場でぜんぜん手の内を見せないんだもん。

久ヶ沢 あんまり(G2を)信用してなかったんです(一同笑)。

G2 でもさ、最初から信頼し合うなんて、ありえないもんね。やっぱり(お互い)探りあうっていうのは、あるからね。

久ヶ沢 僕は探りすぎですけどね(一同笑)。

G2 稽古場では本気を見せないっていうのが、あからさまに態度に出てた。

久ヶ沢 コメディーって、稽古場で全力出して完成しちゃったら、方向性が見えなくなるってことがあるじゃないですか。

G2 演芸の人だから(一同笑)。

久ヶ沢 そうそう、「おまえ、芸人か」って言われました(笑)。

G2 でも、その役は、芸人のノリで最後まで演っても、おかしくはない役だった。だから、徹ちゃんとやるときは、芸人だけではできない役をつくらないと、おもしろくないなーと。だから、「ジェイル」でも、心にしみる部分もある役じゃないですか。マーボががっかりしてるときに、無表情で「メシ食わないのか」って、いい芝居してる。

久保 あー、そうそう。あの役はよかったなー。

G2 ああいうのを、なかなかしてくれなかったんですよ。

久ヶ沢 いやいや、(ホンに)書いてないからですよ。書いてあったら、やりますよ、そりゃ(一同笑)。「痛くなるまで」も特殊な役でしたからね。特殊能力を持ってて、最後の最後で○○○○○ますからねー(すみません。ネタバレなので伏せさせていただきます)。もう、観ている人、みんなガッカリしましたからね(一同笑)。

G2 悲惨な最後ですねー。

久ヶ沢 僕の知り合いでも、「最後、怖かった」って、ションボリした留守電を残して帰っていった人がいましたよ(笑)。2、3年に1度、「黒G2」を出さないとバランスがとれない、でしょ?

G2 あれは『キャンディーズ』を書いてから、書いたの。上演の順番は逆だけど。さっきも言ったように、『キャンディーズ』はゆっくりキャスティングをしたかったから、早くに書いて……

久ヶ沢 その揺り戻しで、あんな「黒G2」が出たんだー。

G2 そうそう。もし、「痛くなるまで」のDVDを観て、後味が悪すぎるって思う人がいらっしゃったら、苦情のメールをください。ちなみに、酎さんは、中途半端だって手きびしかった。やるなら、もっと、トコトンやりなさいよ、って。それが俺に対する最後のアドバイスで、それ以来、何も言ってくれないの(一同爆笑)。

久ヶ沢 サジを投げましたね。

久保 いやいや(笑)。






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客席がウケることについての、三者三様の考え

G2 酎さんのお知り合いなんかは、僕とちょっとオチャラケた舞台をやってることに、そんな不真面目なことやってないで、ちゃんと芝居しろよ、って……

久保 そんなことないですよ。俺は『キャンディーズ』をやったときに、NYLON100℃も観たことがなかったんですよ。会う役者さんが、みんな違って……ボケツッコミに命を賭けるみたいな芝居を知らないので、そういう出会いがうれしくて、楽しかった。一度そうやって交わると、おもしろいものをつくろうとしている意味では、まったく一緒だし、そうしたら、違うものが出てきたほうがおもしろいし、芝居も広がっていくし。次のG2さんの芝居も、また、初めての役者さんばかりだし、またひとつ広がった上で、さらにおもしろいものをつくっていければいいなーと。

久ヶ沢 (福田)転球くんは、初めてですか?

久保 初めてです。

久ヶ沢 転球くんは、役と自分のできることにギャップがあるときって、楽にやってないぶん、一生懸命さが、すごくよく映るんです。G2さんは、転球くんのいいところが出せる、数少ない作家さんですね。

G2 そう? いつ出せた?






久ヶ沢 『ツグノフの森』なんか、すっごくいいところを出してましたよ。

G2 「ツグノフ」は、今振り返って、どうだった?

久ヶ沢 僕はぐっと抑えた役だったんで、むずかしかったですね。いつもは、あからさまにオチャラケられるじゃないですか。いっさいそれをやらないで、なんか裏に抱えて、っていう役は意外とやらせてもらえないので、その点では新鮮でした。楽しかったですよ。

G2 「ブラックG2」作品のひとつだよね。

久ヶ沢 それほどでも、ないですよ。ただ、お客さんに、やさしくないという意味では「ブラックG2」ですけどね。『キャンディーズ』や『JAIL BREAKERS』のように、わかりやすい作品ではないし。

G2 酎さんは、客席が笑うとか、笑わないとかは、あんまり関係がないんですか?

久保 あんまり気にしないですね。

G2 (久ヶ沢に)ほら。

久ヶ沢 「ほら」じゃないですよ(笑)。

G2 これが役者でしょ。

久保 作品にもよると思うんですけど。俺は天の邪鬼で、流れの中で1回アドリブで笑いがあったとすると、次も言えば(笑いが)来るんだけど、徹底的に拒否してしまって、違うことを言う。そういう、ひねくれ者のところがありますね。

G2 僕は絶対にコメディーがやりたい。しかも、演芸ではなく、人の心を揺さぶった結果、笑ったり泣いたりするということが、やりたいと思うようになって……

久ヶ沢 それは、むずかしいですねー。

G2 でも、「ジェイル」では、お二人とも、それをやってくれたと思ってるのね。笑わせよう、泣かせようと思ったわけじゃないけど、物語の人物をくっきりとさせたら、自然とそうなった……そういうのが、いちばんいいなーって。ただ、笑いって、役者にかかる部分が多いんだよね。役者のセリフの呼吸ひとつで、笑えるセリフが、笑えなくなったりする。だから、ウルトラセブンのカプセル怪獣みたいに、どうしても笑いがほしいときには「徹ちゃん行け!」「ドーン!」、味わいがほしいというときには「酎さん!」「ドーン!」みたいなイメージがどうしてもある(一同爆笑)。

久ヶ沢 酎さんがお仕事されてるのは、当て書きされるようなお芝居じゃないですよね。

久保 じゃ、ないですね。逆に、当て書きするなんて言われると構えちゃう(一同笑)。でも、いろんな役を演じられるような(器用な)役者ではないと自分で思ってるし。やっぱり、役者がやってることに本気になればなるほど観てるほうがおもしろくなる……芝居って、そういうもんだと思ってる。そういう意味では、「ここで笑いととってくれ」って言われても、俺はいっさい、そういうことはできない(一同笑)。





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初顔合わせから生まれる、予想のつかないもの

――お二人とも出演する『静かじゃない大地』は、どんな話になるんです?

G2 チラシのキャッチフレーズが「その植物は救世主か? それとも悪夢か?」っていって、この話では植物なんだけど、ものには、いい面と悪い面の二つがあるでしょ。最初は、いいほうで使いましょう、という善意や熱意で人が集まってくるんだけれど、やっぱり悪いほうに転がっていったり、それぞれの都合で違う方向に進んでいったりとか……そういう変化の滑稽さと怖さと、人間の弱さっていうのが出たらいいなと思ってる。徹ちゃんの役は、ものすごく情勢を読んで、こずるく立ち回るような男。まわりから見ると、よく、そんなに簡単に手のひらを返せるな、といういいかげんさが、おもしろくて、怖いんだよね。

久ヶ沢 いちばん苦手なタイプですね。役としても、かっちりやらないとダメじゃないですか(一同笑)。

G2 今回のメンバーは、おもしろい役者が集まってくれたんですよ。酎さんは、またほとんどが初めてだろうけど、俺も初めての人が多いんですよ。池谷のぶえも、辻修も、初めてだし、「イキウメ」の浜田信也は飲み友達で誘ったから、やっぱ初めてだし、あと「ヨーロッパ企画」の諏訪雅とか。

久ヶ沢 僕もほとんど初めてですよ。酎さんと転球くんだけですよ、やったことがあるのは。だから、けっこうおもしろくなると思うんですよね。初めてだけど、ずっと観てきた人たちなので、みんなの手練手管で楽しい稽古場になるんだろうと思ってます。酎さんは、僕以外は初めてですか?

久保 田中美里さんと(『からっぽの湖』を)やってますね。アッちゃん(佐藤アツヒロ)は、飲んだ席で顔は合わせてますが、一緒にやったことはない。知らない役者さんとやるという楽しみは、すごくありますね。G2さんのは、ホンのおもしろさもあるんですが、現場でつくられていく部分の比重がけっこう大きいじゃないですか。初めての人たちとやるということで、稽古で何が生まれるかわからない。それを楽しみにやりたいですね。




『静かじゃない大地』
G2produceの新作がいよいよ登場!
先行ネットリザーブも行います!
























『からっぽの湖』


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この機会に是非お楽しみください。



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