肺がんや循環器系の疾患を引き起こすとされている大気中の微小な粒子状物質「PM2.5」の実態解明に、東京都が今年度から乗り出す。国内の環境基準が設定されないなど国の取り組みが遅れるなか、10年度には都独自の削減目標も検討する方針だ。
PM2.5は大気中に漂う大きさ2.5マイクロメートル(1マイクロメートルは1千分の1ミリ)以下の粒子。車の排ガスや工場から出る煙、火山灰、黄砂などに含まれているほか、大気中の化学反応で生成されるものもあるとされる。
研究者らの間では、10マイクロメートル以下の浮遊粒子状物質(SPM)より小さく、肺の深部まで到達してしまうPM2.5の方が、健康への影響が大きいとみられている。
PM2.5の濃度について、世界保健機関(WHO)は年平均で1立方メートルあたり10マイクログラム以下、米国も同15マイクログラム以下という基準を設けている。一方、国内ではSPMの環境基準はあるが、PM2.5については環境省が健康への影響を調べている段階だ。
都によると、現在の都内のPM2.5の濃度は20マイクログラム前後。昨年8月の「東京大気汚染公害訴訟」の和解条項では、国によるPM2.5の環境基準設定の検討も盛り込まれている。
都は今後3年間、住宅地や幹線道路沿いなど17カ所で大気の濃度や成分を調査。発電所や清掃工場など20カ所から排出されるガスなども分析し、削減対策を検討する。(根本理香)