<御手洗経団連会長>難題次々「悲運の財界総理」 最終年へ
5月27日22時33分配信 毎日新聞
日本経団連の御手洗冨士夫会長は28日、定時総会を経て2期4年の最後の1年に入る。「強い政策集団」を目指した御手洗会長だったが、在任中に首相が3度交代する政局の混迷と世界同時不況という「二つの非運」(経団連幹部)に見舞われ、道州制の実現や税財政改革など重要政策の遂行力には疑問符が付いたままだ。政権交代をかけた総選挙を控え、政局の先行きが見通せない中、この秋には後継の会長候補を決める大仕事も控える。「非運の会長」にとって、試練の最終年となりそうだ。【三沢耕平】
「政治と経済は政策という車軸でつながった車の両輪。両方が回転しなければ日本経済の発展はない」。御手洗会長は報道各社のインタビューで、政治との距離を自動車に例えてこう表現した。
御手洗会長は66〜89年を米国で過ごし、07年に発表した「御手洗ビジョン」ではレーガン米元大統領について「私にとって最も印象深く、『強いアメリカの復興』のメッセージは暗闇に射(さ)し込む一条の光だった」と記している。
レーガン氏に重ね合わせるようにして期待を寄せたのが安倍晋三首相(当時)と見られ、安倍氏の外遊には100人もの財界人を集めて同行した。奥田碩(ひろし)前会長が小泉純一郎首相(当時)と二人三脚で構造改革を推し進めたのに対し、御手洗会長が安倍氏と「政経の両輪」となって「日本版レーガノミックス」を目指そうとしたというのは側近の一致した見方だ。
それだけに「安倍政権退陣(07年9月)のショックは大きかった」(周辺)。ねじれ国会による野党の影響力拡大は、自民党と密接な関係を保ちながら政策提言を繰り返す経団連の存在感も低下させていった。さらに、奥田前会長の在任中の首相が小泉氏のみだったのに対し、御手洗会長は4人の首相と向かい合った。副会長の一人は「永田町との距離を縮めようにも限界があった」と振り返る。
世界同時不況に陥った昨秋以降は、道州制や消費税を含む税制抜本改革など重量級の政策提言も次々と先送りになった。御手洗会長も「中長期的な目標はスローダウンして道半ばだ」と語る。
また、減産のあおりで子会社で働く1000人以上の非正規従業員に解雇が通告されたことや、キヤノンの施設建設を巡りコンサルタント会社グループの脱税事件が摘発されたことに対し、「経団連会長企業として問題」との批判も浴びた。
経団連は6月、民主党の鳩山由紀夫代表や岡田克也幹事長を招いて意見交換会を開く。次期衆院選での政権交代が現実味を帯びる中、御手洗会長にとっては、2大政党制の一翼を担う民主党とどう関係を作っていくかも重い課題となる。
◇次期会長にパナソニック会長、トヨタ、東芝社長ら有力
御手洗会長の任期が最終年に入り、後任会長の人選も本格化する。経団連会長は副会長から指名されるのが通例。これまでに中村邦夫パナソニック会長や、28日の定時総会で新副会長に就任する渡辺捷昭トヨタ自動車社長、西田厚聰・東芝社長らが取りざたされている。
特に中村氏は、御手洗会長が最重要課題と位置づける道州制の実現に向けた委員会を任されるなど信任が厚い。一方、渡辺氏と西田氏は、過去に2度も経団連会長を出した「名門」企業に籍を置き、「製造業から選出」という慣例にも合致する。
ただ、政治と経済が混迷する「二つの非運」はポスト御手洗レースにも影を落としており、製造業が世界同時不況の打撃を受ける中、有力候補の出身企業からは「本業以外に力を割く余裕はない」という本音も漏れる。さらに、政局の先行きが不透明なことも「人選作業を難しくする大きな要素」(財界首脳)とみられている。
このため、経団連内部では「通例を度外視した人選も十分にある」として、今回の総会で副会長を退く新日本製鉄の三村明夫会長を有力候補とする声も多い。三村氏は政府の経済財政諮問会議の民間メンバーや中央教育審議会会長を務めるなど、政治との距離が近く、「本人も会長就任に意欲的」(エネルギー業界首脳)とみられている。
御手洗会長は、今秋以降に会長経験者らと相談の上で後任を内定する意向。本命不在の様相を呈する中、御手洗会長は報道各社のインタビューに対し「経団連は時代を映す組織なので、時代に合った人(を後継にする)」と述べた。
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「政治と経済は政策という車軸でつながった車の両輪。両方が回転しなければ日本経済の発展はない」。御手洗会長は報道各社のインタビューで、政治との距離を自動車に例えてこう表現した。
御手洗会長は66〜89年を米国で過ごし、07年に発表した「御手洗ビジョン」ではレーガン米元大統領について「私にとって最も印象深く、『強いアメリカの復興』のメッセージは暗闇に射(さ)し込む一条の光だった」と記している。
レーガン氏に重ね合わせるようにして期待を寄せたのが安倍晋三首相(当時)と見られ、安倍氏の外遊には100人もの財界人を集めて同行した。奥田碩(ひろし)前会長が小泉純一郎首相(当時)と二人三脚で構造改革を推し進めたのに対し、御手洗会長が安倍氏と「政経の両輪」となって「日本版レーガノミックス」を目指そうとしたというのは側近の一致した見方だ。
それだけに「安倍政権退陣(07年9月)のショックは大きかった」(周辺)。ねじれ国会による野党の影響力拡大は、自民党と密接な関係を保ちながら政策提言を繰り返す経団連の存在感も低下させていった。さらに、奥田前会長の在任中の首相が小泉氏のみだったのに対し、御手洗会長は4人の首相と向かい合った。副会長の一人は「永田町との距離を縮めようにも限界があった」と振り返る。
世界同時不況に陥った昨秋以降は、道州制や消費税を含む税制抜本改革など重量級の政策提言も次々と先送りになった。御手洗会長も「中長期的な目標はスローダウンして道半ばだ」と語る。
また、減産のあおりで子会社で働く1000人以上の非正規従業員に解雇が通告されたことや、キヤノンの施設建設を巡りコンサルタント会社グループの脱税事件が摘発されたことに対し、「経団連会長企業として問題」との批判も浴びた。
経団連は6月、民主党の鳩山由紀夫代表や岡田克也幹事長を招いて意見交換会を開く。次期衆院選での政権交代が現実味を帯びる中、御手洗会長にとっては、2大政党制の一翼を担う民主党とどう関係を作っていくかも重い課題となる。
◇次期会長にパナソニック会長、トヨタ、東芝社長ら有力
御手洗会長の任期が最終年に入り、後任会長の人選も本格化する。経団連会長は副会長から指名されるのが通例。これまでに中村邦夫パナソニック会長や、28日の定時総会で新副会長に就任する渡辺捷昭トヨタ自動車社長、西田厚聰・東芝社長らが取りざたされている。
特に中村氏は、御手洗会長が最重要課題と位置づける道州制の実現に向けた委員会を任されるなど信任が厚い。一方、渡辺氏と西田氏は、過去に2度も経団連会長を出した「名門」企業に籍を置き、「製造業から選出」という慣例にも合致する。
ただ、政治と経済が混迷する「二つの非運」はポスト御手洗レースにも影を落としており、製造業が世界同時不況の打撃を受ける中、有力候補の出身企業からは「本業以外に力を割く余裕はない」という本音も漏れる。さらに、政局の先行きが不透明なことも「人選作業を難しくする大きな要素」(財界首脳)とみられている。
このため、経団連内部では「通例を度外視した人選も十分にある」として、今回の総会で副会長を退く新日本製鉄の三村明夫会長を有力候補とする声も多い。三村氏は政府の経済財政諮問会議の民間メンバーや中央教育審議会会長を務めるなど、政治との距離が近く、「本人も会長就任に意欲的」(エネルギー業界首脳)とみられている。
御手洗会長は、今秋以降に会長経験者らと相談の上で後任を内定する意向。本命不在の様相を呈する中、御手洗会長は報道各社のインタビューに対し「経団連は時代を映す組織なので、時代に合った人(を後継にする)」と述べた。
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最終更新:5月28日11時49分
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