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父子のGMドリームの果ては… 米国ルポ(2/3ページ)

2009年5月28日11時55分

 メキシコ人の両親をもつヘススは移民労働者として59年にGMに就職。学校に行ったことはなかったが、GMに資材を運ぶ鉄道建設などに従事し、12人の部下を持った。デトロイト市内に一軒家を買い、GMの高級車キャデラックも手に入れた。34年勤め上げたあと、93年に退職した。

 一方、ジョンは高校を卒業後軍隊に入り、退役後に郵便局とGMから就職の誘いを受けた。初任給がずっと高かったのはGM。賃金はその後もずっと上がり続けた。

 1日12時間、週末も働き、ピーク時の年収は10万ドルに達した。米国の平均世帯年収(07年)のほぼ倍を稼ぐようになった。

 4年前には治安が悪化したデトロイトから、現在の住宅街に引っ越した。四つのベッドルームと二つのバスルーム。リビングとダイニングも広い。車はこれまで通算10台持った。父と同じ道をたどり、同じように夢を実現させた。

 しかしGMの業績は、ジョンの年収がピークに達した頃から赤字の時代に。収益の大半をかせぐ北米で日本メーカーなどに押されてシェアを失い、本格的な人員削減が迫られた。

 そして、07年夏のサブプライムショック。ジョンの職場も目に見えて変わった。勤務先だったデトロイトの自動車組み立て工場は、1日昼夜2シフトから1シフトへ変更。ラインのスピードも落とされた。

 昨秋には、16年間通った組み立て工場から変速機工場へ異動になった。そこではみな自分の仕事がどうなるかばかり気にしていた。メディアは連日GMの経営危機を伝えるが、会社から詳しい説明はない。上司は、失敗して首切りの対象にならないよう、常にピリピリしていた。「職場全体にすごいストレスがかかっていた。つくづくいやになった」

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