2009年5月28日11時55分
【米ミシガン州リンカーンパーク=山川一基】米デトロイト近郊、リンカーンパーク市に住むジョン・マルチネス(51)は4月1日、32年間働いたゼネラル・モーターズ(GM)に別れを告げた。
募集のたびに条件が悪くなっていく早期退職制度。税金を引かれて手にしたのは、1万5500ドル(約147万円)のGM新車購入券と1万2500ドル(約118万円)の現金だけだった。月約3千ドル(約28万5千円)の年金が頼りだ。
「倒産してしまったら年金と医療保険がどうなるのか。本当に怖い」
米連邦破産法11条の適用を申請すると、申請者は以前の契約や訴訟を破棄しやすくなる。約束された保険や年金の減額は必至だ。
ジョンの賃金は就職以来、ほぼ右肩上がりだった。ピークだった00年代半ば、年収は10万ドル(約950万円)を超えていた。いま、妻と5人の子供、同じくGMで働いた病気がちな父を抱える。4年前に購入した自宅のローン支払いは毎月約1千ドル(約9万5千円)にのぼる。年金や医療保険が変更されれば生活は立ちゆかなくなる。
「仕事は探している。でも、ローンが払えなくなる日がいずれ来るかもしれない」。GMが倒産すれば、約24万人の現役従業員と15万人近いといわれるジョンのような退職者に影響が出る。
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同じく昨年11月に30年勤めたGMを退職し、ミシガン州グランドラピッズ市に住むグレッグ・ショットウェル(58)。「レイオフはない。賃金は上がり続ける。人生は安心だ。我々が就職した頃、GMはそうもてはやされていた」と振り返る。
ジョンはGMで働く父、ヘスス(83)をみて育った。