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きょうの社説 2009年5月28日
◎新幹線負担問題 新潟を沿線の団結に引き戻せ
都内で開催された北陸新幹線建設促進大会で、財源や地方負担などをめぐり、沿線五県
の足並みの乱れが表面化したのは、二〇一四年度末までの金沢開業にマイナスの影響を及ぼしかねない大きな懸念材料である。新潟県知事の反発で政府の今年度補正予算案の整備新幹線の配分が決まらないことや、 開業後にJRが国に支払う施設貸付料の活用をめぐる各県の思惑が絡み、まとまりを欠く状況だが、建設費の負担の在り方や貸付料にしても沿線全体に及ぶテーマであり、各県がばらばらに主張していても国を動かす大きな力にはなりにくい。 石川、富山県知事にとっては、沿線の足並みを整える努力も重要な新幹線対策である。 まずは新潟県を沿線の団結の輪に引き戻すよう働きかけを強めてほしい。 新潟県は県当初予算の新幹線建設事業費について、地方負担の増額分に対する国の説明 が不十分だとして一部の計上を見送った。さらに、政府の今年度補正予算案の新幹線事業費についても予算受け入れに条件を付けたため、路線ごとの配分決定が遅れる異例の事態となっている。新潟県が出した条件はJRからの貸付料の地方還元と、県内駅(上越、糸魚川)への全列車停車である。 貸付料の使途については与党プロジェクトチームの合意により、年内に結論を得ること になっており、全列車停車はJRの経営判断にかかわる事柄である。今この時期に国に明確な回答を求めても無理な話だろう。新潟県だけで完結する事業なら、国と駆け引きするのは自由だが、新幹線のように県を超えて影響が及ぶ事業は関係自治体への配慮があって当然である。 JRからの貸付料については富山、長野県も並行在来線支援などへの活用を国に求めて いる。これに対し、建設促進大会では福井県知事が「新規着工を優先するのが筋だ」と延伸財源への活用を主張し、立場の違いが鮮明になった。 整備状況によって各県の優先課題に違いがあるのは当然だが、それぞれが主張を押し通 そうとすれば計画の遅れも懸念される。沿線の結束へ向け、各県知事が調整に乗り出すときである。
◎初の党首討論 白熱すれど中身乏しく
麻生太郎首相と鳩山由紀夫民主党代表による初めての党首討論は、西松事件などをめぐ
って白熱する場面もあったが、すれ違いが多く、中身は乏しかった。鳩山代表に関しては、次期衆院選を目前に控え、民主党に政権を任せても大丈夫なのか、という国民の素朴な疑問に十分こたえられたとは思えない。麻生首相は鳩山代表の天下り批判や予算の無駄遣いについて、説得力のある反論ができたとは言い難かった。自民、民主両党から党首討論を「定例化してはどうか」との声も聞こえてくるが、今回 のように批判の応酬に終始するなら、それほど意味があるとは思えない。自民、民主ともヤジがひどく、声が聴き取りにくいのも問題だ。 中身のある党首討論にするなら、やはり一回一時間足らずでは決定的に足りない。十分 な時間を確保したうえで、事前にある程度テーマを絞り込み、それぞれの持ち時間を決めて一定時間ごとに交代して話をさせるなどの工夫がほしい。議員が党首を取り囲むように行うスタイルをやめ、ヤジを遠ざけてはどうだろう。 鳩山代表は提唱する「友愛」について語ったが、全体的に抽象論の域を出なかった。理 想を語ることも重要だが、理想を具体的な政策として反映させるのが政治家の役目だろう。北朝鮮の核実験という新たな危機を迎えるなか、安全保障についてほとんど言及がなかったのは不思議である。西松事件については人ごとのように歯切れが悪く、「疑惑を持たれている議員は自民党の方が多い」と切り返すのが精いっぱいだった。 麻生首相は、今年度補正予算案について、鳩山代表からの「官僚のための予算」「緊急 性に乏しく、税金の無駄遣い」などの批判に対し、真正面から反論しなかった印象がある。自分たちに有利な西松事件などに時間を使いたかったのだろうが、肝心のところをあいまいにしておくと、国民は「逃げた」と思うのではないか。 お互いが相手を尊重して論点を明確にし、深く掘り下げる努力をしないと、党首討論を 何度やっても常に消化不良に終わるだろう。
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