【第71回】 2009年05月27日
「日本が感染症対策の途上国である」
厚労省の新型インフルエンザ対策の欠陥を、木村もりよ医師に聞く
―プレハブなどでいいのか。厚労省は全国の医療機関に受診拒否を禁ずる通達を出した。また、発熱外来は、第三次救急を受け持つ大病院に設置しようとしている。
常識すら備えていない厚生労働省の犯罪的な政策だ。感染防止体制が整っていない医療機関への受診強制は、患者を院内感染の危険にさらすようなものだ。また、三次救急を受け持つ大病院には、癌を初めとして免疫力が低下した医療的弱者が多数いる。わざわざ、なぜ命に関わるかもしれない重篤患者を院内感染の危険にさらす必要があるのか。この政策ひとつ見ても、厚労省が感染症対策に無知であることが分かる。
街の駐車場や公園に、プレハブの診察室を建てればいいのだ。もっとも安全で、安価で、即効性がある。
―本当に100万人単位で死亡する可能性があるのか。
過去の事例を見れば、あると言わざるを得ない。
―タミフルは効かないのか。
7日間発熱が続くところが6日間で下がることをもって効く、と言えば効く。その程度だ。問題は、タミフルを常用することでウイルスが耐性を持つことだ。耐性新型インフルエンザは、毒性を増す。世界の6割のタミフルを消費、しかも予防的投与をしてしまう日本が、耐性新型インフルエンザの輸出国になる可能性は低くない。これも、感染症対策の途上国であることの証左だ。
feature
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辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)
1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。
政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。