注目の一番にしては隔靴掻痒(そうよう)の印象だ。麻生首相と鳩山民主代表の党首討論。総選挙へ得点を稼ぎたい気持ちは分かるが、長広舌では論点も煮詰まらない。政権選択の判断材料となる議論をさらに。
小沢一郎氏の代表辞任後、初の党首討論はともに祖父が元首相である鳩山由紀夫民主党代表と麻生太郎首相の「孫対決」となった。
総選挙での政権交代を訴えたい鳩山氏。民主の政権担当の力量に疑問符を付けたい麻生首相。主張すべきはそれなりに主張できたとの思いだろう。聞く側にとっては、緊迫感がいまひとつ伝わらず、もどかしさが募る内容だった。
鳩山氏は祖父・一郎氏が掲げた「友愛」社会の構築を説いた上で理念のない麻生首相は、日本のかじ取りを官僚任せにしていると断じた。補正予算案についても「官僚の官僚による官僚のための予算だ」として「古い政治よ、さようなら」を決め言葉に用いた。
首相のキーワードは「現実論」だった。抽象論だけでは物事は動かない、官僚をうまく使いながら政策を実現させることが肝要だ、と反論した。社会保障と安全保障に関する民主党政策には、多くの国民が不安を抱かざるを得ない、とも迫った。
消費税率アップを含めた財源問題や、自衛隊海外派遣で民主党方針が不鮮明な点を突いた形だ。ただ野党顔負けの追及スタイルにこだわるあまり、言いっ放しで議論が平行線になった感は否めない。鳩山氏も「民主政権」の財源の裏付けに言及する場面はなかった。
熱を帯びたのは、小沢氏秘書が起訴された違法献金事件だ。
鳩山氏が、事件を踏まえた企業・団体献金禁止の法改正に同調を求めると、首相は「責任を取って代表を辞めた人が代表代行になったのは、国民目線から理解できない。法改正は論理のすり替えだ」と、執拗(しつよう)に発言した。
小沢氏の辞任後も、不十分な説明に世論の不満が強い。支持率が再下降し始めた首相にとって「小沢問題」は貴重な反撃カードであるのは間違いない。
総選挙でも争点の一つとなろう。小骨が民主ののど元に刺さったままだ。
両氏は今後も討論を続けることを約束した。有言実行を求める。実のある論戦へテーマを絞ってはどうか。散漫な議論を続ければ、政権選択の決戦ムードに水を差そうというものだ。双方の「党首力」がいよいよ問われている。
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