マグノリア コーヒーロースターズのスペシャルティ コーヒー


素晴らしいエスプレッソを入手してしまいました。最近、といっても2年ほど前でしょうか、その品質の高さと信頼性を知った「スペシャルティ コーヒー」。「エスプレッソとは異なるモノ」との勝手な思い込みから、大した関心もなかったのですが、たまたま家人の幼馴染みがその道のプロとのことで、先日フィオレンツァにてカッピング(コーヒーの正式なテイスティング方法)のデモをしてもらいました。今までフィオレンツァで使っていた豆の他に3種類、計4種類をブラインドでテイスティングしたんです。いつも頻繁にワインのブラインドテイスティングをしているしプロの料理人です。目隠しでの味覚選別には並々ならぬ自信はあるのですが、コーヒーとキチンと向き合うのは初めてです。

まずは荒挽き豆をカップに入れ、それだけの香りを利きます。全体から漂う香ばしいコーヒーの香りは大変心地良いものですが、カップに鼻を近づけてそれぞれ見てみると、良し悪しがあるとも何とも聞いていませんが、4つの内1つだけは好みの香りではありません。何か虫歯のような嫌な臭いが混ざっているように感じます。2つは心地良い香りの立ち昇りを感じ、残りの一つは馴染みの香り、すなわち当店の豆ではないかと推察し、「意外と悪くないなぁ・・・、でもこの奥に感じる煮返したような臭いは当店のもの」と感じました。というのもちょっと前に、諸事情あって豆のメーカーを変えたばかりだったのですが、間もなくあまり好みの味わいではないことに気付いたところ、グッドタイミングで今回に至ったからです。

それぞれのカップに熱湯を注ぎ4分間抽出します。気泡にまみれた豆粉が表層を形成し、濃厚な成分が詰まっています。初めにその上澄みをスプーンですくってテイスティング。ワインと同じように少量を口先に含み、勢いよく空気を吸い込み混合気を作り、口中で香りを発散させます。熱さのせいもありますが、訓練が足りないせいで(初体験ですから)断定できません。次にスプーンで表層を割って香りを利き、軽く上下をかき混ぜます。そしてまたひと掬いテイスティング。時間経過と共にこれを繰り返しながら変化を見ますと、冷めるほどに味わいの違いがハッキリと出てきます。面白いことに初めから「いい香り」と感じていた2種類は、冷めてまた美味いことに気付き、「アイスコーヒーにも向いてますね?」と問えば、まさに「冷めても美味いのがスペシャルティ コーヒー」であるとのこと。今まで何年もの間、「なんでアイスコーヒー用の豆は不味いんだろう。ミルクとシロップを入れなきゃ飲めたもんじゃない」と思い続けていた疑問が解けました。初めから劣化している豆では、何をどう付け加えても越えられない壁があるのです。ましてやストレートで味わばその差は歴然。スペシャルティ コーヒーは、冷涼な地域の洗練された熟成ワインのような澄んだ味わいを持っており、その爽やかな酸味が印象的です。酸っぱいのではないんです。フルーツのように爽やかであったり、熟成ワインのように落ち着いた心地良い酸味だったりします。そして並みのコーヒーでよく感じる、わずかな時間経過とともに訪れる激しい品質劣化。酸っぱ臭くよだれ臭い、と言っても誰にも通じないかもしれませんが、とにかくボクは特にエスプレッソを飲み終わった後のカップの臭いがあまり好きではありません。今までそれはコーヒーの宿命かと思っていたんですが、どうやら違うようです。栽培から収穫、加工、そして我々の手元に届くまでの間、すべての工程に出来得る限り完璧な管理が行き届けば、コーヒーは冷めても劣化しない。正確に言えば、初めから劣化している豆では、熱いうちはよくわからないが、冷めるとその状態の悪さが前面に表れて不味さ爆発、というものだったのです。ブラインドの正解は思った通り、「いい香り」と感じた2種類が、どの程度優れているのかまでは判りませんが、なかなかいいものだそうで印象的でした。そして虫歯臭いと感じたものはコマーシャルコーヒーと呼ばれている、缶コーヒーやインスタントコーヒーから、一般的なブレンドとして使われる廉価品でした(それなりにピンキリありますが、缶コーヒーの原料豆などは「食品として最低レベルの粗悪品」とは随分昔から言われていました)。いつもの味わいは判って当然ですが、スペシャルティ・コーヒーとは、それほどに良さが判りやすいのです。

テイスティングでは所謂「コーヒー」と一般的に考えられる、日本人的にはお茶代わりに遠慮なく飲みたくなる抽出濃度です(お茶党は試飲の価値ありです)。しかも冷めても不味くならない。「ところでエスプレッソには適しているのか?」との問いに、「同じです」とあっさり。そして後日届いた豆に合わせグラインダーを調整、ウチのシィモネッリ(世間ではシモネリなどと残念な発音で呼ばれていますwww)でエスプレッソを抽出してみました。何度も調整を繰り返した結果、速度、粘度、色合い、キメ細かさなど理想的な抽出状態で思わずニッコリ。東京のイタリア料理店は、比較的まともなエスプレッソを提供している店が多いとは思いますが、超有名店も含めほとんどのフランス料理店は本当にヒドい。泥水のようなモノを平然とエスプレッソと呼んでいますから呆れます。食事を締めくくるカッフェを軽視するなんて、自ら料理店のインテリジェンスをブチ壊しているようなものです。イタリア料理にとって、エスプレッソとはそれ程までに重要な一品なのです。だからたった一杯のカッフェのために、50万円、100万円といった高額なマシン他設備一式に投資できるんです。でも大半の日本人には、エスプレッソの価値がまだまだ伝わっていないようで、我々の努力不足を感じます・・・。たまに「エスプレッソ大好き」っていうお客さんがいると、やっぱり嬉しくなりますねぇ、イタリア的で。

↑このモクモクとわき上がっているのが“クレーマ”です。ギネスビールのようで、とても美しい紋様なんですよ。
エスプレッソテイスターでもあるクリスティァーノからもらったMyカップには、厚みのある美しいクレーマ。鼻を近づけると嫌みなく澄んだ香り。エスプレッソだけど敢えて砂糖を入れずに味わうと、エグくない!普通エスプレッソをストレートで味わうとエグいもんなのですが、後味スッキリ。ボクはエスプレッソは好きですが、胸焼けするのでおかわりはしませんでした。でもこれは大丈夫。心地良い残香の余韻も長く、ついつい2杯目を飲んでしまいました。さらに、エスプレッソの流儀に倣って砂糖を入れてみると、う~ん美味さ倍増です。これは美味い・・・。エスプレッソというのは、豆はもちろんのこと、マシンの性能、そして豆とマシンの相性というものもとても重要なんです。シィモネッリとの相性は抜群です。毎日の楽しみが一つ増えたというものです。そしてやっぱり飲み終えたカップはまったく臭くありませんでした。
フィオレンツァへいらしたら、食後はスペシャルティ コーヒーのエスプレッソを是非お試しください。マジで美味いです。

スペシャルティーコーヒーについての詳細はマグノリア・コーヒーロースターズさんまでどうぞ。

# by cocogoloso | 2009-05-27 20:31 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(0) 

ゲーテ6月号

ゲーテ6月号の特集「大歓喜イタリアンレストラン」に出ています。

金融危機以降の取材は、「リーズナブル」とか「コストパフォーマンス」など、少額でも内容充実といった店の特集が多くなり世相を感じます。一時は人々が外食離れを起こし、この先どうなるのかと不安感もありましたが、3‐4月の来客状況を見る限りチョト安心しています。何しろ毎日ランチ2回転、ディナー1回転ですから、理想を超える集客状況ということになります。大してマスコミに出ていない割に忙しい(汗)!


フィオレンツァの他にも12軒ほどのイタリアンが出ています。好きな人にはいい特集かもしれません。
特集の中ほどに2ページをかけ宣伝(もしかしたら取材形式の有料広告かもしれません)している西麻布の某リストランテGは、ファンの方にとっては驚きの“新シェフ紹介”です。信頼筋から聞くところによれば、なんとオーナーシェフが本当のオーナーから解任され、その知人で同店でヘルパーをしていたイタリア帰りのシェフが新シェフに就任した模様。戦国時代の様相ですねぇwww
前任者はミシュランイタリアで星を獲得した日本人シェフとして、鳴り物入りで凱旋帰国。早々に開店させたリストランテとして料理誌が大々的にバックアップ、一躍有名人に・・・。
それにしてもちょっと前の東カレでは「Q:今までで一番高価な買い物は?」の質問に、「A:この店」と応えていたのに、解任させられてしまうとは一体どういうことでしょう?皆さん人がいいのでほとんど気にされていませんが、オーナーシェフと名乗って、解任されるシェフって案外少なくありません。大きく見栄を切ってみたいのでしょうが、バレると特にみっともないので止めた方がいいんじゃないでしょうか。経歴とか仕事のウデとか、お客さんやマスコミに吹聴している色々な部分も、同じ傾向があると考えるのは当然でしょう。先日の続きじゃありませんが、誰も検証しないからって、言ったもん勝ちは感心しませんねぇ。
因みにボクはミシュラン東京などは言うまでもありませんが、ミシュランイタリアもアテにしていません。相性が悪いようですねぇ。ガンベロロッソやオステリーア・ディターリア(イタリア発のガイド本)に比べ、小さくて携行に便利なのですが、どうでもいいような店が重視されていたり、イタリア料理らしからぬ店が高得点をあげるなど、どうもピンとこない評価が多すぎる。
日本人シェフが現地で評価されて価値があるのは、「日本らしい感性を用いて、イタリア人もびっくりするような料理の展開」ではなく、コテコテでイタリアらしさ全開、マンマもノンナも納得の素朴な郷土料理で評価されたなら大したもんだと思います。トーキョーイタリアンを持ち出せば、現地では面白がられますよ。簡単に。無いですからねぇ現地には。ニースだかでトーキョーフレンチ作ってバカ受けしているのがいるじゃないですか。あれも同じでしょう。東京の食通には通用しないと思いますよ。


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# by cocogoloso | 2009-04-24 22:14 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(6) 

ワッグル ゴルフ

いつもの掲載紙とは趣旨が異なるのでどうしようかと思いましたが、一応載せておきます。
ゴルフの雑誌なのですがそのトップ記事、「上達アプローチのフルコース」との見出し、アプローチの練習を“コース仕立て”に紹介するということで、コースと言えばレストラン、そんでフィオレンツァの料理が巻頭を飾ることになったようです。
でもまぁこれは完全に取材協力ですから、ウチにしてみれば営業と同じこと。当然売上になるお仕事なんですね。普通の取材は、店を広く一般の読者に紹介するという特性上、レストランにとって大きなメリットが発生しますから、場合によっては「料理代金などは店側が持つ」ということも少なくありません。店側も次の取材が欲しいので、下心から料理代を敢えて貰わない経営者も多いかと思います。「ロハにしたのだかいい記事(上げ底の)書いてくれよな」といった期待も当然あるわけですねぇ。ある種の宣伝広告活動と言い切れます。だってこっちの言い分だっていちいち検証しませから、シェフによっては「言ったもん勝ち」とばかりに、ヨーロッパ修行遍歴をドデカくでっち上げる野郎も少なくありません。いいことしか書きませんからねぇ。店とマスコミは持ちつ持たれつの関係なんです。だから取材記事より料理写真を見た方が、どのくらいのウデの店か判断しやすいと思いますよ。

一冊くらい公正なガイド本があっても良さそうなもんですが、今のところインターネットで色々とかき集めた情報にはかなわないかもしれませんね。でも結局誰がどうこう言おうが、自分の感性を信ずることが大切ですね。
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# by cocogoloso | 2009-04-22 17:18 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(0) 

日刊ゲンダイ

日刊ゲンダイ4月16日号に出ています。
14ページに食と健康に関するページがありまして、その中で「全席禁煙の店」というコーナーでのご紹介です。このコーナーは以前ゴローゾでも取材されたことがありました。今回も同じ記者さんでしたが、ボクが同一人物だと当初は知らなかったようで驚かれました。

新聞ですからあまりキレイな写真ではありませんが、それでもカラーでの掲載ですからありがたい限りです。

意外と言っては失礼ですが、「これを見て来た」という中高年の男性客が多くて驚きです大感謝です。
しかし、この新聞は男しか買わないでしょうねぇ。真面目な記事の合間に、エロい情報が満載ですw
そんな読者がリストランテなんかに来るんだろうか?などと思っていましたが、何気に奥さん同伴で「ゲンダイ見たよ」と、何人もの方が来店して下さり、ひと時を楽しんで過ごして頂けたようで幸いです。
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# by cocogoloso | 2009-04-18 17:59 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(0) 

4月の“りちぇった”

今月の会食“りちぇった”からお知らせです。
ご連絡が大変遅くなり、誠に申し訳ありません。色々と追われてしまい、“りちぇった”まで手が回りません(汗)。
ということで勝手ながら今月はお休みです。でも替わりに「土祝ランチスペシャルメニュー、スプマンテ飲み放題付きで5千円」を毎週やらせて頂きます。メニューは基本的にその日替わり。毎回お得な内容でご用意します。飲み放題は1時間30分とさせていただきます。

4月の予定日は4(土),11(土),18(土),25(土),29(水)

11時30分から13時の間で、お好きな時間をご予約ください。

よろしくお願いします。

# by cocogoloso | 2009-04-01 23:06 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(2) 

Hanako 2009/4.9号 銀座・丸の内 最新マップ

ハナコ最新号に出ています。

今号は銀座・丸の内界隈の特集ですが、世相を反映しているのか、比較的カジュアルな店の紹介が多いように感じます。でも気軽にいろいろ使えそうな店が多いのでお薦めの号ですよ(^v^)
ウチは京橋のページではなく、「イタリアン」のページに大きめに出して頂けよかったです。しかしウチの料理は相変わらず色が地味ですw
もう少し華やかな色合いを心がけようと思いました。
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# by cocogoloso | 2009-03-27 11:23 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(0) 

レシピ 自家製パンチェッタ

カルボナーラついでに自家製パンチェッタも伝授しておきます。
イタリア料理の隠し味としてなくてはならないパンチェッタ。“豚バラ肉の生ハム”とでも便宜上言っておきますか(ハム=プロシュット=モモ肉という意味ですから、“バラのモモ”では矛盾しますからね)。プロシュットに比べると熟成期間が短く価格も安い。イタリアのスーパーでは、料理用に細かく刻まれパック詰めされたものまで売っている。そのくらいフツーな食材。昔は日本では手に入らなかったからベーコンで代用したものだけど、最近では輸入されるようになったから、イタリア料理店ではもうお馴染みになったかな。もちろん輸入モノは、生ハム盛り合わせなどの一員として素材そのものを味わうんだけど、でもこれ加熱調理用なら実に簡単に手作りできるので、ヒマがあったらお試しください。

加熱調理用のパンチェッタ・レシピ
豚バラ肉5mm厚スライス

黒コショウ
ローズマリー
ニンニクスライス
ナツメグ
シナモン
以上です。

分量は全部適当です。編集者のチェックが入らないから、ブログレシピは楽ですねぇw
スパイス類はなくても結構です。あるものだけ、或いはお好みでアレンジしてみて。

まず豚バラ5mm厚スライスを一枚一枚丁寧に並べ、焼き鳥に塩をふる感覚で適当に塩ふり。
その他の材料も適宜ふりかけ、さらに次のパンチェッタを重ねて、同じことを繰り返します。あんまり塩っぱくならないようにね。

これを冬の間なら丸々24時間寒そうな場所に放置(夏場は半日、あとは冷蔵庫で)。異物が混入しないように布巾などをかけておく。フタやラップは蒸れて雑菌が繁殖するからダメ。

翌日上下をひっくり返し、冷蔵庫へ移動し熟成。それから毎日一回ひっくり返す。
そして1週間でとりあえず完成↑。こんな色になる。とにかく乾燥させてね。ジメジメしてると痛むから。本当なら1週間で完成するようなものではないんだけど(3か月から半年)、この位になればもう生肉の味ではない。繰り返しになりますが、用途は加熱調理専用ですからね。


ディナー用に使うのはこっちで1か月。やっぱりブロックで仕込んだ方がいい感じ。でもランチで使っていると間に合わないから、スライス熟成法を編み出したのだった。インスタントだけど、ベーコンより美味しい上に価格も安い、そして何かと使えて便利。ついでに腐らないし。
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# by cocogoloso | 2009-03-17 11:33 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(4) 

ベーコンも生クリームも使わない本当のカルボナーラ レシピ

ランチのカルボナーラ(1050円)が大人気です。「よく注文が入る」という事なんですが、でもボクのメニューは「訳の分からないモノばかり」なんだそうで、「お馴染みのメニューだし、他に選ぶものがないから」、という理由で出数が伸びているだけのこと?なのかもしれませんけどね・・・(涙)

だって先日、某有名イタリア料理店(トーキョーイタリ庵の旗手と言っても過言ではない)のシェフやソムリエ、はたまたイタリア滞在中に著名ガイドブックで評価を受け、鳴物入で凱旋帰国したシェフの店で働くスタッフなどが来店したのですが、な・な・な・なんと皆様メニューが読めない!!!かる~くパニック。「な・なんだこれ?」「わかんね・・・」「どうする?」「どうしよう・・・」「おまかせでいいんじゃね?」「うんそうしよう」なんて会話が聞こえてしまったり、店の前で入店せずモジモジしているので聞いてみると、「で・でぃなーを予約したんですが、わ・わいんばーでもいいいいですか?」だって(ガクッ) 玄関のメニュー見てビビっちまったようですが、おいおいちょっと待って下さいまし!自分たちがどんな店で働き、お客さんがどんな思いして、おいくら万円払ってるか考えたことあんですかいな?フィオレンツァよりも高いんだぜ(っつーかCP低いんだぜ)。その様子じゃあ、お客さんの気持なんかぁ考えたこともないんでしょうねぇ?それにしても同業者ですよ。料理に興味ないんでしょうかねぇ?一般客が“チョイ飲み”を楽しむのとは意味合いが大きく違って当然なんですがねぇ・・・。なんつって驚いて見せましたが、実は同業者なんて大概はこんなもんです。あっちこっち食べ歩きしている素人さんの方が、よっぽど店の良し悪し分かってますよ。

同業者がそんなんですから、誰でも知っているカルボナーラに注文が集中するのは当然なんでしょうねぇ。まぁカルボナーラもきちんと作るとかなり美味しいものですが、東京にはキムチやトウガラシを入れたピリ辛のクリームカルボナーラをウリにするようなインチキイタリ庵が山ほどありますから、むしろウチのような正統派は珍味かも知れませんね。

そもそも日本に普及した生クリーム+卵+ベーコン+クラフトパルメザンチーズのカルボナーラもイタリアのものとはチョト違うんです。最近ではイタリアで修業する日本人コックが相当数増えたので、未熟な日本人コックがプロのイタリア人コックに賄(まかない)でカルボナーラを食べさせる機会も増えたわけですよ。基本的にイタリアの料理しか食べないイタリア人に日本の賄はほとんどウケませんから、知っている限りのジャパニーズイタリア料理を出すしかない(だってまだイタリアの料理は知らないので)。そこでカルボナーラです。でも日本人は誰でも必ず生クリーム入れちゃうから、イタリア人コックに「カルボナーラ・ジャッポネーゼ」なんてからかわれているわけです。
なんで日本では生クリーム入れるかっていうとですねぇ、端的にいえばアメリカ経由で伝わったから、ですかね。クリームを入れると卵が凝固しにくくなって失敗がないんです(たくさん作る店では、クリーム卵液を仕込むことで作業性がいい)っていうのと、乳脂肪でコクが出て美味しく感じる(アメリカでは濃厚味がウケる)、という2つの理由があるんです。

じゃあイタリアのカルボナーラってどんなの?っというわけで、フィオレンツァのカルボナーラ・レシピをどうぞ。カルボナーラはローマ周辺の料理で、ゆで上げのリガトーニを溶き卵とペコリーノチーズで絡め、仕上げに挽き立ての黒コショウをバシバシ振りかけただけのシンプルなもの。「ン、リガトーニ?」って思ったでしょ?そうなんです。ほとんどの場合ローマではリガトーニでカルボナーラなんですよ。もちろんスパゲッティ版もあるし、フィオレンツァでもスパなのでご心配なく(リガトーニ嫌いな日本人は多い)。そしてチーズもパルミジャーノではなく羊乳のペコリーノを使うのが普通。でも美味しいペコリーノは高いので(現地では安いけど、日本の輸入業者が高くしてる)、パルミジャーノで代用します。
そうそうベーコンはイタリアの食材ではないし、燻製液はじめ、化学調味料や保存料、発色剤、酸化防止剤、膨張剤などなど薬漬けなのでボクは全く使いません(きちんとした高級フレンチなんかで、意外にも無頓着に使ってたりするけど)。イタリアではグアンチャーレという豚の喉肉の生ハム(安いから)を使いますが、パンチェッタ(バラ肉の生ハム)で代用もします。もっとも、これらイタリアの生ハム類にもある程度の薬剤は使われていますのでお忘れなく(ベーコンほどではありませんが)。フィオレンツァでは自家製無添加のパンチェッタを使います。

材料 1人前
スパ 80g
卵 L玉1個
グアンチャーレ(本格)、又はパンチェッタ(代用) 40g
ニンニク 少々
ペコリーノ(本格)、又はパルミジャーノ(代用) 20g
挽き立ての粗挽き黒コショウ お好みで
ラード(本格)、又はバター(代用) 20g


↑①まずはフライパンにラード又はバターを熱し(ウチではラードを使う場合は市販のものでなく、ウチで使っているステーキ用の豚の背脂を煮溶かしたものを使います。自家製のラードは風味豊かで美味しいのです(面倒だけど)。市販品ラードは薬品臭いので、それならバターで上品に仕上げた方がいいです。
でもここではまず、「パスタってオリーブオイルじゃないの?」って質問を想定しなきゃいけませんでした。皆さんの期待を裏切るようで心苦しいのですが、イタリアではパスタや料理の油脂は必ずしもオリーブオイルじゃないんです。豊かに経済成長した現代社会では、肥満が大きな問題となってしまいました。そこで注目されたのがエクストラ・ヴァージン・オリーブオイル。美味しいだけじゃなく、色々と健康的な効能があるわけですよ。だからありとあらゆるイタリア料理に使われるようになったのですが、元々はオリーブオイルの他にも、ラード(生ハムやサラミを大量に作るので、脂がたくさん採れるんです)やバター(北イタリアは酪農地帯です)、向日葵油(トスカーナの風景画なんかで、一面のひまわり畑を見たことあるでしょ)なんかもよく使われてきたんです。ラードやバターで作ればコクのあるしっかりとした味わい、オリーブオイルで作ればサラッとした軽い食感に仕上がります。

↑②細かく刻んだグアンチャーレ又はパンチェッタを入れて焦げないようにじっくりソテーする。別にカリカリにしなくてもいいですよ。グアンチャーレを使う場合、あれってほとんど脂肪ばかりなので、脂肪を溶かしているうち結果的に残った筋がカリカリになるんです。肉質のあるパンチェッタならわざわざカリカリにしなくてもいいでしょう。

↑③挽き立ての黒コショウを投入し、

↑④にんにくのみじん切り少々を加え軽くソテー。決して焦がしてはいけません。

↑⑤すかさずブロード(出汁)、なければパスタの茹で汁でもぶち込んで、少々煮込み胡椒の風味やパンチェッタから味を引っ張り出す。

↑⑥パスタの茹で加減は、アルデンテよりも若干固目!

↑⑦⑤のソースベースが煮詰まって味が出てくるので確認。パンチェッタなどから染み出す塩分は意外にも多いので注意。味をみて塩を入れるかどうか判断する。後でチーズも加えるのでその塩分も考えに入れておく(こちらも意外と塩っぱい)。要するにこの段階では薄味。

↑⑧固めに茹で上がったパスタを投入し、フライパンを振ってソースベースとよく和えなじませる(中火)。

↑⑨ベースがパスタに絡んだところで溶き卵を加え、

↑⑩中火にかけながらフライパンを振ってよく混ぜ、全体に程よいとろみをつけてゆく。加熱しすぎると卵が凝固するので要注意。生クリーム入れとくと、ここで凝固しにくい。でも入れないwww
もし卵が固まってきてしまったら、パスタの茹で汁を少量加えて溶いてあげるといいですよ。

↑⑪すりおろしたチーズを加え混ぜ、味を確認する。やや薄味でね。

↑⑫味が決まったら盛り付け。

↑⑬最後にもう一度すりおろしたチーズを振りかけ、仕上げに挽き立ての黒コショウをバシバシ。この最後のチーズで塩っぱくなるから要注意。

ブォナペティート!
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# by cocogoloso | 2009-03-13 11:16 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(4) 

オイシイ ハナシ

知らないところからこんなファックスが飛び込んできました。


どうやら開業資金の半額をオーナー制度のような形で調達するから、投資家が店に来店した際には、特別待遇で利用させる契約(たったそれだけでいい)、といった内容でしょうか。しかしそんなオイシイ話がこの世にあるんでしょうか?タダ飯食わせるだけで、1千万~2千万円もの大金を提供してくれるなんて信じられません。確かめる気はありませんが、正直いって世間知らずだらけの飲食業界ですから、ホイホイとついて行っちゃう奴がいるかもしれません、いやいるでしょうきっと。特に「店を出してやる」の言葉にオーナーでないシェフは弱いですからねぇ。「返済不要」「無利息」なんて、こんなに調子のいい話、いったい大丈夫なんでしょうか?

最近では30代そこそこでオーナーシェフになる若者が増えてきました。昔は40前くらいで独立する人が多かったように思いますから、この20年ほどでだいぶ時代が変わったということでしょうか。親の援助は最も多いと思いますが、「独立開業支援」といった名目で資金調達をする会社もかなり多いようです。ボクも数社と話したことありますが、要するに「金を貸してやるからレジを管理させろ」、「そこから手数料をもらっとくから」ってな具合ですね。ということは雇われで店長に就任したのと大して変りない、どころか雇われなのに経営のリスクを背負わされるという最悪のシナリオ・・・!独立したのに業者の管理下にあるオーナシェフ、知られていませんが実は意外に多いんですよ。悪質な業者に捕まると大変なことになります。ちょ~ど利益分だけ持っていかれるような仕組みで、業者のために働き続けることになりかねません(余程店が大ヒットすれば別ですが・・・飲食店経営はそんなに甘くありませんから)。しかも売上が目標に届かないと運営方法まで指示される始末ですから。それで赤字が続けば店は没収。全額ではありませんが、業者への借金を背負ったまま辞めさせられるということです。

話は戻りますが、この業者のHPを見ると「株式発行による増資」という形で資金のご提供、また 弊社への経理業務の委託とありますから、資本の51%以上を握られるなどといった下手をこけば、代表取締役の座を取られちゃう、なんてこともかんがえられますよねぇ・・・。そしたら自腹で半額出したのに、やっぱり「雇われシェフ」ってことかい。

ボクって疑りすぎでしょうか?
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# by cocogoloso | 2009-03-11 22:40 | 雑談 | Trackback | Comments(4) 

テスタローリの作り方 Ricetta di TESTAROLI

イタリア最古の生パスタとして細々と受け継がれているテスタローリです。イタリアに多少詳しい(リグーリアに滞在経験のある)方のあいだでは、リグーリアの産物だと勘違いされていることも多いのですが、北トスカーナのルニジャーナ地方の伝統的な郷土料理です。ルニジャーナ地方はリグーリアに隣接しており、ルニジャーナ地方の栗栽培農家がリグーリアへと行商に来る際、栗加工品と共にテスタローリを携えてくるのです。でも州内のフィレンツェはちょと遠いので、フィレンツェでテスタローリを見かけることはほとんどありません。以前フィレンツェに居たころ、アパート近くのサンタ・クローチェ教会の路地裏にある地元食堂、"I' che c'è, c’èイ・ケ・チェ・チェ"を訪ねたんです。そしたらメニューにテスタローリがありびっくり!しかし注文してみるとカチコチに乾燥してしまったものが出され、おまけにワインリストは欠品だらけでスプマンテは冷えてないわ、他の料理も塩っぱかったりと、ブルギニオン菊池が「ピンキオーリさんと来店したときワインの品ぞろえも豊富で料理も旨い」とのお勧めも虚しく拍子抜けした覚えがありました。客によってサービス内容がまるっきり違うようですwww
変わった店名は、「何がある?あるものがある」という問いかけを一文にした、日替わりメニュー専門を匂わしセンスいいのですが、実際にはフィレンツェ定番のお馴染みメニュー専門で調理レベルも並み、全然イケてませんでしたwww

 最近テスタローリを頻繁に作ります。そのおかげで今更ながら新たなコツを発見し、かなり満足な出来具合になってきました。“食べ歩きの率直コメント”が面白がられて、意外と多くの同業者諸氏にも見て頂いているこのブログですが、「最近全然辛口コメントがなくて面白くない!」なんて言われてそうな気がするので、今日はサービスでテスタローリの具体的な作り方をご紹介。でも手の内なんか明かしていいんでしょうかwww?いいんですいいんです。料理が自分の手元を離れ、独り歩きし始めたら一人前の料理だと思ってますから。でも勉強のためイタリア語にしときました。これは現地の作り方を元にボクが研究した作り方なので、イタリアの料理書やイタリアのwebに書かれている作り方とちょと違います。前々からあれらはちょとおかしいなぁと思っているんです。


ingredienti
200g di farina tipo "00"
acqua q.b.(volume circa doppia di farina)

preparazione
mescolate bene la farina con l'acqua, e poi passarla con settaccio.
Per la cottura ci vorrebbe l’apposito strumento, "il TESTO", dal quale deriva il nome, ma difficile da trovarlo. potete usare una padella in ghisa .
mettete la padella sul fuoco basso,e versate un mestolino di pastella,cottura benissimo.
quando sono tutte pronte,tagliarle a losanghe.
poi bollite i testaroli nell’acqua bollente circa 30minuti secondi. toglieteli sgocciorarli e condirli al pesto di basilico con pecorino.

まっ、プロならこの写真見ればすぐ作れますねw
ほとんどの方は捏ねる生地を想像するようですが、実はこんなにシャバかったんですねー。どら焼きに似てるんですよ。ただしふくらし粉は使いませんよ。solo acqua e farinaです。

フツフツと気泡が立ってくるでしょ。これ重要。

ほらほろこんなに。

まんべんなく気泡が表れました。見えないけどもっと小さくて細かい気泡も。

だんだんと火が入ってくると色が変わってくる。

小麦粉がしっかり加熱されないとあの大事なモチモチ感がでないのだ。ネチョネチョしてたら火入れ不足。もっとしっかり焼きこみましょう!目標は「てろんてろん」で「もっちり」な感触。

よく見ると気泡から大量の水蒸気がプクプクプクプク発生。この穴から生地の水分が効果的に飛ぶ。だから気泡がきれいに出なかったテスタローリは水分が多くイマイチな具合。

片面だけ焼いて終了。焼いた面はこんな感じ。まんべんない焼き色が大切。こういう色付きでないと気泡は現れない。

折ってみるとこんなに柔らかい。この柔軟性も大事。

クオーコ諸氏はお試しください。きっと気泡が現れませんwww
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# by cocogoloso | 2009-03-09 14:37 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(6) 

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