マグノリア コーヒーロースターズのスペシャルティ コーヒー
素晴らしいエスプレッソを入手してしまいました。最近、といっても2年ほど前でしょうか、その品質の高さと信頼性を知った「スペシャルティ コーヒー」。「エスプレッソとは異なるモノ」との勝手な思い込みから、大した関心もなかったのですが、たまたま家人の幼馴染みがその道のプロとのことで、先日フィオレンツァにてカッピング(コーヒーの正式なテイスティング方法)のデモをしてもらいました。今までフィオレンツァで使っていた豆の他に3種類、計4種類をブラインドでテイスティングしたんです。いつも頻繁にワインのブラインドテイスティングをしているしプロの料理人です。目隠しでの味覚選別には並々ならぬ自信はあるのですが、コーヒーとキチンと向き合うのは初めてです。
まずは荒挽き豆をカップに入れ、それだけの香りを利きます。全体から漂う香ばしいコーヒーの香りは大変心地良いものですが、カップに鼻を近づけてそれぞれ見てみると、良し悪しがあるとも何とも聞いていませんが、4つの内1つだけは好みの香りではありません。何か虫歯のような嫌な臭いが混ざっているように感じます。2つは心地良い香りの立ち昇りを感じ、残りの一つは馴染みの香り、すなわち当店の豆ではないかと推察し、「意外と悪くないなぁ・・・、でもこの奥に感じる煮返したような臭いは当店のもの」と感じました。というのもちょっと前に、諸事情あって豆のメーカーを変えたばかりだったのですが、間もなくあまり好みの味わいではないことに気付いたところ、グッドタイミングで今回に至ったからです。
それぞれのカップに熱湯を注ぎ4分間抽出します。気泡にまみれた豆粉が表層を形成し、濃厚な成分が詰まっています。初めにその上澄みをスプーンですくってテイスティング。ワインと同じように少量を口先に含み、勢いよく空気を吸い込み混合気を作り、口中で香りを発散させます。熱さのせいもありますが、訓練が足りないせいで(初体験ですから)断定できません。次にスプーンで表層を割って香りを利き、軽く上下をかき混ぜます。そしてまたひと掬いテイスティング。時間経過と共にこれを繰り返しながら変化を見ますと、冷めるほどに味わいの違いがハッキリと出てきます。面白いことに初めから「いい香り」と感じていた2種類は、冷めてまた美味いことに気付き、「アイスコーヒーにも向いてますね?」と問えば、まさに「冷めても美味いのがスペシャルティ コーヒー」であるとのこと。今まで何年もの間、「なんでアイスコーヒー用の豆は不味いんだろう。ミルクとシロップを入れなきゃ飲めたもんじゃない」と思い続けていた疑問が解けました。初めから劣化している豆では、何をどう付け加えても越えられない壁があるのです。ましてやストレートで味わばその差は歴然。スペシャルティ コーヒーは、冷涼な地域の洗練された熟成ワインのような澄んだ味わいを持っており、その爽やかな酸味が印象的です。酸っぱいのではないんです。フルーツのように爽やかであったり、熟成ワインのように落ち着いた心地良い酸味だったりします。そして並みのコーヒーでよく感じる、わずかな時間経過とともに訪れる激しい品質劣化。酸っぱ臭くよだれ臭い、と言っても誰にも通じないかもしれませんが、とにかくボクは特にエスプレッソを飲み終わった後のカップの臭いがあまり好きではありません。今までそれはコーヒーの宿命かと思っていたんですが、どうやら違うようです。栽培から収穫、加工、そして我々の手元に届くまでの間、すべての工程に出来得る限り完璧な管理が行き届けば、コーヒーは冷めても劣化しない。正確に言えば、初めから劣化している豆では、熱いうちはよくわからないが、冷めるとその状態の悪さが前面に表れて不味さ爆発、というものだったのです。ブラインドの正解は思った通り、「いい香り」と感じた2種類が、どの程度優れているのかまでは判りませんが、なかなかいいものだそうで印象的でした。そして虫歯臭いと感じたものはコマーシャルコーヒーと呼ばれている、缶コーヒーやインスタントコーヒーから、一般的なブレンドとして使われる廉価品でした(それなりにピンキリありますが、缶コーヒーの原料豆などは「食品として最低レベルの粗悪品」とは随分昔から言われていました)。いつもの味わいは判って当然ですが、スペシャルティ・コーヒーとは、それほどに良さが判りやすいのです。
テイスティングでは所謂「コーヒー」と一般的に考えられる、日本人的にはお茶代わりに遠慮なく飲みたくなる抽出濃度です(お茶党は試飲の価値ありです)。しかも冷めても不味くならない。「ところでエスプレッソには適しているのか?」との問いに、「同じです」とあっさり。そして後日届いた豆に合わせグラインダーを調整、ウチのシィモネッリ(世間ではシモネリなどと残念な発音で呼ばれていますwww)でエスプレッソを抽出してみました。何度も調整を繰り返した結果、速度、粘度、色合い、キメ細かさなど理想的な抽出状態で思わずニッコリ。東京のイタリア料理店は、比較的まともなエスプレッソを提供している店が多いとは思いますが、超有名店も含めほとんどのフランス料理店は本当にヒドい。泥水のようなモノを平然とエスプレッソと呼んでいますから呆れます。食事を締めくくるカッフェを軽視するなんて、自ら料理店のインテリジェンスをブチ壊しているようなものです。イタリア料理にとって、エスプレッソとはそれ程までに重要な一品なのです。だからたった一杯のカッフェのために、50万円、100万円といった高額なマシン他設備一式に投資できるんです。でも大半の日本人には、エスプレッソの価値がまだまだ伝わっていないようで、我々の努力不足を感じます・・・。たまに「エスプレッソ大好き」っていうお客さんがいると、やっぱり嬉しくなりますねぇ、イタリア的で。
スペシャルティーコーヒーについての詳細はマグノリア・コーヒーロースターズさんまでどうぞ。
# by cocogoloso | 2009-05-27 20:31 | フィオレンツァ | Trackback | Comments(0)