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中大教授殺害:「自分変えないと」山本容疑者、ノートに

 「自分を変えないといけない」。中央大理工学部教授、高窪統(はじめ)さん(45)が殺害された事件で、逮捕された卒業生のアルバイト店員、山本竜太容疑者(28)は事件前、現状への不満をノートにつづっていた。警視庁富坂署捜査本部は、希望する職業に就けずにいた境遇が事件の背景にあるとの見方を強めているが、動機は口を閉ざしたままだ。山本容疑者は卒業論文の指導教官だった高窪さんを慕っていたという。捜査幹部は「何らかの理由で信頼する教授に裏切られたと感じ、一方的に恨みを募らせたのでは」とみる。【佐々木洋、古関俊樹、神澤龍二】

 ■動機語らず

 捜査幹部によると、山本容疑者は21日正午前、神奈川県平塚市の自宅で捜査員に任意同行を求められた時点で関与を認め、逮捕後は「いずれ逮捕されるだろうと覚悟していました」と素直に容疑を認めたという。

 だが事件当日の行動については詳細に供述するものの、動機を聞かれると「今は言いたくない」と口をつぐみ、下を向いてしまうという。捜査幹部は「どう説明していいのか迷っているのかもしれない」と話す。高窪さんの家族にはわびるが、高窪さん本人への謝罪の言葉はないという。

 ■人付き合いに悩む

 警視庁は自宅からノート数冊を押収。「人としゃべらない自分を変えないといけない」「前向きに頑張らなくては」などと自分を鼓舞する内容が目立つという。山本容疑者に兄弟はなく、07年夏ごろに東京都府中市の実家を離れ1人暮らしをしていたが、「家族ともっと連絡を取り合って話していかないといけない」という記述もあったという。

 05年1~3月に勤めた東京都立川市の電子機器メーカーでの仕事は、大学で専攻した電子回路を生かせる業務内容だったが、本採用はかなわなかった。この会社の社長は「コミュニケーションがうまくできず、溶け込めなかった」と振り返る。

 07年9月にアルバイトを始めた洋菓子製造会社に提出した履歴書には「技術者として御社で一から鍛え直したいと考え応募いたしました」ときちょうめんな文字で書いていた。

 捜査幹部は「文面や取り調べ中の態度からまじめさがうかがえる。まじめに頑張っているのにうまくいかず、自分なりに悩んでいたのだろう」と話す。取り調べに「ヒーリング音楽を聴くのが趣味」と話しているという。

 ■殺意を持続

 「思いこみの激しい人」。高窪ゼミのOBらの証言が、逮捕の有力情報になった。高窪さんも昨年5月ごろ、山本容疑者を名指しし「研究室に訪ねてきたら教えてほしい」と周囲に伝え、「問題のある人」とも話していた。捜査幹部は「教授は、卒業してから何年もたつ教え子からしつこく相談を持ちかけられ、困惑していた可能性がある」とみる。

 凶器の高枝ばさみを購入したのは事件の2~3カ月前だった。購入後、分解するなど自作していた。捜査関係者は「かなりの期間、殺意を持続していたことになる」とみている。

毎日新聞 2009年5月25日 2時30分(最終更新 5月25日 2時30分)

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