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中大教授殺害:元教え子の逮捕 大学関係者に戸惑い

厳しい表情で質問に答える中央大の田口東・理工学部長(左)=東京都千代田区で2009年5月22日午前10時半、梅村直承撮影
厳しい表情で質問に答える中央大の田口東・理工学部長(左)=東京都千代田区で2009年5月22日午前10時半、梅村直承撮影

 教授殺害の容疑者は5年前に卒業した教え子だった--。東京都文京区の中央大後楽園キャンパスで今年1月、理工学部教授、高窪統(はじめ)さん(45)が刺殺された事件。警視庁富坂署捜査本部は、神奈川県平塚市山下、アルバイト店員、山本竜太容疑者(28)を殺人容疑で逮捕した。「一体なぜ高窪先生が恨まれたのか」。卒業生や在学生は戸惑い、高窪さんの親せきもショックを隠せない様子だった。【神澤龍二、町田徳丈】

 「非常に大きな衝撃であり、重大に受け止めている」。卒業生の逮捕から一夜明けた22日朝、中央大の田口東理工学部長は東京都千代田区の同大駿河台記念館で開いた会見で沈痛な表情で語った。

 「今後、不幸な事案が起きないよう取り組んでいきたい」と述べた田口学部長。山本容疑者については「在学中に問題があったとは把握しておらず、非常におとなしい学生だったと聞いている」などと語り、会見はわずか約10分で終わった。

 卒業生や在学生にも衝撃が広がった。高窪さんの教え子だった男性会社員(25)は「容疑者が同じ学部出身者と聞いて残念だ。警察が卒業生の情報を洗いざらい調べているという話を聞いていたので『OBの逆恨みか』と思っていた。でも高窪先生との間で何があったにせよ、殺される理由はないはず」と強い口調で話した。

 理工学部に在籍する女子学生(21)は「4カ月間、容疑者が捕まらず毎日不安だった。昨日の報道で容疑者が逮捕されたことを知って、正直ほっとした。なぜ高窪先生が恨まれたのかは分からない」と困惑気味に語った。理工学部2年生の大沢佳祐さん(20)は「刺し方が残虐だったので、外部の人間の仕業だと思った。容疑者が卒業生と聞いて、正直複雑な気持ちだ。高窪先生と意見を言い合うことはあっても恨みにまで発展するとは想像できない。中央大のイメージが悪くなるのではと不安だ」と語った。

 「なぜこんなことになったのか」。東京都内に住む高窪さんのおばは22日未明、インターホン越しに声を震わせた。事件後は毎日朝と夜に早期解決を祈ってきた。残された子供の寂しさを考えるといたたまれず、体重が3キロも減ったという。四十九日が終わり、「誰がやったのかいつまでも分からないのか」と不安を抱いてきた。

 高窪さんの自宅近くに住む男性会社員(65)は「地域で恨みをかう人でなかったので、学校関係者に襲われたのではと思っていた」と話した。

 ◇数カ月で退社し転職を繰り返す…山本容疑者

 大手食品メーカー、電子機器会社、航空機器製造販売会社……。捜査本部によると、山本容疑者は高窪さんのゼミで電気電子情報通信工学を学び、1年留年して卒業。だが職場になじめず、いずれも数カ月で退社し転職を繰り返したという。

 捜査関係者によると、山本容疑者は大学時代まで東京都府中市で両親と暮らしていたが、卒業後、神奈川県平塚市の以前祖父母が住んでいた住宅で1人暮らしをしていた。

 平塚市の自宅近くの主婦(62)は「午前8時か9時ごろ、作業着姿でリュックサックを背負い、自転車で出かける姿をよく見かけた。小学生のころは、祖父母らから『りゅうちゃん』と呼ばれていた。自宅前で1人でサッカーをしていた姿を覚えている」と話した。21日午前10時半ごろ、捜査員らしき男性が自宅前にいるのを見かけたという。「りゅうちゃんは玄関で応対していた。何かあったのかと思っていたら、テレビで逮捕されたことを知り、驚いている」と戸惑いの表情を浮かべていた。

 近所の70代の男性は「以前は兄弟で暮らしていた。最近は兄が引っ越し、1人で住んでいるみたいだ。家には人の出入りもほとんどなく、近所付き合いもない」と話した。別の住民は「外で会ってもあいさつをしない。普通の男という印象」と話した。

毎日新聞 2009年5月22日 11時46分(最終更新 5月22日 11時55分)

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