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中大教授殺害:容疑者「先生に不満」 就職で逆恨みか

 東京都文京区の中央大学で1月、理工学部教授、高窪統(はじめ)さん(45)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された卒業生で神奈川県平塚市山下、アルバイト店員、山本竜太容疑者(28)が警視庁富坂署捜査本部の調べに対し「先生に不満があった」という内容の供述をしていることが分かった。捜査幹部が明らかにした。

 山本容疑者は昨年6月、就職活動に使う卒業証明書や成績証明書を取得するため大学を訪れて以降「何度か足を運んでいた」と供述していることも判明。捜査本部は、山本容疑者が希望する就職ができないことで、高窪さんを逆恨みしていた可能性もあるとみて、動機を追及している。

 捜査幹部によると、山本容疑者は「午前9時ごろに後楽園キャンパスに着いた。先生が出勤して1号館に入るのを確認し、トイレの個室で待った」とも供述しているという。

 高窪さんは事件当日の1月14日は午前10時ごろに出勤。同10時25分ごろ、後楽園キャンパス1号館4階のトイレで、背中や胸などを刃物で刺され死亡しているのが見つかっていることから、山本容疑者は約30分間、個室で待ち伏せし、高窪さんを襲ったとみられる。

 捜査本部は、山本容疑者が下見をするなどして、高窪さんが講義前にトイレに行く習慣を把握していた可能性があるとみている。

 山本容疑者は事件後、返り血を浴びた衣服を隠すためロングコートを羽織り電車で逃走したとみられる。捜査幹部によると、山本容疑者は「着ていた衣服と凶器の刃物は、帰宅後に捨てた」と供述しているという。

 捜査幹部によると、山本容疑者は「いずれ逮捕されるだろうと覚悟していた。ご家族には申し訳ないことをした」と話しているが、高窪さんに対する反省の言葉はないという。

 捜査本部は21、22日、山本容疑者の自宅やアルバイト先などを家宅捜索し、パソコンなどを押収した。【佐々木洋、古関俊樹、神澤龍二】

 ◇専門生かそうと仕事転々

 中央大理工学部を卒業後の山本容疑者の足取りをたどると、転職を繰り返しながらも、大学で学んだ「電子回路の研究」を生かせる仕事に就こうと模索する姿が浮かぶ。

 山本容疑者は大学卒業後の04年4月、東証1部上場の大手食品メーカーに就職し、豆乳などを製造するグループに配属された。豆乳製造と製造ラインなどの保守管理が主な業務だったが、試用期間中の翌5月中旬に退職した。メーカー担当者は「仕事が合わなかったのかもしれない。特にトラブルはなかったと思うが、詳しい経緯は分からない」と話す。

 05年1~3月には、ハローワークの紹介で東京都立川市の電子機器製造販売会社に勤務。社長によると、業務内容は電子回路の設計で「自分がやりたいと思っていた仕事」と意欲はみせていたという。だが本採用はされなかった。社長は「理工学部出身として一定のレベルはあったが、採用しようとは思わなかった」と言葉を濁す。

 06年12月には別の電子機器メーカーに就職したが約3カ月で退職。07年9月ごろからは、自宅近くのホームセンターと洋菓子工場のアルバイトを掛け持ちしていた。洋菓子工場の社員は「まじめな仕事ぶりだった」と評価するが、山本容疑者は昨年6月、「パソコンが得意なのでその道に進みたい」という理由で辞めたという。【佐々木洋、村上尊一】

毎日新聞 2009年5月22日 23時38分(最終更新 5月23日 0時13分)

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