福岡市のこども病院移転問題です。
福岡市は、新しいこども病院で導入を計画しているPFI方式について、大幅な見直しを決めました。
突然の方針転換の背景に何があったのでしょうか?
「PFI方式」、施設の建設や運営の一部を民間会社にゆだねる手法で、福岡市は人工島に移転する新しい「こども病院」に導入を計画してきました。
「コストが削減できる」というのがその理由です。
福岡市は、先月、業者向けの説明会を開催、来月には業者の公募を開始する予定で準備を進めていました。
また、10日ほど前までは、PFIを実施するための議案について、一部の市議会議員に説明を行っていました。
しかし、急きょ、大幅に見直すことが明らかになったのです。
業者の公募は延期し、PFIの実施に必要な議案も、来月の市議会への提出を見送ることになりました。
公募直前というタイミングでの方針変更は異例の事態。
いったい何が問題となっているのでしょうか?
PFIを全国で初めて採用した滋賀県近江八幡市の市民病院。
去年12月、PFIを導入してからわずか2年半で破たんしました。
前の市長時代に治療以外の病院運営を民間会社にすべて委ねることを決め、30年間で68億円のコスト削減を見込んでいましたが、現実にはたった2年半で逆に52億円の赤字を生んでしまいました。
また、収入を過大に見込みすぎたことも、破たんの一因でした。
福岡市の見通しでも、収入は2007年度の55億円から、84億円に増えると試算しています。
RKBの取材に応じた近江八幡市の市長は、「収入の増加予測」と「PFIの採用」という福岡市の計画について、「福岡市も同じ?お気の毒でございます。よほど契約を慎重にしないといけない」と話していました。
近江八幡市は民間会社に違約金を払って契約を解除、病院を市の直営に戻しました。
こうした状況を受け、先月開かれた市の諮問機関の会議では、複数の医師や議員から、「ほとんど成功例がなく、不安だ」として、十分な検討を求める声が相次いでいました。
そして、今回明らかになった突然の方針転換、「リスクが大きすぎる」という市の財政サイドの判断が背景とみられています。
市の幹部は、「PFIは病院の建設だけに限定し、運営は民間に委ねないことも検討している」としています。
一方、こども病院の人工島移転について、百条委員会の設置を求めている弁護士グループでは、今回の方針変更について、「当然の判断だ」と話しています。
弁護士グループは、こども病院の移転問題について大規模なシンポジウムを予定しています。
福岡市は、PFIを見直したとしても「2014年の開院予定は変わらない」としています。
しかし、新病院の収支計画はすべてPFIを前提に行われていて、新病院計画そのものに影響を与えるのは必至です。