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社説

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安保理決議―強固な結束あってこそ

 北朝鮮の2度目の核実験を受けて、世界の目は国連安全保障理事会がどう対応するかに注がれている。

 06年の初の核実験をめぐる決議は結果的に失敗に終わった。安保理の存在自体が問われかねない深刻な事態だ。国際社会として一致した強い意思を北朝鮮に突きつけなくてはならない。

 安保理の緊急会合では、新たな決議をつくることで一致した。オバマ米大統領は麻生首相、李明博韓国大統領との電話協議で「強い決議が必要だ」と述べ、合意づくりに向けて3カ国が協力していくことを確認した。

 3年前の決議は、二つの点で画期的だった。北朝鮮に対する初の決議であり、大量破壊兵器の開発につながる資金や物資の移動を止めるなどの制裁措置を加えたことだ。

 だが残念ながら、制裁の履行は加盟国の判断に委ねられ、現実にはほとんど機能しなかった。いきなりの制裁には北朝鮮の暴発を招きかねないというためらいがあったし、制裁する側の結束を保つために強制色を弱める必要もあったからだろう。

 実際、北朝鮮をめぐる各国の思惑にはかなりの違いがある。北朝鮮の核保有は日米韓にとって深刻な脅威だが、中国やロシアにとっても受け入れられる現実ではない。北朝鮮が開放的な政策への転換をとげることが好ましいというのも両国の本音に違いない。

 ただし、朝鮮半島の混乱が自国に波及するような事態は避けたい。だから、北朝鮮にあまり強い圧力をかけることには慎重だ。

 こうした違いは、先月の弾道ミサイルの発射実験をめぐって、安保理決議とするか、議長声明にとどめるか、という形でも表面化した。

 だが今回、北朝鮮は核とミサイルで国際社会への脅しを強め、「核保有国」への野心を一段とあらわにした。いまこそ各国は違いを乗り越え、核放棄を厳しく迫らなければならない。

 どんな制裁を盛り込むかが注目されているが、大事なのは決議の実効性であり、それを支える加盟国の結束だ。

 その点で、中国の重要性を改めて指摘したい。北朝鮮の核問題で地域の緊張がこれ以上高まるのは中国にとっても好ましくないだろうし、核不拡散や平和に対して大国としての責任があることも自覚すべきである。

 日本は決議の草案づくりに参画する。ほかにもすべきことがある。拉致問題を含めて北朝鮮が政策を改めれば国交を正常化し、経済支援をする用意が日本にはある。それをもっと強く訴えて国際社会の結束を促すことだ。

 決議が万能薬でないことは、中東和平やイラン問題を見れば明らかだ。だが、今ここでいかに実効性ある内容を決議に盛り込めるか、安保理としての正念場を迎えている。

スポーツ庁構想―すそ野広げた議論尽くせ

 スポーツにかかわる行政は文部科学省や厚生労働省など多数にまたがる。これをまとめて「スポーツ庁」を新設してはどうかという議論が、政府の教育再生懇談会で進められている。

 再生懇委員の1人で北京五輪の陸上銅メダリストの朝原宣治さんは、こう提案した。「スポーツ行政を一元的に推進するため、国主導の専門機関の設置を検討してほしい」

 これに応えて麻生首相は「スポーツの問題はいろんな省庁にまたがっている。まとめるのは一つの考え方だ」と前向きな姿勢を見せた。

 確かに窓口は多い。学校体育や競技スポーツは文科省、障害者スポーツは厚労省が担当する。企業スポーツは経済産業省、スポーツ公園の整備は国土交通省といった具合である。

 これには歴史的な経緯がある。日本では、スポーツは「知育・徳育・体育」の中の一つと見なされ、教育の一環とされてきた。だが障害者スポーツなど、教育の枠組みでは捕らえきれぬ側面が増えてきた。大きな方向性を持った行政が不在のまま、スポーツの多様化が進んできた。

 そんな中、スポーツの現場はいま大きく揺らいでいる。少子化と教員の高齢化で小、中学校の部活動は先細り傾向にある。子供の体力低下も著しい。企業スポーツは深刻な経済危機下で、部の廃止が相次いでいる。

 そもそもスポーツ庁構想は、クレー射撃の五輪代表だった麻生首相自身が以前から推しているものだ。一昨年、自民党の政務調査会にスポーツ立国調査会ができた。初代会長は麻生氏。発足の背景には、庁を創設して選手強化を国策として推進してほしい、というスポーツ界からの強い要望があった。

 今年に入り、「『スポーツ立国』ニッポン」を再生懇のテーマに、と求めたのも麻生氏。「青少年や高齢者のスポーツ支援」なども課題には入れているが、軸足は選手強化の方にある。

 一線級の強化は、悪いことではない。世界で活躍する選手に私たちは元気をもらう。子供たちには、あこがれの存在がいることが、スポーツに親しむ動機にもなる。

 だが今の日本を考えれば、日々の暮らしの中にあるスポーツをより豊かにするという点にこそ価値を置きたい。

 子供の体力低下にどう歯止めをかけるか。医療費抑制の観点から、生涯スポーツの普及も大事だ。カヌーが盛んな町もあれば、町ぐるみで柔道に取り組むところもある。個性ある多様なスポーツ文化を支えるという発想もあっていい。

 議論の結果、一元化が必要であるというなら検討すればよい。まずスポーツ庁ありきではなく、私たちの身近にあるスポーツをどうはぐくむか、という広い視野から考えたい。

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