C型肝炎の被害者からヒアリング―厚労省の薬害検討委
厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」(座長=寺野彰・獨協医科大学長)は5月27日、今年度初となる第13回会合を開き、C型肝炎の東京原告団の被害者2人からヒアリングを行った。被害者らは「こんな理不尽なことで死んでたまるか」「なぜこんなつらい人生を送らなければならないのか」と、薬に翻弄された人生を切実に訴えた。検討委では今後、4月に取りまとめた第一次提言を踏まえ、提言で積み残された医薬品行政組織の見直し案や第三者監視機関などについて、具体的な内容を検討する方針だ。
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医薬品の「添付文書」などで議論―肝炎再発防止の検討委 ヒアリングを行った被害者は、28年前の脳外科手術でクリスマシンを投与された男性と、22年前の出産時にフィブリノゲン製剤を投与され、その後に第2子も母子感染した女性。
男性は1995年、病院から呼び出されてHIV検査を受けたが、医師から肝機能については特に言われなかったため、5年後に足を骨折した際の血液検査で感染を知った時には、投与から18年が過ぎており、既に症状は慢性化していた。男性は「最も大切な治療時期に感染が分からなかった。この時に知らせてくれたら…」と悔しさをにじませた。
一方、87年の出産で止血剤としてフィブリノゲン製剤を投与された女性は、事前に医師が製剤のロット番号を確かめていたにもかかわらず感染に至ったことを明かし、「人体実験をされたような気持ちだ」と声を荒げた。女性は第2子出産時にも、母子感染の可能性の低さを医師から説明されていたが、産後の検査で感染が発覚。その数年後には夫に先立たれ、経済的な事情などから「インターフェロンを打ちたくても打てない」と涙ながらに訴え、副作用が少ない新薬の開発を強く求めた。
被害者からのヒアリングを聞いた寺野座長は、「(被害者が)治療を行える環境にあるかということも重要な問題だ。この委員会の範囲を超えているかもしれないが、個々の救済も考える必要があるとつくづく感じた」と述べた。
ヒアリング終了後には、提言で積み残しとなっていた医薬品行政組織の見直し案の議論の方向性について意見交換した。組織案としては、承認審査、安全対策、副作用被害救済などの業務について、▽一括して厚労省医薬食品局(別の組織もあり得る)が行い、審議会が厚労相に答申する(A案の「公務員型」)▽一括して独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が行い、同機構が厚労相に答申する(B案の「非公務員型」)―の主に2つがあり、いずれも「最終的に大臣が全責任を負う」としている。委員からは非公務員型について、職員の権限や国の賠償責任、運営資金などに関して問題提起する意見が出た。
次回の会合は6月25日に開かれ、有識者からヒアリングを行う予定。厚労省では、第一次提言についても、近く国民の意見を求める方針だ。
更新:2009/05/27 21:42 キャリアブレイン
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