2009年5月26日

珍しく、試合開始２時間以上前に雨中止が決まりました。
このところお客様が続いていたこともあって、久しぶりに
家族３人での夕食。パパっ子の寛は、僕が早い時間にいるのでとても嬉しそうです。彼が学校に行く時は寝ているし、試合から帰ってきてからは、ほんのわずかしか触れ合うチャンスがありません。だからナイトゲームから戻ると、ヨメに叱られながらも僕を待って起きていた寛と少し遊び、そして絵本を読み聞かせて寝かせるのが、僕の日々の楽しみになっています。

しかし今夜は、厳しい質問にびっくりしました。
「パパ、パパはいつまでアイオワにいるの？」
僕が野球選手だということは理解していますが、まだ、メジャー、マイナーという違いについてはよく分かっていません。
「かんくんはセントルイスにずっといたいの・・・」
「・・・」

よく考えたら、まだ生まれて５年しか経っていないのです。
その彼を、僕の都合で生まれたときからあちこち連れまわし、学校はキャンプ地も含めて年に３回変わる、というパターンを続けてきました。
現在はセントルイスとデモインの学校どちらにも通っていて、
そんなめまぐるしい生活に、子供心にも疲れを感じているのでしょう。
あとでそっとヨメに聞いてみたら、実は「明日アイオワに行くよ？」と言うと、毎度悲しそうに「・・・はい・・・」と返事をするらしい。それに対して、「寛が行きたくないならやめよう。でも、ママと寛が行かないと、パパは一人ぼっちになっちゃうよ？」とヨメが言い、やっと寛が「・・・行く・・・」と納得するのだとか。

心がずしんと重くなりました。

子供がうんと小さいうちは、子供の意見、などはないも同然なので、問答無用の移動が可能でした。しかし今の寛には５歳児としての意志と希望があり、要求があり、我慢があります。こと生活環境に関しては、我慢だけを強いてきたような気がして、いまさらながら、反省することしきりです。

この８月からは、アメリカでの義務教育が始まります。そうなると、これまでのように移動しながら各地の保育園に通う、といったフレキシブルな生活はできません。
どの野球選手も、いえ、職業に関係なく、仕事の都合と家族の生活場所の兼ね合いは、子供が特定の年齢に達すると、どんどん難しくなっていくのでしょう。我が家にとっては、あと数ヶ月で最初の関門がやってくることになります。

いつもよりちょっと長く離れているだけで、これまでできなかったことができるようになっていたり、背が伸びていたり、お兄ちゃんのような表情になっている寛。
これからは、ますます成長の過程を見逃すことになるんやなあ、と思うと、どれだけ疲れていても、相手をしてやろう、遊んでやろう、という気持ちにさせられるのです。
大きくなったら「遊んでくれ」とお願いしても、お断りされてしまうであろうから、せめて今のうちに。

アイオワ州デモインにて　田口壮　

2009年5月25日

僕は「遅刻をしない」ことをモットーとしているため、
どんな集合時間にも、それよりずっと早めに出かけます。
球場入りもかなり早く、あとから来た若い選手が気まずそうにするほど。
意地悪じいさんだと思われていたらどうしましょう。

しかしデーゲームの今日は驚きました。
朝早いというのに、駐車場には車がびっちり。たくさんの人が歩いていて、
球場内からは、ボソボソとアナウンスの声が聞こえてくるのです。
（うわっ！やってもた！）
何で？ついに遅刻？と気持ちは焦るものの、
脚をかばってとっさに駆け出すことができません。
両手両脚が一緒に出るような怪しい早歩きでクラブハウスにたどり着き、試合前の球場を利用しての「５マイル（約８キロ）マラソン」という行事が行われていたことを知りましたが、それを前日に球団が教えてくれなかったというのもひどい話です。

コンディショニング・コーチのクリスは、駐車場に入れてもらえず立ち往生しました。
いつもは駐車場の係員が来る前に球場入りするため、球団の身分証明証を持たないのが常。
しかし、今朝は係員が入り口をがっちり固めていたため、
「駐車料金は？」と止められたのです。
「いや、俺はカブスのコーチだ」
「じゃあ、証明してよ」
「証明証を今日は持っていない」
「ほら。信じられない。お金払って！」
「お願いだから入れてくれ！コーチなんだってば！」
「でも、俺はお前のこと、知らないよ？」
「俺もお前を知らん！！」

最後は説得して入場させてもらったものの、
まるで彼自身が５マイル走ってきたかのように、
げっそりと疲れ果てていました。

アイオワ州デモインにて　田口壮　

2009年5月24日

走れません。イラつきます。むかつきます。
これまで使っていなかった、いえ、使えなくなっていた筋肉を
最大限に使っているため、これまでにない筋肉疲労と痛みに襲われているのです。
長く骨折していた人が、完治したにも関わらず、どこか怪我の部分をかばって歩いてしまうように、僕もまた、この一ヶ月で「かばって歩く」のに慣れてしまい、そのため筋肉のバランスが狂ってしまったため、「怪我仕様」から
「通常仕様」へと、筋肉を戻す移行の真っ只中にいます。
同時に、「またバチっとくるんちゃうか」という不安が付きまとうため、１００パーセントで動けないのです。

じわじわ動いては、様子を見て。
もうちょっとペースを上げては、さらに様子を見て。
このもどかしさは、これまで味わったことがありません。

あと一週間で、フィールドに戻る。戻れるはず。戻れるのか？
戻りたい。肉離れは時間をかけるのが一番の治療、と言われますが、悠長に治療をしていられない立場であるだけに、気持ちだけが先走ってどうしようもありません。

今夜は気持ちが落ち着かず、こうしてメールを書いていると、
キーを叩く音が、いつもより大きいのがよくわかります。

アイオワ州デモインにて　田口壮　

田口選手宛のファンレターはこちらまで　letter@taguchiso.com