自殺対策に取り組むNPO法人「ライフリンク」(千代田区、清水康之代表)と足立区は26日、区内の自殺予防に向けた総合対策を推進するための協定書を締結した。いくつもの悩みを抱え、自殺に追い込まれていく人々を漏れなく支援するために、区内の相談機関のネットワークを構築し、都市型自殺予防のモデル作りを目指す。自治体とNPOが自殺対策で協定書を結ぶのは全国的にも珍しいという。【前谷宏】
ライフリンクが実施している自死遺族の調査によると、人が自殺に追い込まれるまでには、失業や身体疾患、負債、うつ病など平均して四つの要因を抱え込む傾向がみられた。
自殺者の72%は生前に何らかの専門機関に相談を持ち込むが、行政などが開設している相談窓口は個別の要因に関するものが多く、必要な支援にたどり着けないまま亡くなるケースが多いという。
このため、区とライフリンクは区内の相談機関を洗い出し、「多重債務」などの個別の場面に対応した相談機関を示すフローチャートを作成。各機関の担当者を集めた合同研修会なども開いて顔の見える関係を構築し、悩みを抱えた人の支援を巡る「縦割り行政」の打破を目指す。
このほか、地域で住民の相談に乗ることが多い民生委員らを対象にした研修会や自殺に関するシンポジウムなども開き、自殺問題への啓発も実施する。
足立区は06年に自殺者数が23区で最多になるなど、都内でも自殺者が多く、近藤弥生区長は「区内では10年間で町会一つの人口に当たる1616人が自殺している。生きたいという声にならない叫びを受け止められる区役所にしたい」と抱負を述べた。
清水代表も「ネットワーク構築についてこれまで培ってきたアイデアを現場で試しながら、全国の都市の模範となるモデルを作っていきたい」と話した。
〔都内版〕
毎日新聞 2009年5月27日 地方版