国連安全保障理事会は、二度目の核実験を強行した北朝鮮を非難する声明を発表した。さらに、新たな制裁決議について、日本や常任理事国が具体的な協議に入った。
安保理は、日本の要請で緊急に開かれた。今回の核実験は、安保理が二〇〇六年十月の最初の核実験後に採択した決議一七一八の「明白な違反」との認識で全理事国が一致したという。声明は「議長声明」「報道陣向け声明」より“格下”の議長の談話的な性格のものだが、全理事国の認識が一致したという点で、意義は大きい。
それでも、新決議をめぐって北朝鮮と友好国である中国、ロシアが対応に苦慮しそうだ。四月五日の長距離弾道ミサイル発射に対して、安保理が採択したのは、発射を非難する議長声明にとどまった。拘束力を持つ決議の採択に中国とロシアが反対したためだ。
六カ国協議への影響も懸念したためとみられるが、今回は安保理の決議や声明を重ねて踏みにじる北朝鮮の暴挙を許すわけにはいくまい。中ロは強い姿勢を示すべきだ。このままでは、安保理の地位を自らおとしめるだけだろう。
麻生太郎首相は、韓国の李明博大統領、米国のオバマ大統領と相次いで電話会談し、新たな制裁決議の採択を目指すことで一致した。中国、ロシアへの働きかけも、日米韓が連携して一段と強めることが必要だ。
特に六カ国協議の議長国である中国の役割は鍵になりそうだ。決議一七一八採択後も、中国は北朝鮮への経済的な支援を続けている。しかし、六カ国協議離脱を表明し、核実験を強行した北朝鮮を支援することは、国際的にも理解されないだろう。新たな決議の行方は、中国にかかっていると言っても過言ではない。
北朝鮮との対話姿勢を示しているオバマ政権の出方も注目される。ミサイル発射という「瀬戸際戦術」を打たれても大きく動かなかったことが、逆に北朝鮮を核実験強行にまでエスカレートさせてしまったようだ。背景には、金正日総書記の健康問題や後継体制など、北朝鮮の内部事情が取りざたされている。当面、米朝対話が難しい状況になったことは間違いない。
肝心なのは、北朝鮮が核放棄へ向かうよう、各国が連携して対処していくことだ。国際社会が結束し、より強いメッセージを打ち出すことが欠かせない。安保理による、実効性の伴った制裁決議が急がれる。
障害者団体向けの郵便料金割引制度悪用事件が、また新たな局面を迎えた。ダイレクトメール(DM)を不正発送していた障害者団体「凜の会」(現・白山会)の承認に向けた厚生労働省の「稟議(りんぎ)書」を偽造したとして、同省係長が虚偽公文書作成・同行使の容疑で大阪地検特捜部に逮捕された。
稟議書は、割引制度を利用する上で欠かせない障害者団体証明書の前提になるという。捜査関係者らによると、係長は二〇〇四年四月ごろ、凜の会への証明書発行を認める手続きが進んでいるように装った稟議書を偽造した疑いが持たれている。
厚労省は稟議書を含めて、凜の会に証明書を発行した記録や資料はないと主張した。しかし、稟議書が内部文書の様式と酷似していることなどから、特捜部は厚労省内部の関与との見方を強め捜査を進めていた。
凜の会側は、この稟議書を特定非営利活動法人(NPO法人)「障害者団体定期刊行物協会」に提出した。同協会に加盟できれば割引制度が受けられる点に着目、その材料に稟議書を使ったとみられる。だが、最終的には協会に加盟せず、郵便事業会社(日本郵便)に厚労省の証明書を提出して制度の適用を認められた。この証明書も偽造の可能性があるという。
小さな広告代理店の摘発で始まった一連の事件は障害者団体や企業、日本郵便、そして霞が関へと及んできた。根の深さに驚く。厚労省は障害者福祉行政を預かる立場にある。容疑が事実とすれば大きな裏切り行為であり、断じて許されない。
舛添要一厚労相は、内部調査を進める意向という。不正の見返りは何か。省内のチェック機能はどうか。他への広がりはないのか。徹底した真相解明と再発防止策を求めたい。
(2009年5月27日掲載)