【ワシントン斉藤信宏】新興国への金融危機の波及が深刻化する中、国際通貨基金(IMF)は16日、西欧の金融機関による過剰融資が新興国の経済危機を引き起こしたとの内容の世界経済見通し(分析部分)をまとめた。この中でIMFは「大規模な融資を実施した先進国の金融機関が自らの支払い能力の問題に直面したことで、金融危機は急速に新興国に波及した」と結論付け、「新興国全体の資金不足は長引く可能性がある」と先行きへの懸念を表明した。
IMFによると、新興国への融資残高は日本や米国と比べて西欧金融機関が突出して多い。特に東中欧の新興国は西欧金融機関との関係が緊密で、07年末の融資残高は東中欧新興国全体の国内総生産(GDP)の52%まで膨らんでいた。新興国の成長を支えてきた西欧からの巨額融資は、金融危機を契機に一転、急激な資金引き揚げを生み、欧州新興国の経済危機を深刻化させたという。
欧州では経済危機の影響で、ハンガリーとアイスランド、ラトビアで政権が崩壊した。IMFへの支援要請も相次いでおり、欧州連合(EU)加盟国では、ルーマニアとハンガリー、ラトビアが既に支援を仰いでいる。
今月2日にロンドンで開かれた主要20カ国・地域(G20)による第2回金融サミット(緊急首脳会議)では、IMFの財政基盤を2500億ドル(約25兆円)から1.1兆ドル(約110兆円)に強化する方針が宣言に盛り込まれたが、「東中欧諸国の危機が顕在化すれば、1.1兆ドルでも足りなくなる」(米エコノミスト)との指摘もある。また、西欧金融機関はアフリカやアジアの新興国への融資規模でも突出しており、今後は、さらに危機が波及する可能性もある。
【ワシントン斉藤信宏】IMFは16日に公表した世界経済見通しの分析部分で、世界経済の回復への道筋について、「現在の景気後退は異例の長期にわたる深刻なものになる可能性が高く、回復も鈍い」と厳しい見通しを示した。
IMFは「金融危機を伴う景気後退は深刻になる傾向がある」との認識を示し、「世界で同時に景気後退が発生すれば、後退局面はさらに長引く」と分析した。
そして「金融システムへの信頼回復と強力な財政出動による景気対策が重要になる」と、世界各国政府に景気回復に向けた行動を呼び掛けた。
毎日新聞 2009年4月17日 0時05分(最終更新 4月17日 0時47分)