情報BOX:北朝鮮の核兵器プログラム、今後のシナリオ
[ソウル 26日 ロイター] 北朝鮮が25日に実施した核実験は、同国が核兵器プログラムを推し進める上で、重要な一歩となる可能性がある。今後考えられる北朝鮮の動きをまとめてみた。
<北朝鮮・寧辺の核施設>
北朝鮮はこれまで、6カ国協議での合意による無力化が進められていた寧辺(ニョンビョン) の核施設で使用済み核燃料棒の再処理を再開すると公言してきた。
米ロスアラモス国立研究所の元所長で、北朝鮮を数回訪問したことがあるジークフリード・ヘッカー氏によると、再処理作業は早急に再開され、年内には少なくとも8キロのプルトニウムが抽出可能。核爆弾1個の製造に必要なプルトニウムは、通常6─8キロという。
今回の核実験以前に、北朝鮮は核兵器6─8個を製造できるプルトニウムを保有していた。核分裂性物質をさらに製造するために、核燃料製造施設と原子炉の再開計画を明らかにするとみられる。専門家は、寧辺の核施設がフル稼働するまでに1年かかり、その後は1年で爆弾1個分のプルトニウムを製造できるようになると話している。
<追加の核実験は>
韓国政府筋は、北朝鮮が兵器能力の向上のため、早急に追加実験を実施する可能性を指摘する。しかし、わずかなプルトニウム備蓄が実験によりさらに減ってしまうことから、北朝鮮には極めて危険な賭けとなる。また、寧辺の一部施設が修復不能である可能性があり、核分裂性物質の製造計画が、専門家の見通しからずれ込むことも考えられる。
<隠された計画>
情報筋によると、北朝鮮は核実験から得たデータを利用し、将来的にはミサイルに搭載可能な兵器を開発しているという。これには、あと数年かかるとみられる一方、北朝鮮の独力では不可能との見方もある。
また専門家は、北朝鮮が放射性物質による「汚い爆弾」のほか、化学兵器や生物兵器の開発も進めていると指摘する。
<秘密のウラン濃縮プログラム>
ウラン濃縮プログラムは、米国が北朝鮮による核兵器開発のもう1つの方法として長く疑いを持ってきた。これについては、もっとあからさまになる可能性がある。
北朝鮮は、建設予定の軽水炉に燃料を供給するとして、ウラン濃縮プログラムの開始を発表する可能性がある。専門家によると、民用とされるこの核プログラムは、兵器用の濃縮ウラン製造の隠れみのとなる可能性があるという。
<核兵器の拡散>
米国は、核兵器プログラムをめぐり北朝鮮がシリアを支援していると指摘しているが、専門家は核兵器が拡散する可能性は現実的な脅威だとみる。
北朝鮮の核技術は、まだ基礎段階であるものの、実験によって向上している。核燃料サイクルとプルトニウムを兵器化する能力は成熟段階にあり、現在では長崎に投下された原子爆弾並みとされる兵器を製造できるとみられる。
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ポスト金正日体制の構築も狙いか
多くのアナリストは北朝鮮の核実験について、金正日総書記の後継者選びをうまく進めることも狙いの一つだったとみている。
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