母子感染、「拍子抜けするほど少ない」―新型インフル
国立感染症研究所感染症情報センターの安井良則主任研究官は5月26日、同センター内で開いた説明会で、大阪府の新型インフルエンザ感染者の集団発生について行った積極的疫学調査の中間報告を行った。この中で安井研究官は、自宅で療養していた感染者から母親に感染するケースが「拍子抜けするほど」少なかったと指摘した。また、大阪での集団発生事例は「いずれも軽症」で、発熱や急性呼吸器症状が多く見られたと述べた。
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安井研究官は5月16−24日、大阪に滞在し、64人の感染が確認された茨木市の中高一貫校と、5人の感染が確認された八尾市の小学校の事例について、積極的疫学調査を行った。
安井研究官は、自宅療養となった感染者から母親への感染について、「本当であれば、家庭でまずお母さんが感染するだろうと予想されるが、拍子抜けするくらい少なかった」と指摘。「きょうだいには感染しても、親子関係の濃密な母親と子どもの関係でもそんなに感染者がいなかったというのが印象だ」と述べ、今後さらに解析を進めるとした。また今回の流行では、「理由は分からない」が、感染者には10歳代の学生が圧倒的に多かったと指摘し、学校閉鎖が流行の抑制に効果的だったとの認識を示した。 また茨木市のケースについて、「確定症例はいずれも軽症で、季節性インフルエンザと比べても症状に際立つものはなかった」と指摘。具体的な症状では、38度以上の発熱が82.8%、咳が81.0%など、「たいていの人が、発熱か急性呼吸器症状を訴えていた」とした=表=。今回の新型インフルエンザで注目されている下痢など「腹部の症状」については、「この学校の生徒に関しては10%前後。通常の季節性インフルエンザとあまり変わらない」と指摘。「米国では20%、30%を超えているが、これと比べると高くはないという印象がある」と述べた。
八尾市の事例についても、確定症例は「いずれも軽症」と指摘。「高校生間の確定症例とも共通する」特徴だったとした。
茨木市内の感染ルートについては、この中高一貫校が運行するスクールバスがいつも満員だったことや、クラス内で座席の近い生徒への感染拡大が見られることなどから、「スクールバスや教室の座席位置などによる濃厚接触を介した感染拡大が疑われる」と指摘。「すれ違っただけとか、学年が違うなど希薄な関係であるなどの場合は、なかなか感染するものではないという印象を持っている」とした。
また安井研究官は、「確定例が診断される以前から、インフルエンザ様症状で欠席している生徒が多数確認されている」と述べ、診断されていない患者が存在していた可能性があると指摘。「感染源」となった最初の事例については「分からない」と述べた。新型インフルエンザに感染していることに気付かないまま治ったケースも想定されるが、こうした人を訪問し、聞き取りをするのは難しいとした。ただ、「この地域でウイルスがまん延していて、クラスなど関係なく、どんどん外からウイルスが入ってきているという状況ではない」と強調。最初に感染者が校内に入り、そこから感染が広がったとの見方を示し、「いわゆる地域内の流行、まん延という形態ではなかったのだろう」と述べた。
更新:2009/05/26 21:43 キャリアブレイン
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