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きょうの社説 2009年5月26日
◎北朝鮮が核実験 国際社会の結束が試される
北朝鮮の地下核実験は、追加的な核実験をしないよう求めた国連安全保障理事会の決議
を無視した許されざる行動である。韓国の報道では、今回は短距離ミサイルも発射し、米軍偵察機などの情報収集活動を牽制する狙いが指摘されている。四月の長距離弾道ミサイル発射に続く国際社会への重大な挑戦であり、度重なる挑発、脅しに屈するわけにはいかない。北朝鮮は弾道ミサイル発射を非難する国連安保理の議長声明に反発し、謝罪と撤回に応 じなければ二度目の核実験を行うことを警告していた。弾道ミサイル発射から時間を置かず、核実験を行ったのは、国際社会の目を「核」へと向けさせる意図があるのは疑いない。「核保有国」としての立場を強調することで、制裁緩和と米国を交渉のテーブルにつかせ、譲歩を引き出す狙いだろう。 脅しのレベルを上げるような「瀬戸際外交」を続けていても北朝鮮の思い通りにはいか ず、むしろ不利になることを認識させる必要がある。そのためにも効果的な圧力が大事である。国連安保理が開く緊急会合は、今度こそ各国の結束が試される場となる。 弾道ミサイル発射を受けた国連安保理の対応は、決議採択に難色を示す中国、ロシアの 意向が働いて協議が難航し、結局、議長声明にとどまった。日本側が主張していた内容がほぼ盛り込まれたとはいえ、安保理の足並みの乱れが浮き彫りになった。中ロはその後、北朝鮮に対する制裁リスト拡大にも反対した。こうした対応に象徴される各国間の温度差が北朝鮮に見透かされてきた一面は否定できない。 安保理の協議では中国の対応が再び大きなかぎを握る。決定的な関係悪化を避けたいの が中国の北朝鮮政策だろうが、過度な遠慮は中国自身が国際社会の信頼を損ねることを認識する必要がある。 四月の弾道ミサイル発射と核再実験は一体的なものであり、北朝鮮の脅威は日本にとっ ては極めて深刻である。日米韓の連携をさらに強化し、中国を引き寄せる努力がいる。政府は新たな制裁決議採択を求める方針だが、日本の外交力が再び問われる局面でもある。
◎海外誘客協 三つ星同士で欧米を狙え
海外からの誘客拡大を目指して金沢と長野県松本、岐阜県高山、白川の四市村が設立し
た協議会には、アジアばかりではなく、欧米への情報発信についても積極的な取り組みを期待したい。歴史や文化が売りの四市村ががっちりと手を組めば、日本のよさが存分に味わえる魅力的な広域観光ルートがつくれるはずであり、欧米人の目を引き付けることも十分に可能だろう。四市村には、仏・ミシュランが先ごろ発行したガイドブックで高い評価を得た観光名所 を持っているという共通点がある。金沢では兼六園、松本では松本城、高山と白川では街並みや集落そのものが三つ星を獲得しており、その周辺には、二つ星や一つ星に格付けされたスポットも多い。 協議会の今年度の事業には、香港やタイからのメディア、旅行業者招聘(しょうへい) が盛り込まれた。「まず手近なアジア諸国から」という狙いが悪いとは思わないが、兼六園を訪れる欧米人旅行者数の近年の推移を見ても分かるように、「三つ星効果」は、特に欧米において絶大である。その強みを最大限に生かすことも考えてほしい。 協議会は、以前から連携してきた金沢、松本、高山の三市に白川村が加わる形で発足し た。三市を周遊するルートの途中に位置する白川村とも協力するのは自然な発想であり、今後は、同じく三つ星の観光地である五箇山を抱える南砺市への参加呼び掛けを検討してもよいだろう。城下町として栄えた歴史を持つ三市と、世界遺産という「勲章」も得ている合掌造り集落を組み合わせることで、観光ルートの厚みは格段にアップするに違いない。 欧米からの誘客を軌道に乗せるためには、ガイドブックの高評価に甘えず、それぞれの 魅力にさらに磨きをかける努力を重ねていくことも大切である。景観の維持向上や体験メニューの拡充、案内看板の改善などでは、互いに見習うべき点もあるだろう。協議会の枠組みを生かしてそうした施策についても緊密に情報交換し、大いに刺激し合って吸引力を高めていきたい。
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