NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」
〜奇跡のブナ林・攻防2000日    への質問状

日本自然保護協会のNHKへの質問状はこれです。プロジェクトXの問題点が今明らかに!


  当サイトにも多くの方から  NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」に感動した。偏った構成だなどの感想が寄せられました。
  NHK側も問題があったことを認められているようです。
  この番組には、明らかな間違いがあるのは事実です。多くの人々に影響を与える番組なだけに、誤りは誤りとして訂正する機会を作られることを切に願います。
  日本自然保護協会から、以下の質問状がNHKに送られました。この質問項目をご覧の上、当サイトで情報をご確認ください。
この件に関してのお問い合わせは、日本自然保護協会nacsj@or.jpへとのことです。
「東北自然ネット」では、プロジェクトXには、このような問題があると考えます。併せてご覧ください。

2001年7月26日
日本放送協会
   番組制作局長 殿
(財)日本自然保護協会
吉田正人(常務理事)
横山隆一(常務理事)
拝啓
2001年7月10日に放送された、「プロジェクトX 白神山地・マタギの森の総力戦」を拝見しました。
この番組に対しては、青秋林道・奥赤石川林道の停止・中止に尽力した地元団体から抗議の声が上がっているとの報道も先日ありましたが、白神山地のブナ原生林の保護、二つの林道問題の解決と森林生態系保護地域の設定、自然環境保全地域および世界自然遺産地域の指定などに直接関わってきた当協会としても、番組における事実関係の誤認、重要な事実の不適切な割愛を指摘せざるを得ません。また、その結果として白神山地の保護に関わってきた個人・団体に関して、きわめて偏った評価及び認識が社会的になされたことをたいへん遺憾に思います。
これまでの白神山地の保護活動の中では、諸処の事情から各活動団体・個人間の関係が悪化するということが多々ありましたが、これに対し、東北地方の自然保護団体が3年がかりの会合を通じて関係修復に努め、再度団体間の信頼関係を培いつつありました。しかしこの番組の放送のためにその努力は一瞬にして無に帰してしまいました。
この番組が、白神山地の保護活動に関して入念な取材による事実確認を怠り、事実とはかなり異なる因果関係や印象を全国に伝え、その結果として、白神山地の自然保護にかかわった個人・団体間の信頼関係も崩したことは、公共の電波を使用する放送局として許されないことと考えます。
ついては、下記の点について貴職の見解を伺うとともに、きちんとした取材に基づいて、白神山地の自然保護活動の実際の経緯を的確に伝え直す新たな方策を検討するとともに、この番組のビデオ販売については中止することをここに求めます。
敬具
 
1  白神山地のブナ林が、1970年代の東北地方のブナ林保護運動にはじまり、1985年・国際森林年の秋田でのブナシンポジウムを契機として、青森・秋田両県の自然保護団体のみならず、東北地方ならびに全国各地の自然保護団体の支持と協力によって、林野庁の自然林保護政策を転換した結果として保護されたという視点が全くみられないのはなぜか。
2  白神山地のブナ林が、当協会のブナ原生林保護基金によせられた寄付金や1987年の1300通を越す保安林解除への異議意見書などにみられるように、全国の一般の人々の協力と支持によっても保護されたという視点が全く見られないのはなぜか。
3  映像として出された、自然保護議員連盟幹事長の岩垂寿喜男元衆議院議員の林道視察は、当協会からの調査要請もあって林道計画の見直しを目的に行われたにもかかわらず、林道推進の国会議員が次々と林道を訪れたというようなナレーションになっているが、これはなぜか。
4  白神山地のブナ林への脅威は、青秋林道及び奥赤石川林道の2つの林道計画とその後の森林伐採であり、これらに反対する活動は、秋田・青森両県で独立して発足・発展した。最終的には青森県側の住民の保安林解除に対する異議意見書の数の多さが、北村青森県知事の林道中止判断に大きな影響を与えたという基本的事実に関する視点が無く、むしろ秋田県側の自然保護団体の発案や指示によって青森県側の自然保護団体が動いたかのように解説されたが、これはなぜか。
5  異議意見書に関する対処方針は、当協会が意見書提出の手続き等を調査し、秋田、青森両県の自然保護団体に伝えたものである。しかし番組では、秋田県側から青森県側に作戦が伝えられ行われたとされているが、これはなぜか。
6  当協会は、1990年に世界遺産条約の早期批准と白神山地の自然遺産登録を求める意見書を内閣総理大臣に送り、これが契機となって白神山地の自然遺産登録が実現した経緯があるが、これらを一切省略した理由は何か。
以上
 
〒102-0075東京都千代田区三番町5-24 山路三番町ビル3F(財)日本自然保護協会
TEL 03-3265-0523 FAX 03-3265-0527
 MP 090-7238-8381 吉田正人
横山隆一 yokoyama@nacsj.or.jp

合わせて、日本自然保護協会から以下の主旨の連絡がありました。

NHK番組制作局長あてに送付した上記質問状に対して、番組制作局社会情報番組担当部長が、日本自然保護協会を訪れた。

・NACS-Jから指摘された6つの事項については、NHKに誤りがあったことを認めた。
・秋田県側の役割を強調しようとするあまり、あまりにつごうよく語りすぎていた。
・鎌田さんの夫婦の物語に無理にこじつけず、取材してわかった経緯をそのまま編集するべきだった。
・本局(NHK)には当時の白神山地問題を知る人がいながら、事実関係をチェックできなかったことも反省しなければならないと認識している。
・運動にかかわったこられた方々から批判を浴びる事態になり、NHKとしては重大な問題と受け止めている。

・要望事項のうち、ビデオ、出版物については中止の方向で検討している。
また正しい事実の報道については、今年秋頃までには、事実にもとづいた全国放送の番組を作る計画であるので、もう一度チャンスを与えて欲しい。

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