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独断流:キャラクターの登場に違和感 /宮城

 仙台市で22日にあった「飲酒運転根絶県民大会」のワンシーンに疑問を感じている。多賀城市で05年5月、飲酒運転の車にはねられ、高校1年生3人が死亡、生徒ら15人が重軽傷を負った事故。この事故を機に飲酒運転を根絶しようとする大会の狙いには異論はないが、宮城県のおにぎりをイメージしたキャラクターの着ぐるみが、飲酒運転根絶宣言を読みあげる必要はあったのだろうか。

 県庁には、キャラクター登場について「飲酒運転の根絶という重要性を訴えるために成功した」との声もあるという。だが、尊い3人の命が奪われたことを悼み、再び起こしてはならないとの決意を新たに抱く日を、着ぐるみが登場するイベントのような雰囲気にしていいのだろうか。

 私がこだわるのは、宇都宮支局に勤務していた十数年前、入社直後の後輩記者を交通事故で亡くしたからだ。彼は5月の休日に、バイクで出掛け、その帰りに命を落とした。

 彼と一緒に仕事する時間があまりにも短かった。「仕事を早く覚えたいので、たくさんしかってください」と言った顔と、夜の支局でギターを弾いてくれたシーンが記憶に残っている。

 彼の供養になるとは思わないが、命日が近付くゴールデンウイーク前、1人で酒を飲み、彼を思い出し、何も教えられなかったことを悔やむ。彼を失った家族は、今でも深い悲しみを抱えている。

 人の死を悼むのに決まった方法はない。ただ、大切な人を失った遺族の傷は簡単に癒えない。そう考えたとき、キャラクターを使って演出する必要はあったのだろうか。大会でのわずかな時間だったが、私は違和感を捨てられない。【瀬尾忠義】

毎日新聞 2009年5月26日 地方版

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