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なぜすれ違う経済政策論議

2009年5月26日0時13分

 09年度の日本の経済成長率は先進国の中で最大の落ち込みになりそうだ。外需に成長を依存し、巨額の財政赤字を抱えている分、世界経済危機の打撃が大きく、対策が難しい。最大規模の補正予算もこのような切羽詰まった状況への対応策であるべきだが、国会論議はかみ合っていない。

 民主党は、117億円を投じる「メディア芸術総合センター(仮称)」を「国営マンガ喫茶」と称して、旧来の箱物、公共事業型が多く、むだな支出ばかりではないかと問う。対する麻生首相は、今年度だけでも20万人の雇用増、1.9%のGDP押し上げ効果があると胸を張る。完全にすれ違っている。

 何をもって、有効あるいは無駄と判断するのか基準がないからだ。ケインズは「砂漠に金を埋め、それを掘り出すことを繰り返しても有効需要を生む」と言った。政府の財政支出の中身が何であれ、それが需要と雇用を生むのは当たり前で、最大の浪費である戦争への支出でも有効需要を生む。雇用・経済効果があるというだけでは、無駄かどうかの判断にはならない。

 10年以上前、当時の自由党衆院議員、鈴木淑夫氏はこの点に明快な基準を与えていたことを思い出す。彼は「赤字国債の負担を負う将来世代の有用な財産となるものかどうか」で判断すべきだと言った。赤字国債による巨額の補正予算は将来の増税などの負担増とセットである以上、将来の財産かどうかこそ判断の基準になるべきである。

 だからこそグリーン・ニューディールのように地球温暖化を抑止するための施策への支出が優先するという考え方が正当性を持つのである。それでは「国営マンガ喫茶」などはどう見るべきか。(龍)

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