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【社説】

北朝鮮がまた核実験 国際社会への挑戦だ   

2009年5月26日

 北朝鮮がまた核実験を行った。先のミサイル発射に続いての暴挙だ。国際社会に挑戦するつもりか。失うものの方が大きいことを知らせるときだ。

 「自衛的核抑止力を強化するため、いま一度の地下核実験を成功裏に行った」

 北朝鮮は二十五日の核実験をただちに報道した。

 二〇〇六年十月以来二回目になる。先月の弾道ミサイル「テポドン2号」の発射実験に続いての軍事的な挑発だ。

 朝鮮半島の緊張を高め、北東アジアの平和と安定を損なう行為は、到底容認できない。

 国連で断固たる意思を

 前回、追加的な核実験をしないよう求めた国連安保理決議にも明らかに違反する。早速、国連安保理の緊急会合が開かれる予定だが、国際社会は断固とした意思を北朝鮮に示す必要がある。

 四月のプラハ演説で、オバマ米大統領は「核廃絶」への強い意欲を示し、ロシアとの戦略兵器削減交渉や、核拡散防止条約(NPT)体制強化による核不拡散への取り組みも始まった。

 今回の実験は、オバマ政権の模索に冷水をかけ、せっかくの国際的な意思を逆なでするものだ。

 なぜ、いま核実験なのか。

 直接の動機は、先のミサイル発射に厳しく対応した国際社会への反発だ。国連安保理の議長による非難声明に対して、北朝鮮は二回目の核実験やミサイル試射、核施設の再稼働などの対抗措置をとると警告、北朝鮮の核問題を扱う六カ国協議からの離脱も表明した。

 その背景には、対米関係が思うように進まない焦りがある。

 「わが国への敵視政策に変化がないことが明白になった」

 今月に入って、北朝鮮はオバマ政権への批判を始めた。大統領は選挙中「協調外交」を掲げ、北との対話にも積極的だった。

 米国の体制保証が悲願

 ところが、就任から百日を過ぎても、直接折衝に応じない。それだけでなく、国連安保理での対北非難の先頭に立った。

 金正日総書記にとって、最大の軍事的脅威である米国による体制保証が悲願なのにである。

 北朝鮮は、故金日成主席の生誕百周年である二〇一二年に「強盛大国」を実現して、大々的に祝う計画を立てている。

 軍事、思想、経済分野での大国という目標まであと三年。特に経済は破綻(はたん)寸前にあり、国民の不満・不平もたまっている。周辺国の支援なしに立て直しは不可能だが外交的孤立は深まるばかりだ。

 閉塞(へいそく)状態を打ち破る唯一のカードが「核」であり、国際的に「核保有国」として認知されることだ。そうすれば、米国とも対等に対話できると考えている。

 もうひとつ気になるのは、金総書記の健康状態だ。

 先月、北朝鮮のメディアは総書記の激しくやせた姿を公表した。狙いは不明だが、独裁体制に不可欠なカリスマ性を損なう恐れが大きい。それを補うため、内外に強硬姿勢を誇示したいのだろう。

 最近、「ポスト金正日」の情報が漏れてくる。後継体制の確立は独裁体制維持の絶対条件だが、残された時間は長くない。

 内政外交にわたるさまざまな焦りが浮き彫りになる。

 しかし、核実験は結果として逆効果と北朝鮮は認識すべきだ。

 対米関係にしても、米国が脅しに屈する形で対話に応じるはずもない。対北政策はむしろ厳しさを増すに違いない。

 周辺国をはじめ、国際的な非難を招くのは必至だ。国連安保理でもさらなる制裁などより厳しい措置がとられるはずだ。

 日本も、国連での制裁強化など「断固たる対応」に取り組み始めた。効果的な北朝鮮包囲網をつくるため外交努力をすべきだ。

 これから各国の協議、折衝が行われるだろうが、特に米国と中国には注文がある。

 米国のブッシュ前政権は、前回の核実験で急に対話路線に切り替え、「核放棄」の担保もないまま金融制裁やテロ支援国家指定の解除を行った。これが北朝鮮の揺さぶり戦術に勢いをつけた。

 中国の責任も大きい。北朝鮮の貿易の七割以上を中国が占め、食糧やエネルギーの依存度はさらに高い。生殺与奪を握っている。

 腰を据えた対応を

 従って、中国抜きの経済制裁は尻抜けになる。緩衝地帯としての北朝鮮が必要だとしても、大量破壊兵器の開発は、中国の安全保障や経済発展の大きな障害だ。

 北朝鮮は、これからも独裁体制強化や金総書記の威光を内外に示すため、核の脅威をさらに高める可能性が高い。

 周辺国は、北朝鮮の揺さぶりや瀬戸際戦術に乗せられないよう腰を据えて対応する覚悟がいる。

 

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