5回目となる日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議(太平洋・島サミット)が先週、北海道で開かれた。オーストラリア、ニュージーランドを含む南太平洋の14カ国、2地域の首脳らが一堂に会した。日本の外交政策上、普段は見過ごしがちな南太平洋の島しょ国との協力関係を強める貴重な機会となった。
島サミットは日本が主催し1997年から3年に一度開いている。
パプアニューギニア、パラオ、トンガ……。南太平洋に広がる12の国と2つの地域というと、青い海やサンゴ礁の美しい島を思い浮かべるが、近年は環境問題が深刻だ。
特に9つの環礁からなるツバルなどでは、海面上昇で水没の恐れが出ている。地球温暖化による気候変動の影響が大きいとされるが、経済基盤がぜい弱で、先進国の支援抜きには本格的な対策も講じられない。
サミットでは共同議長を務めた麻生太郎首相が「太平洋環境共同体」の構築を提唱し、首脳宣言に盛り込んだ。日本政府は今後3年間で総額500億円の支援も表明し、環境対策を軸に連携強化を打ち出した。時宜にかなった措置といえる。
日本は今後、海水の淡水化や太陽光発電などの環境技術協力、環境分野の人材育成を進めていく。南太平洋の島しょ国も責任をもって、環境対策に全力を挙げてほしい。
南太平洋の島国との友好関係は日本にとって極めて大切だ。日系人が多く、概して親日的なうえ、排他的経済水域が広大な地域は水産資源の宝庫でもある。日本にとってマグロやカツオの主要な供給地だ。
日本がオーストラリアから輸入する石炭や鉄鉱石、核燃料などの海上輸送ルートにもあたる。資源政策の面からも安定した関係を維持していく必要がある。
この地域では中国と台湾も同様のサミットを開くなど、影響力を競っている。太平洋の島しょ国は国際連合で各1票を有しているからだ。
今回のサミットに参加した国や地域のうち、オーストラリアとニュージーランドを除いても12票だ。国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本にとって、こうした親日的な国々をつなぎ留めていくための不断の努力が欠かせない。