なぜ問題を問われるような報道が止まらないのか
「映像最優先」と「善悪二元論」が視聴者をミスリードする本質的構造だ=草野厚
(SAPIO 2009年5月13日号掲載) 2009年5月18日(月)配信
だが、テレビジャーナリズムが胡座をかいていられる時代は終わりつつある。
去年の12月からNHKが「NHKオンデマンド」というサービスを始めた。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「NHK特集」といった報道番組、ドキュメンタリー番組を含む多くの番組を過去に遡って廉価で提供するというサービスだ。
もうひとつの大きな動きはユーチューブ、ニコニコ動画といったインターネットの動画サイト普及である。かなりの番組がネットユーザーによってアップされるようになったことで、一般視聴者が容易にテレビ番組を検証できるようになった。
かつて新聞記者出身の筑紫哲也氏は2ちゃんねるのような掲示板を「トイレの落書き」と批判したが、のちにネットユーザーの影響力は無視できないほど大きくなった。それと同様の事態が映像についても起こりつつある。だが、テレビ制作者にはまだまだ「たかが動画サイト」と甘い認識を抱いている人が多い。制作者がそんな意識でいる限り、テレビジャーナリズムの質の向上は難しい。
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