県や南信地方の市町村、南信森林管理署などでつくる南アルプス食害対策協議会(事務局・伊那市農林振興課)は本年度、ニホンジカの食害が深刻化する南ア仙丈ケ岳(3、033メートル)で、防護柵の設置や食害に関する調査など対策をさらに強化する。19日、信大農学部(南箕輪村)で開いた総会で決めた。
対策として、馬ノ背ヒュッテのお花畑近くに防護柵を設置。伊那市長谷の国有林で、シカの食害が希少種の昆虫類に及ぼす影響の調査にも新たに乗り出す。
大鹿村の向山牧場で捕獲した雌のニホンジカに衛星利用測位システム(GPS)発信器を取り付けて行動を追跡する調査は本年度、個体数を昨年度の1頭から4頭に増やす。防護柵内外で引き続き高山植物の植生を調査するほか、柵や囲いわなの改良も進めていく。
この日、食害対策を発表した信大農学部の竹田謙一准教授(37)は「効率の良い捕獲法や、長期間の調査で南アに適した個体数を把握し、個体数管理への道筋を見いだしたい」としている。
昨年度に引き続き財団法人自然保護助成基金(東京都)から210万円の助成を受ける。林野庁が本年度創設した「野生鳥獣との共存に向けた生息環境等整備モデル事業」で、南信森林管理署は予算700万円を協議会の活動に充てる。
【写真説明】本年度の事業計画をまとめた南アルプス食害対策協議会の総会