落ち込みが著しい日本経済に、かすかではあるが明るい兆しが出てきた。日銀が先週末に公表した景気の現状判断で、四月に示していた「大幅に悪化している」から「悪化を続けているが、輸出や生産は下げ止まりつつある」に上方修正した。
上方修正は二年十カ月ぶりである。景気回復に転じたというものではないが、悪化にブレーキがかかり始めたとの見方だ。政府も近くまとめる景気の基調判断を上方修正する方向で調整しているといわれる。
まだまだ厳しい状況であることに変わりはないが、「景気は気から」という側面もある。下げ止まり感が広がれば、企業経営者や消費者らの心理に好影響を与えるのではないか。潮目が変わることを期待したい。
日銀の白川方明総裁は「がけから落ちるような状態は過ぎ去った」と述べ、国内景気は最悪期を脱したとの認識を示した。一―三月期に戦後最悪となった実質国内総生産(GDP)成長率に関しては「四―六月期は大幅に改善する」と予測していることも明らかにした。
ただ、先行きは「在庫調整が終了した後の最終需要の強さがポイントになるが、不確実性が高い」と指摘した。本格回復に向かうかどうかは、不透明ということだろう。
経済へのマイナス材料として新たな要因も加わってきた。新型インフルエンザの国内感染拡大である。
この点について白川総裁は「全体として大きな影響は出ておらず、市場に不安が広がって相場の基調を変えるような動きもない」とした。だが、今後は「生産、消費にも影響が及ぶ可能性がある」と述べた。これも予断を許さない。
世界経済もばらつきはあるが、回復の予兆はうかがえる。マツダは宇品工場(広島市)の六月の操業計画で、当初予定していた二日間の休業日を撤回した。在庫調整が進んだほか、ドイツや英国など欧州で需要が増えているためという。
中国では政府の大型経済対策により、消費が上向いているとされる。地球温暖化対策として世界的に太陽光・風力発電への投資や、省エネ型の自動車、家電製品などへの切り替えが活発化している。
国内でも環境、医療、介護など将来性のある成長の芽はたくさんある。各企業は苦境をバネにして自社の業務を厳格に再点検し、戦略の見直しや技術開発、サービス向上などにつなげてもらいたい。
三月二十日から岡山市で開かれていた第二十六回全国都市緑化おかやまフェアが閉幕した。祭りが終わった後特有の一抹の寂しさを感じるが、花と緑があふれた会場を訪れた人は、華やかでさわやかな光景が脳裏に残っているだろう。
フェアは緑豊かなまちづくりを目指し、国の提唱で一九八三年に始まった。全国各地で開かれ、初開催の岡山では県と岡山市などが主催した。
西大寺地区にある工場跡地(約八ヘクタール)を主会場に、岡山城や後楽園などのサブ会場でも開かれた。主会場では企業や学校などが出展した庭園やガーデニング作品が目を引いた。延べ約六百種類、約五十万本の花や樹木も見事だった。
開幕前は認知度が高まらず、人出が不安視された。だが、開幕後は来場者による口コミや、春の行楽シーズンとも重なり、全会場で目標にしていた計八十万人の入場者数は、会期を九日間残した時点でクリアした。
何度も足を運ぶ人も目立ったという。フェアは内容、入場者数とも大筋で評価してよいのではないか。
今後、大切なのはフェアの遺産をどう生かすかである。一過性のイベントで終わらせては、開催意義が薄れよう。主会場の跡地利用として公園や商業系施設の整備が予定されているが、それにとどまらず都市緑化のすそ野を広げ、厚みをいかに増していくかが問われる。
花や緑は人の心を和ませる。同時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収する役割もある。岡山県は吉備高原や中国山地など自然には恵まれているが、岡山、倉敷、津山市など都市部の市街地に緑が少ないといわれる。公共空間や各家庭などで、フェアが残した芽を大切に、着実に育てていきたい。
(2009年5月25日掲載)