2009年5月26日1時26分
25日に2度目の核実験に踏み切った北朝鮮は、パキスタンやイラン、シリアといった国々の核開発でも、一定の役割を果たしてきた疑いが指摘されている。核不拡散条約(NPT)を揺るがしてきた国際的なネットワークの中で、北朝鮮の影が常にちらついてきた。米国などからは、核技術拡散への懸念の声が出ている。
パキスタンにとって悲願の核兵器の獲得を実現し、「核開発の父」と国民から英雄視されるのが、アブドル・カディール・カーン博士だった。博士は中東を舞台にした「核の闇市場」を主導したとも言われており、そこから北朝鮮とイランが核技術を入手したという指摘もある。
カーン博士は昨年、ウラン濃縮に使われる遠心分離器がパキスタンから00年に北朝鮮へ提供されたと証言した。当時、国軍の参謀総長だったムシャラフ前大統領は否定するが、博士は、遠心分離器は前大統領の「完全な同意」のもと、軍の監督下でパキスタン国内で北朝鮮機に運び込まれ、輸送されたと明かした。
パキスタンは北朝鮮から同国の中距離ミサイル「ノドン」の技術提供を受け、核実験直前の98年4月、中距離弾道ミサイル「ガウリ」の発射実験に成功した。このため、パキスタンと北朝鮮が、互いに持つ核とミサイル技術を交換した可能性も指摘されている。
パキスタンは98年以降、核実験を行っていないが、短、中距離ミサイルや新開発の巡航ミサイル「ラード」などによって核攻撃が十分可能な能力を持っているとされる。
核兵器が、パキスタン国内に浸透しているタリバーンなどイスラム過激派の手に落ちる可能性を懸念する声は消えない。一方、過激派掃討作戦のためにパキスタンへ提供されている米国からの資金援助が、核開発促進に流用されることを心配する見方もある。