2004.05.02付紙面より
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| 写真=インタビュー中、急に髪を後ろで束ねては、唇をツンと尖らせる、そんな場面がありました。どこか「おてんばさん」的な表情。清楚な美女がふと見せたちゃめっ気、そのコラボレーションに、チャーミングな印象がより強くなりました
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| (写真と文・鈴木豊) |
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福島の自然児が今芸能界を駆け巡る
自らを「根っからの体育会系」と言う。女優伊東美咲(26)。子供のころは故郷・福島で野山を駆け巡り、学生時代はソフトボール、バレーボールに打ち込んだ。現在も宴会ではタンバリンを持って、盛り上げ役を買って出る。お嬢さま然としたルックスと、“ヤンチャ”な性格のアンバランスさが、この人の1つの魅力なのだろう。
クヨクヨしない
アハハハハハ。豪快な笑い声とともに目の前に現れた。「どうも!」と一礼。テレビから伝わってくる、清楚(せいそ)なお嬢さまのイメージが早くも崩れた。実は宴会では盛り上げ役を一手に引き受ける姐御(あねご)肌だという。「飲み会ではお店の予約から、料理の注文まで率先してやってます。カラオケではタンバリン係。『モーニング娘。』もみんなで大合唱します」。
生まれ育った福島の実家の目の前には、海が広がる。すぐ裏には山もある。いつも野山を駆け回り、海水浴に缶蹴りと、ずっと外で遊んでいた。自然の中で育った。祖父、祖母、両親、姉、弟、妹。8人の大家族だ。
「基本は自然体。あまり悩まないタイプですね。まさに『寝たら忘れる』、あれです。小さいころからそうでした。自然とポジティブに考えてます。悩もうと思っても、最後は大丈夫だ〜にたどり着く。くよくよしていると、自分が疲れちゃう。毎日仕事もあるし、悩んでいる暇はないです。だから、大抵は家に帰るまでには(悩みは)全部なくなってます。本当にプラス思考。だからどんなに忙しくても、疲れにくい体質みたい」。
こちらの質問に、間髪入れずに答えが返ってくる。「根っからの体育会系」というのもうなずける。中学ではソフトボールに打ち込んだ。高校、短大ではバレーボールに熱中した。バレーボールを選んだ理由は、背が高いから。小学6年で160センチ以上あった身長は、今では171センチ。背が高いことにコンプレックスもあったのでは? 「景色いいですよ。要は気持ちの持ちようですよ」。ひと言で片付けてしまった。
保育士など3資格
幼稚園の先生を目指していた。夢をかなえるために大阪の短大に入学。保育士、幼稚園教諭、社会福祉主事の資格を取得しようと決意を固めた矢先に大阪・心斎橋でスカウトされた。
「興味がなかった芸能界も、大阪に住み出してから意識が変わったんです。福島には、芸能人やモデルは身近にいないですよ。でも、大阪にはモデルの友達もいたので、自然とおしゃれにも目覚めていきました。私は大阪でいろんな影響を受けました。人生で大きな転機でした」。
22歳でデビュー。そして13代目アサヒビールのイメージガールに選ばれる。野山を駆け巡っていたおてんば娘から180度違うモデルの世界に進む。忙しい中でも、学業は投げ出さなかった。
「初めのころはオーディションで大阪と東京を何度も行ったり来たり。しかも卒業間近だったので、単位がギリギリで毎日リポート漬けでした。幼稚園の実習にも行きました。とにかく大変だったんですよ。も〜っと思いながら…。でも途中であきらめることだけは避けたかった」。
結局、保育士など3つの資格は取得した。使うことはなさそうだが「自分が子育ての時に役立つしね」と笑う。
デビューから5年。今ではチョーヤ梅酒「さらりとした梅酒」日清食品「Spa王」など9本のCMに出演。映画「海猫」(今秋公開)「…about love」(来年公開)にドラマと引っ張りダコだ。
「今ではすっかり(女優に)はまっちゃって! この仕事に巡り合えて、幸せです。でも女優って、すぐに答えが出ない。まだ自分も答えは見つからないです。これでいいのかな? って思うこともよくあるし。だからこそ、もっともっといろんなことに挑戦して、自分を探したいんです。そう思うと、自然とパワーがあふれてくるんですよ。全力でいられる自分がいるんです」。
山口智子が憧れ
デビューを決意させたもう1つのきっかけは、女優山口智子の存在。山口は初代アサヒビールのイメージガールを務めた。大好きな山口と「何か縁があるはず」と、イメージガールのオーディションに臨んだ。現在の所属事務所も山口と同じだ。
「山口さんに初めてお会いしたときは、すっぴんの美しさに衝撃を受けました。お化粧したら誰でもきれいになれるけど、すっぴんであれだけ、きれいな人はそんなにいないはず。内面の充実度が外見に出てるんでしょうね。私も最近は暇さえあれば活字を読んだり、音楽聴いたりして自己育成中です」。
現在、出演中のフジテレビ系「愛し君へ」(月曜午後9時)で、未婚の母亜衣役に挑んでいる。シングルマザーの友達がいるためか、全く抵抗なく演じているという。
「亜衣は世間を気にせずに開き直って、どんどん表に出てくる女性。私もそんなタイプ。オープンだし、今の自分を大切にしている。あこがれの女性像はそのとき、そのときを一生懸命生きられる人。とくに○○さんみたいになりたいとかじゃない。女優の前に、人間としてすてきでいたい」。
もちろん、悩むこともある。「そんなときは、自分で楽しいことを見つけるんです。無理しないで楽しめること。スポーツクラブに行ってサウナだけ入ってきて帰ってくることもあります。話を聞いてくれる人に相談することもあるし、学生の妹とご飯食べに行ったり。最近は料理するようになりました。料理教室に通おうかと思ったけど、意外に上手なんですよ。得意料理は、おからのハンバーグ。最近は女らしく、ね。アハハハハ」。
笑い声は、最後まで豪快だった。
<マイベスト1>
なんといっても和ですね。今年に入って、着付けとお茶を習い始めました。きっかけは仕事です。着物を着るシーンがあって、身が引き締まるだけじゃなくてスッキリするんですよ、本当に。なんだか気持ちの切り替えっていうか、すごく集中できる。お茶は、まだまだ作法の段階。先生に「一生かけてやりましょうね」って言われました。仕事も忘れて、心を無にして臨むので心のマッサージになります。今度引っ越すときは、畳の部屋が必ず要ります。そのうち、茶道の道具も整えなきゃ。
◆フジテレビ系「愛し君へ」◆ 失明していくカメラマン(藤木直人)と新米医師(菅野美穂)の切ないラブストーリー。伊東のほかに玉木宏、八千草薫らが出演。さだまさしの小説「解夏」が原作。月曜午後9時放送。
◆伊東美咲(いとう・みさき)◆ 本名・安斉智子。1977年(昭和52年)5月26日、福島生まれ。短大時代の98年、スカウトされたのがきっかけでモデル活動を始める。99年、13代目アサヒビールのイメージガールに選ばれる。その後、「CanCam」の専属モデルとして活躍。00年フジテレビ系ドラマ「らぶ・ちゃっと」でドラマデビューし「新・お水の花道」「東京ラブ・シネマ」(フジ系)「ごくせん」(日テレ系)と次々にドラマに出演する。02年には「模倣犯」で映画デビュー。171センチ。血液型A。
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