淀長フォーエバー

早いもので、淀川長治さんが亡くなって、もう2年ちかくになります。
日曜の夜、淀長さんの「日曜洋画劇場」を見るのを楽しみとしていた僕としては、ほんとうに寂しいかぎりです。今でも「日曜洋画劇場」は見ていますが、ときどき、「淀長さんが生きていたらどういう解説をしただろうか」とか、「淀長さんの解説があればこの映画も、もう少しおもしろくなっただろうに」などと思うこともあります。古いビデオを整理していて淀長さんの解説を発見すると、ついつい見入ってしまったりします。そして何とも言えぬ暖かい気持ちに浸ってしまうのです。

このコーナーはそんな淀長さんの名解説を誌上再現しようという試みです。
僕の好きな映画をセレクトしてお送りします。だから僕のおすすめ映画紹介のコーナーでもあります。
文字にして読むと、ますます淀長解説の奥の深さに気づかされると思います。
ぜひ声に出して、淀長風に朗読することをおすすめします。

 

第1回作品 ゼイリブ (1990年3月25日放送)

はい、みなさん、こんばんは。今夜は「ゼイリブ」。彼らは生きている、というんですね。何でしょうね。この映画、はじめてなんです、テレビでは。だからみなさん、この作品、はじめてご覧になるんですね、テレビで。この映画「ゼイリブ」とは何でしょう、彼らは生きている。原作は「朝8時」という有名な短編です。けど、活字で見るより映画の方がずっと効果が出ていますよ。というのは、あるきっかけで、ある人が何かを見たら、相手の正体がはっきりわかった。その正体がどんなものか・・・それはここでは言えません。御覧なさい、コワイですよ。私子供の頃、相手が狐だろうか、狸だろうか、そんなこと思ったことあるんですね、子供の頃。もしもそれがはっきりわかったら、どんなに面白いだろう、どんなに怖いだろうと思ったことあるんですね。それを今日はもっともっとショックにしたホラー映画ですね。ホラーというよりもっと怖いですね。監督はジョン・カーペンター。ジョン・カーペンターといいますと「ザ・フォッグ」ありましたね、「ハロウィン」ありましたね、怖い監督ですね。しかもこの監督は自分で音楽も入れてますから、音楽効果が非常にいいんですね。それで主演が・・・・ロディ・パイパーなんです。ロディ・パイパーといいますとね、何かレスリングの有名な有名な人気レスラーなんですね。だからこの映画、最後の方では、いかにもこのレスラーのアクションですね。これが見事に延延に出てきて、またその点でも人気ありました。で、この映画、1988(いっせんきゅうひゃくはちじゅうはち)年度の映画ですけど、アメリカでこの年一番当たった映画なんですって。これが一番入りがよかったんです。どこがよかったか、さあそれは今日ご覧になったらきっとわかるでしょう。何とも知れん興味というたらいいか、恐怖というたらいいか、何とも知れん、みなさんにショックを与えるものがありますから、ああこれが当たったんだなあ、ということがおわかりになると思います。さあみなさん、じっくりご覧なさい、後でまた会いましょうね。

はい、この映画の監督は、この映画の音楽を作曲してますね。これは珍しいですね。監督が音楽を作曲する、これは珍しい。考えたら、チャップリンがそうでしたね。なるほど、チャップリンが音楽入れてるとひじょうに場面が効果ありますね。この映画もこの監督が自分の作品に音楽入れてるから、ひじょうに効果がありました。それからこの映画、キャメラ、キャメラがやっぱり効きますね。あの文学の文字、表紙の文字、目で見る映画ですから、あのキャメラ、キャメラによってあのメガネを見たとき、メガネから外を見たときに、モノクロになりますね。そして文字が変わりますね、看板。あのあたりが異様に怖いでしたね。さあ、このキャメラマン。「スタンド・バイ・ミー」それからまだ「ロマンシング・ストーン」、あのキャメラマンですね。だからなかなか効果ありましたね。上手いはずですね。それからもっと、実は、この映画の一番の怖いのは、あの顔ですね。あの顔、あの顔見たら晩寝られないくらいの怖い顔ですね。なんか骸骨、焼けた人間の顔みたいなかんじでしたね。あのメイキャップやった人が見事ですね。あのメイキャップやった人が、「ビートルジュース」それから「13日の金曜日」それから「キャットピープル」のメイキャップマンですね。だから怖かった。だからこの映画ご覧になったら、晩にあの顔が出てきますよ。みなさん、晩寝てると、というくらいに怖い顔でしたね。これが当たったんですね。けれどもこの映画の、一番の、もっと怖いこと、本当の怖いことは、社会風刺ですね。目に見えない怖さ、目に見えない怖さを私たちはもっと警戒せないけませんね。

はい、もう時間きました。では次週の作品ご紹介いたしましょう。

はい、このように続々と注目の作品が出てまいりますよ。どうかご期待ください。

それでは、サヨナラ、サヨナラ、サ・ヨ・ナ・ラ。

 

(2000年8月6日) 

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