これは自慢タラタラだが、明白な嘘だ。仮に嘘でないとしたら、休校措置を継続しなくてはならない。
──
大阪府は、休校期間が終わった。( → 前項 )
これにともなって、大阪府は、「休校措置によって感染者数の増加を食い止めた」と自慢した。
橋下知事が行った「都市機能回復宣言」。記者会見では、中学・高校の府内一斉休校などで感染拡大を封じ込めた成果をアピールするとともに、「今後も感染者が出ることは承知の上。適切な対応を取っていく」と、対策を続ける姿勢を示した。また、厚労省も、同様に自慢した。
( → 読売新聞 2009-05-24 )
厚生労働省は23日、国内の新型インフルエンザ感染の日々の確定者数が20日の77人をピークに減少傾向にあると発表した。厚労省は「感染確定は発症から数日後になるケースもあり、正確に感染の広がりの推移を見るには発症者数の変化を見なければならないが、減少傾向を読み取ることはできる。休校措置の効果が出たのでは」と話している。──
( → 毎日新聞 2009-05-24 )
大阪府にせよ、厚労省にせよ、感染者数の減少を「一斉休校のせいだ」と述べて、しきりに自慢している。
しかし、それが真実であれば、「一斉休校をやめれば、ふたたび感染者数は増加する」となるはずだ。論理的に、そうなる。
とすれば、そのように主張しながら、一斉休校を解除することは、自己矛盾だ。頭が脳炎になっている。(高熱に浮かされているんだろうか?)
まともに論理を組み立てるのであれば、次の二者択一だ。
・ 一斉休校の効果はある → ゆえに、一斉休校を続ける
・ 一斉休校の効果はない → ゆえに、一斉休校をやめる
この二者択一だ。
なのに、現実には、次のようにしている。
・ 一斉休校の効果はある → しかし、一斉休校をやめる
これはもう、頭が錯乱しているとしか、思えない。
繰り返す。大阪府と厚労省の言っていることは、明白な嘘だ。仮に嘘でないとしたら、休校措置を継続しなくてはならない。
──
では、真相は? 論理矛盾を避けるとしたら、二つのうちで、どちらを取ればいいか? こうだ。
・ 一斉休校の効果はない → ゆえに、一斉休校をやめる
詳しく言えば、こうだ。
「一斉休校の効果はない。一斉休校をしても、実際には、感染者はいくらか増えた。ただし、季節の温暖化のせいで、感染者の急増は避けられており、(小さな)流行はしだいに収束しつつある」
つまり、感染者の増加が収まっているのは、季節の温暖化のせいであって、一斉休校のせいではないのだ。なのに、自分の手柄を上げたがっている権力者連中が、「これはおれの成果だ」と述べて、人々をだまそうとしているのだ。
──
結局、連中は、今回の事例から、何も教訓を学んでいないことになる。こういう阿呆の愚かさは、将来的に、何をもたらすか? 予想すれば、次のようになりそうだ。
「今秋以降、豚インフルエンザは、ふたたび流行する。そのとき、感染者数は、毎週毎週、急増していく。初めは数十人だったのが、
数百人 → 数千人 → 数万人 → 数十万人 → 数百万人
というふうに、ウナギ登りで急増していく。それにともなって、日本中で、あらゆる学校が休校措置になる。そのせいで、以後毎年、冬季には教育を受けられなくなる」
これはもはやパニックだ。そういうパニックを起こすのが、今回の大阪府と厚労相の立場だ。
──
実を言うと、感染者が
数百人 → 数千人 → 数万人 → 数十万人 → 数百万人
というような増加をしても、何も驚くことはない。これは、通常の季節性インフルエンザでは、当たり前のことだからだ。
そもそも、このような感染者数は、「死者数」ではない。仮にこれが「死者数」ならば、ペストも同然だから、一斉休校は妥当だろう。それどころか、戒厳令を発して、国民の全活動(というか移動)を、ほぼ停止するべきだろう。
しかし、感染者数は、死者数ではない。インフルエンザの感染者数がどんなに増えようと、それはただの当り前のことであって、大騒ぎするようなことではない。
したがって、上記のように感染者数が急増しても、「一斉休校」などは必要なく、「ああ、そうか、ふーん」と思っているだけでいいのだ。
実際、海外ではそういう方針を取っている。
「欠席者数の急増している学校や学級だけが閉鎖をすればよく、地域規模の一斉休校は必要ない」( → NY 前出リンク )
と。つまり、季節性インフルエンザに対する方針と同じ。
──
結論。
今回、大阪府と厚労相は、おのれを自慢をするために、事実を偽っている。というか、事実を誤認している。日本感染症学会の話をまったく理解していないで、「一斉休校が有効だ」と信じている。
のみならず、この嘘を、世間にバラまいている。おのれの嘘をウイルスのように社会に伝染させている。このようにして嘘が社会に伝染すると、社会は嘘の感染症に冒され、正常性を失う。
今秋以降、感染者数が急増したとき、「一斉休校が有効だ」というデタラメに基づいて、ふたたび「一斉休校を実施」という方針が取られるだろう。そのせいで、世界中で日本だけは、「ありふれたインフルエンザのせいで、生徒は学習権を奪われる」という馬鹿げた状況となる。
このような白痴的な政策は、もはや、途上国の土人の発想と同じだ。科学的な根拠に基づくのではなく、「これこれのまじないをすると病気が治ります」という方針を取る。
呪術師の霊感による政策も同然。これはもはや医学や科学とは無関係の政策だ。そして、大阪府と厚労相がやっているのは、そういうことなのだ。
( ※ まったく、先の「日本感染症学会」の緊急提言を読んでほしいものだ。)
[ 付記1 ]
とはいえ、厚労相という呪術師の言うことなんか、誰も信じないだろう。しかるに、橋下という呪術師の言うことは、多くの人々が信じるだろう。困ったことだ。
橋下は、政治家としては優れているのだが、医学的な知識は皆無に等しい。はっきり言って、間違いだらけの医学知識だ。
なのに、医学知識ゼロの人間が、「一斉休校は有効だった」と自慢して、自分の医学知識を誇っている。
ここでは、彼の政治的な力が、間違った方向に使われている。彼が政治的に優秀であればあるほど、その力が医学的に間違った方向に使われたときには、有害だ。
[ 付記2 ]
そもそもリーダーというものは、自分一人で決めるべきではない。そんなことをすれば、独裁者になってしまう。最終的には、破滅する。
リーダーというものは、仕事をそれぞれの部下にきちんと分担させることが大切だ。医学問題ならば、医学担当の部下に委ねる。その部下は、医学知識を持っている必要がある。
なのに、橋下も舛添も、医学知識がないまま、自分の判断で決めようとする。トップが独断専行で突っ走る。これはもはや、独裁と同じだ。こういうことは、リーダーとして、絶対にやってはいけないことだ。
読者は、各人が自分でも職場などでリーダーの立場になることもあるだろう。そのとき、数人の班でなら、あなたがリーダーとしてすべてを決定してもいい。しかし、数十人以上の大きな団体になれば、一人のリーダーがすべてを決定してはならない。リーダーは必ず、仕事を何人かのサブリーダーに委ねる必要がある。リーダーはサブリーダーを統率するのが仕事であり、リーダーが末端の仕事に口出ししてはならない。
これが経営のイロハだ。橋下も舛添も、経営のイロハを全然理解してない。
( ※ 今回に即して言えば、リーダーは、感染症学会の声を聞くか、日本疾病対策センターに委ねるか、どちらかにするべきだった。)
[ 付記3 ]
橋下知事は人の話を聞こうとしない。では、どうすればいいか? 聞こうとしなければ、無理やり聞かせればいい。すなわち、こうだ。
「府民が『一斉休校に反対』という署名運動をする」
大阪府が「一斉休校は効果的」という方針を取るならば、今秋以降、大阪府の学校はふたたび一斉休校を実施するだろう。どこかの学校で感染者が出たら、(たとえ自分の学校では感染者が出なくても)1400校がいっせいに休校するだろう。しかもそれは、感染者が減らない限り続くから、冬の間はずっと休校が続くことになる。その結果、大阪府の生徒の学力は大幅に低下するだろう。
その一方で、他の都道府県では「一斉休校」という馬鹿げた措置を取らないから、他の都道府県では学力は低下しない。結果的に、大阪府の生徒だけが、大学進学率が大幅に低下するだろう。
このような馬鹿げた被害を避けるには、「一斉休校は効果的」という方針を取り下げさせるしかない。しかし橋下は、自分では修正しない。とすれば、府民が署名運動をして、橋下の方針を撤回させるしかない。
そして、府民がそういう署名運動をしないのであれば、大阪府の生徒だけが、大学進学率が大幅に低下するだろう。
( ※ 他の都道府県の生徒としては、「その方がありがたい」と思うかもね。大阪も神戸も一斉休校になれば、灘高も甲陽学院も休校だ。関東のライバルは「いい気味」と思って喜ぶかも。 ← 冗談です。 (^^); )
( ※ ところで、橋下府知事は、誰のために働いているんだろう??? )
ついでに、橋下府知事に、こう言っておこう。
「生徒には、教育を受ける権利がある。その権利は、パニクった権力者の独裁的な横暴によって侵害されてはならない。あんたが弁護士ならば、その法的権利を守れ」
と。
※ 以下は読まなくてよい。
[ 補足1 ]
一斉休校の効果を科学的に検証する方法もある。たとえば、次のことだ。
「一斉休校の終了後、感染者数の増減の推移を調べる」
一斉休校の終了後に、感染者数の急増が見られれば、まさしく「一斉休校は効果があった」と証明されることになる。しかし、その場合、「一斉休校の解除」という方針が間違っていたことも証明される。どっちみち、批判されるだろう。
一斉休校の終了後に、感染者数の急増が見られなければ、「一斉休校は効果があった」と証明されるかもしれない。ただし、ここでは、「季節の温暖化」も影響するから、きちんと証明されるわけではない。
[ 補足2 ]
一斉休校の効果は現実にあった、という報道もある。
大阪府の新型インフルエンザの1日あたりの発症者数が、17日の約30人をピークに急速に減少していることが23日、府対策本部のまとめで分かった。多くを占める大阪府茨木市の関西大倉高の発症者が大きく減少したのが最大の要因。ここでは統計のインチキがある。おわかりだろうか?
府は22日までの感染者計138人について、いつ発熱やせきなどの症状が出たかを調査。発症者数がどのように推移しているか分析した。
その結果、10−12日に1人しかいなかった発症者が、13日に8人に増加。15日に20人を超え、17日には29人に達した。ところが19日には9人に急減。21日には2人しか発症しなかった。
138人のうち100人が高校生で、平均年齢は17歳。
( → 西日本新聞 )
「138人のうち100人が高校生」
というのが統計数値なのだから、感染者全体のうち、表に出たのは高校生ばかりなのだ。それ以外の感染者は、裏にひそんでいるのだ。
そして、高校生ばかりをカウントするという状況で、高校を休校にすれば感染者が減少するのは、当然だ。その一方、高校生以外の大人の感染者は水面下で拡大しているが、それはカウントされないから、数値の増加は見られない。つまり、
「目に見えるものについてだけ、数を減らす」
という方針で、数の減少を見出して、喜んでいるわけだ。
このことから、次のことが予想される。
「高校生の感染者を数えるという方針のもとで、一斉休校を解除すれば、ふたたび高校生の感染者が増える。それを見て、大阪府や政府は右往左往する」
馬鹿の上塗り。パニック騒動はしばらく続くだろう、というのが、私の予想だ。
なお、どちらかというと、次の情報の方が役立つ。
「染者の6割を占める神戸市では、市環境保健研究所が1日に数10―100件超の詳細(PCR)検査を続けているが、新型陽性となる検体の比率は当初の数10%から数%に下がった。」
( → スポーツ報知 )
これはこれで、役立つ情報だ。「数10」という変な表記をする記者の識字力は別にして。 (^^);
つまり、生徒はこの一週間、中間試験のための試験勉強をしていたことになる。ひーひー言っていたかもね。私も高校時代には、中間試験の前には、さんざん勉強していた。試験直前は、たとえ休みでも、休むわけには行かない。
とすると、今回の1週間の休校は、実害がなかったようだ。ついていましたね。
しかし、秋には、そうは行かないぞ。同じ方針が取られたら、休校によって確実に被害を受けるだろう。下手をすれば一年間の浪人だ。
かっこよすぎる。
として、結構ネットでは話題になってますね。
自分の大学が誇る専門家で協議して、
判断した結果は、ほぼ管理人さんの主張と同じ、
のようです。
http://d.hatena.ne.jp/nitoyon/20090523/h1n1_flu_kyoto_u
> 10日前にいってたらかっこよかったけど、たいしたもんじゃないことがわかった今になっていわれてもな
という感想を言った人がいましたね。 (^^);
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/nitoyon/20090523/h1n1_flu_kyoto_u
感染症学会が語ったのが21日ですから22日の京大は、その受け売りかもしれないんですよね。 (^^);
ここのトップは、専門家のいう事を聞いて、
その方針に従うことをよしとしたんでしょう。
世間体その他くだらん政治的判断より。