感染者には若者が多いことは、前々項のことで説明されるが、大学生や中学生でなく高校生ばかりになることは、それでは説明されない。
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前項では、「若者には罹患の経験がなく、免疫がない」と述べた。このことから、
「若者の感染者が多い( or 重症化しがちだ)」
という結論が得られる。
しかし、それならば、主語は「若者」になるはずだ。ところが現実には、主語は「高校生」になってしまっている。日本でも米国でも、感染者はやたらと高校生が多い。重篤化はしないのだが、発見される感染者は高校生が多い。それはなぜか?
この問題は、やはり、先に述べたことで説明されるだろう。再掲しよう。
感染者は高校生に集中しているようだ。では、その理由は?これならば、説明が付く。ここでは、「大人は(感染していても)申告しない」と記しているが、大人だけでなく、小学・中学・大学のいずれの生徒もそうだ。しかるに、高校生だけは、申告する。
一つは、感染しているのは本当に高校生だけだ、ということ。その場合は、過去の免疫が影響しているのかもしれない。
もう一つは、大人は(感染していても)申告しない、ということだ。これはかなりありえそうだ。足止めを食いたくないから、知らんぷりをして、検疫をすり抜ける。そのあと、自宅で治す。治しながら、ウイルスをまき散らす。……その後、ウィルスは世間に蔓延するが、そのころには、自分は治りきっているので、知らんぷり。(……これは大いにありえそうだ。仕事を休むわけには行かないから。)
どうして? 高校だけがそういう方針を取るからだ。今回の感染者(高校生)1名も、次の経路を取った。
・ 発熱する。高熱になる。
・ 病院で検査を受けてA型と判明する。
・ リレンザを処方される。
・ 高校からの勧告で、保健所に行き、検査を受ける。
・ リレンザの効果で解熱。治りかける。
・ 保健所の検査の結果が判明。「新型インフルエンザです」
・ 「隔離します」という通知が来て、隔離される。
・ ホテルでカンヅメ。暇で暇で苦しくなる。 (^^);
( → 朝日・朝刊・特集 2009-05-23 )
ここで、次の点(着色部)に注意。
「高校からの勧告で、保健所に行き、検査を受ける。」
ここでは、「高校からの勧告」があった。そのせいで、保健所で検査を受けて、豚インフルエンザへの感染が判明した。
逆に言えば、「高校からの勧告」がなければ、保健所で検査を受けることもなかったろうし、感染が発覚することもなかったはずだ。
では、高校以外では?
・ 小学生は自力で保健所に行けない。小学生は勧告されない。
・ 中学生もほぼ同様。
・ 大学生は、大学からいちいち管理・指導されない。
つまり、「保健所へ行け」と言われるのは、高校生だけに限られている。だから、高校生以外では、感染者は発見されにくいのだ。例外としては、次のものだろう。
・ 自発的に保健所に行く大人。(仕事を持たない暇人。)
・ 幼児の感染が心配な親。
このような場合にも、感染者は発見されるだろう。それが現実の数字となって現れる。(現時点で3百余名。)
一方、大多数の人々は、感染しても保健所には行かない。
・ 仕事を持つ大人 (仕事を休めない)
・ 家庭の妻 (外で感染しにくい。感染しても夫を守る。)
妻もそうだが、一般に、感染者は自分だけでなく、自分の家族をも守る。自分が感染者として隔離されれば、家族もまた感染者として隔離される。それでは仕事にならない。下手をすれば、会社をクビだ。それを覚悟で、誰が十日間も隔離されたがるものか。
ここでは、先に述べた危険が現実化している。
「強制的な隔離が実行されている。だが、これには弊害もある。「十日間も隔離されるのならば、申告をやめたい」と思う人が出るだろう、ということだ。」( → 強制的な隔離の弊害 )
つまり、現在の感染者は、「氷山の一角」にすぎない。そして、表に出た(水面上に出た)部分が、「高校生の感染者」なのだ。
一方、表に出ない(水面下に隠れた)部分は、他にいっぱいあるわけだ。
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以上は、私がこれまで述べたこととを整理した説明だ。特に新たなことは何も述べていない。ただ、話としては、わかりやすいだろう。
[ 付記1 ]
ネット上でも、同じようなことを考えている人がいる。引用しよう。
新型インフルエンザは、学校でしか発生しないのだ。感染が広がっている大阪・神戸でも感染者は高校生とその家族に限られている。[ 付記2 ]
この説にはいろいろ突っ込みたいだろうが、次のフレーズなら苦笑しながら納得してくれると思う。
「新型インフルエンザの発生は、ウィルスのDNAが鑑定できる国や地域に限られている。」
風邪と区別がつきにくいので、学校の集団感染ででもないとわざわざDNAまで見ないんだろう。というわけで学校でしか発生しない、と。
これが日本だけなら私の思い過ごしだが、ニューヨークでも高校で大発生! ということは世界的に高校でしか発生しないのか?
( → 高校かぜを笑い飛ばす )
本項のことから、将来の想像もつく。「冬季における流行」だ。
これは、政府の新対策(緩和) の最後でも述べたとおり。つまり、「制圧宣言」などは無理で、単に「収束宣言」が出せるだけだ。豚インフルエンザのウイルスは、消滅したわけではなく、温暖な季節のなかで、息をひそめて潜伏しているだけだ。そして、季節が寒冷化すると、息を吹き返し、ふたたび流行する。
ただし、そのときも、数百万人のインフルエンザ患者に対して、いちいち遺伝子検査をするわけではないから、豚インフルエンザと季節性インフルエンザの区別はしがたいだろう。
ただし、推測する方法はある。サンプル調査だ。適当にサンプルを取って、遺伝子検査をして、「豚インフルエンザと季節性インフルエンザの比率」を知る。この比率を知ったあとで、インフルエンザの患者の総数を推定する。両方を掛け算すれば、豚インフルエンザの患者総数も推定できる。
とはいえ、国民にとっては、豚インフルエンザが流行しようが、季節性インフルエンザが流行しようが、大差あるまい。差があるとすれば、政府とマスコミが大騒ぎするかどうか、というパニックの有無だけだろう。
[ 付記3 ]
流行が起こるには、冬季を待つまでもないかもしれない。南半球では、もう冬だ。あと1〜2カ月もすれば、南半球でも流行が起こるだろう。
とはいえ、オーストラリアの人口は少ないし、アフリカは貧しい国ばかりだ。「豚インフルエンザです」と判明した感染者の総数は、あまり多くあるまい。「ひそかに潜伏しながら、南半球で流行」というふうになるのだろう。
そして、それが、冬になれば北半球にももたらされる。
しょせん、インフルエンザのウイルスを根絶することなど、できないのだ。
[ 補足 ]
ただし、現在開発中の新薬(T−705)ができると、インフルエンザのウイルスを根絶することが可能かも。
この新薬は、作動機序がまったく異なっており、耐性ウイルスの出現が起こりにくい機序をもつということだ。
とすれば、この新薬が普及すると、耐性の問題を解決して、インフルエンザのウイルスを根絶することが可能になるかも。遠い将来には。
とはいえ、それには時間がかかるから、そのころには、私もあなたも死んでいる。インフルエンザのせいでなく、寿命のせいで。 (^^);
( ※ 天然痘のワクチンができてから、天然痘が根絶されるまでには、かなり長い時間がかかった。インフルエンザのウイルスを根絶するには、可能だとしても、そのくらいの時間がかかるかも。……ま、完全根絶は無理でも、流行をストップすることができるぐらいなら、かろうじて寿命に間に合うかも。そうなると、いいですね。)
【 追記 】
すぐ上の「可能になるかも」という記述に対して、半畳を入れた人がいる。「豚や鳥にもいっせい投与するつもり?」と。それについて解説しておく。
( ※ 下らない話なので、いちいち読む必要はありません。)
つまらん。こんな揚げ足取りみたいなことしか言えないのか? 本気で言っているとは思えないし、ジョークのつもりかもしれないが、一応、まともに答えておこう。
「豚や鳥にもいっせい投与する」必要はない。人間と豚だけで十分。それでH1型を根絶すれば、それで十分。
鳥インフルエンザは、それ単独では、人間にはほとんど感染しない。 ( → Wikipedia トリインフルエンザ「いまのところ、一般の人に感染する危険性はきわめて低い」)
鳥インフルエンザが危険なのは、鳥インフルエンザとヒトインフルエンザの双方に感染する豚の体内で、ヒトインフルエンザに鳥インフルエンザが混じる可能性があるからだ。ヒトインフルエンザがなくなれば、鳥インフルエンザだけがあっても、問題はほとんどない。(毒はあっても、毒の媒体が消えるから。)
それでも、鳥インフルエンザが人間に感染する可能性は、ゼロではない。が、だとしても、そんな例外みたいなことばかりを考えても、ちっとも面白くない。くだらない揚げ足取りほど、みっともないことはないのだが。
ともあれ、話の本論とは関係のないところで、余談の余談みたいな言葉のほんの端っぱをとらえても、意味がないんですけどね。
ここまで下らない話を読んだ人は、お疲れ様。