前のエントリでは韓国の盧武鉉前大統領の自殺について書きましたが、盧氏といえば、何と言っても北朝鮮のシンパというか、北朝鮮とほとんど一体化した大統領として知られていましたね。その盧氏という、貴重な同志だか操り人形だかを失った北朝鮮がどんな反応を示しているのか、私の手元にはまだ情報はありません。
ただ北朝鮮絡みということで、今月20日付の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞が安倍元首相に関して書いた論評「歴史に挑戦する軍国主義的妄動」を紹介しようと思い立ちました(訳文はラヂオプレスによります)。事実関係はともかく、その激しい悪口雑言からは、かえって北朝鮮が何を嫌がり、警戒しているかがよく分かるようにも感じました。太字は私が勝手につけたものです。
《日本には軍国主義に狂い立って狂奔する者が少なくない。その中でも安倍は特等軍国主義狂信者として知られている。国粋主義が骨髄に徹している彼は、正常な思考を備えた人では到底考えることのできない妄言を吐いて人々を唖然とさせている。(中略)
安倍について述べるなら、執権時期に狂信的な軍国主義政治を事として内外の強い抗議と圧力に気をくじかれた状態で病院に運ばれ、かろうじて生き延びた政治的屍である。そうであった彼がいまやかなり健康が回復したようである。(中略)
彼の体質化した軍国主義的本性は、現代医学によっても治すことのできない悪性腫瘍と同じである。
日本社会に軍国主義思想を流布し、過去の日帝の前轍を踏むことを生涯の使命として掲げている彼がわめき立てた「国のために」戦って死んだ人々とは、朝鮮とアジアの国々に敵対する侵略戦争で身震いするようなあらゆる蛮行を敢行して死んだ者らである。(中略)実に安倍のみが吐くことのできる毒気を帯びた妄言である。(中略)
彼は執権期間、歴代の日本執権者らが敢えて手を触れることのできなかった防衛庁を防衛省へと昇格させ、「恒久法」の制定と米国のものと類似した政策調整機構である「安全保障会議」の創設を主張した。彼は権力を掌握した後、「日本には戦犯はおらず、また、いもしなかった」「東京国際裁判所の処刑は非法であり、日本の法に基づけば、この判決は無効」だ、とわめいた。(中略)
過去に日帝がはたらいた日本軍「慰安婦」犯罪を正面きって否定し、歴史教科書から日本の侵略の犯罪行為を削除または弱めるよう積極的に唆したことをはじめ、学校における「日の丸」の掲揚と「君が代」の斉唱を口を極めて称賛しつつ、助長したのがまさしく安倍である。日本でかつて見ることのできなかった総連と関連する諸施設に対する税金免除措置をなくすよう指示し、粗暴な総連弾圧の旋風を巻き起こしたのは安倍にほかならない。(中略)
日本で安倍のような歴史のくずが大手を振って狂奔すればするほど、日本国民の不安はますます大きくなるであろうし、国の前途は暗澹たるものとなるほかない。》
…まあ、要するによっぽと安倍政権がイヤだったのだろうなあと思います。その安倍氏が再び元気になって活動していることが心配で仕方がないというわけですね。それにしても、北朝鮮が東京裁判や慰安婦問題をめぐる日本国内の議論や動向を本当に注意深く観察し、記憶していることがよく分かります。
労働新聞の安倍氏に対する論評についてはかなり前、2007年7月25日のエントリ「朝鮮労働党機関紙に見る安倍首相への敵愾心」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/245413/)でも取り上げたのですが、首相を座を去った後まで今回のように徹底的にたたいているわけです。トラウマのようなものでしょうか。他の政治家でここまで北朝鮮の攻撃対象になっている人は寡聞にして知りません。
私は、北朝鮮が嫌がることは大体において「やるべきこと」だと考えていますが、そういう単線的な考え方はいったん横に置いておくとしても、一切の日朝交渉に応じようとせず、表向きは日本無視を決め込んでいる北朝鮮を動かすには、やはり日本側が何らかの北朝鮮が困り、嫌がるアクションをとる必要があると思います。彼らは効いていないふりをするでしょうが、決してそんなことはないと。今回の労働新聞の論評を読んで、その意を強くした次第です。
by コミックカウボーイ
北朝鮮紙による安倍元首相に関…