社説

CO2削減中期計画/増加の目標などあり得ない

  2020年の時点で、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量をどこまで削減するのか、具体的な目標値の策定作業が大詰めを迎えている。

 有識者会議である「中期目標検討委員会」が6つの選択肢を示しており、政府は6月中に決める。6案を土台に最終決定するのだろうが、CO2削減対策の意義と日本の国際的な立場を十二分に考えて、目標値を設定しなければならない。

 6つの案で削減率(1990年排出量との比較)が最も大きいのは25%で、次いで15%、8―17%、7%と続く。残る2案は「1%増から5%減」と「4%増」であり、排出量の増加も見込んだ内容になった。

 これまでの国際的な交渉と削減努力を考慮すれば、増加を想定した計画などは論外だ。斉藤鉄夫環境相が今月、4%増について「世界の笑いものになる」と発言したように、国際的な信用を失墜させかねない。

 日本のような主要工業国にとって、CO2の排出量増加など許されるはずもなく、目標として増加の選択肢が示されること自体、理解し難いことだ。

 目指すべき数値として妥当なのは、15%または25%の削減だろう。それが不可能であるとしても、少なくとも10%をかなり超える削減目標を設定しなければならない。

 その前提として考慮しておきたいのは、今回は既に6%の削減枠が設定されている京都議定書(対象期間2008―12年)に続く20年までの中期目標であることだ。これで終わりではなく、2050年を見通した長期目標も既に検討が進められている。

 従って、中期目標は当然、6%を上回る削減率であるべきだ。50年時点では主要国で排出量の50%削減も議論されている中で、後戻りするような数値目標はあり得ない。

 国内でなすべきことはまず、6%削減の達成だ。既に対象期間に入っているが、2006年度の排出量は1990年度比で6.2%増えている。危うい状況であり、このままでは最初からつまずきかねない。6%削減のための対策が早急に必要であり、それを発展させる形で削減率の上積みを図るべきだ。実効性のある排出量取引制度や炭素税などを検討すべきだろう。

 昨年からの世界的な不況によって、排出削減が困難になりつつあるのは分かる。しかし、それは日本だけではない。削減率20%以上という中期目標を立てた欧州連合(EU)も同様だ。

 主要国の一員として日本に求められているのは国内での懸命な削減努力と、省エネルギー技術面での国際的な貢献だ。それを果たしながら、中国などに対し削減目標を立てるよう働き掛けていく責任がある。

2009年05月25日月曜日

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