流行を追うことの少ないカナダ人の間で、この数年来、熱いブームになり、それぞれの生活に浸透しているヨガ。世界中で人気があり、街着にもなるヨガウェアブランド「ルルレモン」はカナダ生まれである。コミュニティセンターのプログラムを見ると、Hatha Flow YogaやKundalini Yogaなど、あらゆる種類のヨガが紹介され、さらにヨガバレエやヨガレイツなどピラーテ(エクササイズの一種)をミックスした新しいカテゴリーにも発展している。そのような中で、日本人の知り合いがインストラクターになり、ヨガを教え始めた。
リョウコさんとヨガとの出合いは、カナダに来た15年前にさかのぼる。バンクーバーのセンターで週1回習い始めたことがきっかけで、「これだ!」と思ったそうだ。あくまでも趣味の一つだったが、長い年月を経て、昨年インストラクター養成コースを受講し資格を得た。体の構造、ヨガの哲学、医学的な骨や筋肉の構造を学んだ。
「人生って転機が何度も訪れますよね。わたしも、最初カナダに来た時はお花屋さんで働いて、その後、結婚し、母になって仕事を辞めました。そして今年子供たちは8歳、5歳になりました。子供がだんだん大きくなるにつれて、女性もまた一人の自分に戻り、時間も出てきます。何かをしないと……と思っていました。ヨガへの思いが深まったのは3年前に父が亡くなった時でしょうか。その瞬間瞬間を大事に生きようと思ったのです」と、リョウコさん。
ヨガの先生はたくさんいる。が、リョウコさんがメーンで教えているのは、子供や親子のためのクラスで、このアイデアがヨガブームの新しい波になりつつある。リョウコさんは「私が子育て真っ最中のころは、ヨガに行きたくてもなかなか行けなかったという思いと、親子の共有の時間を作ってあげたいという気持ちから、このプログラムを考えました。ですから、精神的にも肉体的にも手をつないだり、見つめ合ったりするコミュニケーションポーズをたくさん取り入れています。産後のお母さんたちが健康になることも大事ですし」
親子ヨガの良さは限りなくあるが、親子であっても目的が違ったり、どちらかに合わせると一方が退屈したりと、教えるのは簡単ではなさそうだ。が、子供好きなリョウコさんの視線はあくまでも優しい。子供たちがどんどん自信をつけていく。落ち着かないと言われている子が、ぴたっと一つのポーズを決めることができた。「教えながらも感動した」時、心から「ナマステ」という言葉が出た。レッスンの最後にいつも合掌して言うあいさつだ。この時間を共有してくれてありがとう、と。
人前で話すことは得意ではないと思っていたリョウコさん。が、やればできた。そして、呼吸が合い、生徒と一体化する達成感も得ることができた。今では一人でも多くのヨギーニやヨギ(ヨガをする女性や男性)が、精神的にも肉体的にも健康になることを願って教えている。
中込恵子(なかごみ けいこ)さんのプロフィール
東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。筆記具メーカーや外資系化粧品会社勤務を経て、1989年カナダ移住。日本語系新聞社勤務後、フリーライターに。2001年よりウェブショップFromwestを設立し、子ども向け語学教材の輸出を開始。2002年よりカスタムメイドのカナダ親子ステイ・アレンジ業務をはじめる。1995年&1996年生まれのボーイズのママ。
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2008年10月2日