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きょうの社説 2009年5月24日
◎北電の太陽光発電 電力供給地の重要度さらに
北陸電力の大規模太陽光(メガソーラー)発電所が、志賀町に続いて珠洲市にも建設さ
れる可能性が出てきた。志賀町では稼働中の原発二基に加えて、北電グループ初の風力発電所が福浦地区に建設中である。北電にとって、石川県は既に発電電力量の五割前後を占める「電力供給県」になっており、自然エネルギーの供給地としても、石川県の重要度は今後さらに高まるだろう。私たちは、志賀原子力発電所1号機の再稼働を機に、北電に対して金沢市にある石川支 店を「本店」に格上げできないか熟慮するよう求めた。「臨界事故隠し」の原因の一つは、電力供給の現業部門と、経営本体の中枢部門が、距離的にも心理的にも遠い関係にあったと思うからである。一昨年、志賀町に原子力本部が移管され、経営責任を持つ副社長と常務が常駐し、業務を統括するようになったのは大きな一歩だが、さらにもう一歩踏み込んで、金沢本店と富山本店を同格扱いとし、事実上の「二本社制」に移行できないか。 能登には、志賀原発1、2号機(計百八十九万キロワット)と石炭燃料の七尾大田火電 1、2号機(計百二十万キロワット)が稼働している。新たに志賀町に建設される北電のメガソーラー発電所は一千キロワット以上の発電出力を持ち、一般家庭二百五十軒の年間使用電力量をまかなう。 能登は冬場の日照時間が少ないが、四月から十月にかけては北九州をしのぎ、静岡県と 同等といわれる。北電は同じタイプのメガソーラー発電所を石川県にもう一カ所建設する計画で、珠洲市がその候補地になった。このほか、志賀町では二〇一一年一月に最大発電量二万一千六百キロワットの福浦風力発電所が完成する。能登は風が強くて土地価格が安く、風力発電の好条件がそろっている。また、豊富な森林資源を再利用した木質バイオマス発電の実用化計画も着々と進んでおり、来年度から七尾大田火力発電所2号機に導入される。 地球温暖化対策を景気浮揚や雇用創出に役立てる政府の日本版「グリーン・ニューディ ール」構想は、北陸では能登が中心になるだろう。北電は電力供給地の重要性を再認識してほしい。
◎農業政策の見直し 総選挙の争点にしたいが
先に閣議決定された二〇〇八年度農業白書は、食料需給が世界的にひっ迫する恐れが依
然強いことから、水田をフルに活用して食料自給率の向上を急ぐ必要があると強調し、コメの生産調整(減反)など農業政策の課題について、あらゆる角度からの見直しを提起した。減反政策の見直しは、現在の農政改革の最大の焦点であり、農家だけでなく、農業維持 のための財政負担者でもある消費者側も含めた国民的な議論が必要である。その意味で、農政改革は次期総選挙の格好のテーマであり、与野党は日本農業の将来像と具体的政策を示してもらいたいと思うが、選挙目当ての政策論争から農業再生の正しい道筋が本当に示されるかどうか不安もつきまとう。 コメの作付面積を減らして価格を維持する減反政策は、一九七一年から本格的に行われ ている。過剰生産による価格の低下を防ぐために必要とされてきた政策ながら、それによって農業の足腰が強化されたとは言えず、農業立て直しの明るい展望が開かれたわけでもない。コメ価格の下落傾向は続いており、減反割り当てに従わない農家も増えている。 こうした状況から、石破茂農水相は今春、減反参加の判断を農家にゆだねる「減反選択 制」の検討を表明した。減反に参加しない農家は自由に生産を増やせるが、価格が低下しても国の所得補償は受けられない。自由化の方向へ大きくかじを切る改革案である。 しかし、減反緩和による価格急落で多数の兼業農家が打撃を受けることを恐れる声が自 民党内には根強い。農村を支持基盤にしてきた自民党は前回参院選で、手厚い戸別所得補償を公約に掲げる民主党に敗れた。その苦い経験もあって、減反選択制の議論は広がりを見せていないようだ。一方の民主党も、減反政策について明確な方向を示していない。 農業は国の大本ともいわれ、産業の柱として復活させる必要がある。そのためには、農 村票の奪い合いといった次元を超えた政策論議が求められる。選挙前にそれはかなわぬことだろうか。
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