朝鮮民主主義研究センター

2009年5月24日

王様は裸だ、と叫べない人たち

先週紹介した論議に関連して、在日コリアンのF1977さんが次のように書いている

「朝鮮」という国家と「朝鮮人」とを、わけて考えることが、できるのでしょうか。「朝鮮人」ではなく、「朝鮮」だけを批判し、「朝鮮」という国家を否定することができるのでしょうか。

彼女は高校時代の記憶を語る。同じ学校に朝鮮学校出身の在日コリアンのIさんがいて、本名を名乗っていた。通名を使っていたF1977さんは引け目を感じていた。ある日、在日コリアン同士が集まった場で、F1977さんはIさんに向かってこう言ったという。

キム・ジョンイルみたいな、独裁者の肖像画を教室に掲げて信じている学校なんて、おかしいと思う

Iさんは「当惑したような悲しそうな瞳」をしたまま何も言い返さなかった。F1977さんは彼女を傷つけてしまったことに気づいて今でも後悔している、ということだ。

このエピソードがなぜ<朝鮮の国家と人民を区別することはできない>という結論に結びつくのか、今ひとつ分からない。F1977さんは肖像画について「王様は裸だ!」と素直に叫んだにすぎない。Iさんを金正日体制の支持者であるかのように決めつける言い方は配慮が足りなかった、とは言えるかもしれないが、発言の内容自体はごく普通に民主主義を学んだ者なら誰でも感じることだ。

F1977さんは「当惑したような悲しそうな瞳」に反撃されて裸の王様を笑う感性を失ってしまった。しかしそのような在日コリアンは現在ではきわめて少ない。在日コリアンの中でも肖像画に違和感を覚えるほうが多数派だ。金正日を批判されて当惑するごく少数の人たちより、金正日のせいで飢えたり収容所に送りこまれたり中国に脱出せざるをえなくなったりした人たち、否応なく「朝鮮」という国家から切り離されてしまった朝鮮人のほうがはるかに重要でもある。

今週の北朝鮮(2009/05/16-2009/05/22)
投稿者 kazhik : 2009年5月24日 10:45
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