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体験の高校生ら心境語る 新型インフル国内感染 '09/5/23

 国内で初めて新型インフルエンザ感染者として確認されたのは八日にカナダから帰国した高校生らだった。同行の生徒らも空港近くのホテルに一週間、停留させられた。一方、関西では人から人へ感染したとみられる発症が高校生を中心に広がった。政府や自治体が対応に追われる中、彼らは何を感じたのか。

 ▽周囲の騒ぎにびっくり ホテル留め置きの生徒

 大阪府寝屋川市の府立高校二年の男子生徒(16)は、カナダ短期留学から戻った一行のうち四人の感染が判明し、「濃厚接触者」として成田空港近くのホテルで一週間の停留を余儀なくされた。

 ホテルでニュース番組を見て驚いた。「そんなに大げさな話なのか。騒ぎすぎではないか」。外出もできず、一緒に停留させられた友人とも自由に会えない生活が続いたが、不安はなかったという。「周りの人がみんなマスクを着けているのは珍しい経験だった」と振り返る。

 関西では高校生を中心に感染者が相次ぐ。生徒は「周囲は騒ぐかもしれないけど、感染していても、隔離されていても、慌てないでって伝えたい」と話した。

 ▽「不安がることない」 成田で初確認の生徒

 「そんなに不安がることないで」。成田空港の検疫で九日、国内初の感染確認例となった大阪府寝屋川市の府立高生らのうちの一人、二年の男子生徒(16)が、約一週間入院していた千葉県内の病院から帰宅後、初めて取材に応じた。

 二十一日午後。自宅で会った生徒の顔色は良く、終始笑顔で「元気です」とまったく病後を感じさせない。

 約二週間のカナダ短期留学から帰国する三日前、突然のどが痛くなった。最高三八度の発熱で病院へ。新型ではないかと医者に尋ねると「ただの風邪」と告げられた。頭痛や関節の痛みはあったが「新型の知識もなかったし不安はなかった」。風邪薬を処方され熱は下がった。

 ほとんど治ったが、成田に到着した機内で発熱があったことを申告。検査の結果は陽性だった。「なんで自分が…」。入院中、いちばんつらかったのはインターネットでの中傷。ほかにすることがなく、携帯電話でつい見てしまった。

 同級生には「迷惑掛けてごめんな」とメールした。だが帰宅後、心配をよそに温かく迎えてくれた。「初登校日、普段通り接してくれてうれしかった」

 生徒の父親(50)は「息子の症状は軽かった。政府は一律の対応ではなく、症状に合わせて対応を変えるべきだったのでは」と振り返った。

 ▽「薬で治った」 兵庫の高3、陽性に驚き

 兵庫県内で感染が拡大する中、発症して入院した県立兵庫高校三年の男子生徒(17)は「今のうちにかかっていた方がいい。免疫ができてラッキー」と受話器の向こうで冗談めかして笑った。「治療薬を処方され寝てたら治った。それほどつらくはなかった」

 二十日、入院中の生徒に電話で話を聞くと、症状は既におさまり「ほとんど健康」と話した。

 症状が出たのは十五日夕。下校中にだるさを感じ「風邪かな」と思った。常備薬を飲んだが効かず、頭や首、肩にずきずきと筋肉痛のような痛みも。「その晩が一番しんどかった」と振り返る。

 翌十六日の朝、体温は三八・三度に。病院で受診し、検査で新型陽性と診断されてそのまま入院した。「とにかくびっくりした」

 兵庫高は八日、国内で初めて感染が判明した男子生徒が通う神戸高と交流試合をした。感染原因について生徒は「応援席は人でいっぱいだった。そこで感染したと思う」。入院生活は「やることがなくてとにかく暇」とぼやいていた。




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