2009年5月24日
女子差別撤廃条約/議定書の批准は必要ない
男女の違いや伝統文化までも否定するジェンダーフリーは、本来の男女共同参画社会とは異なるとして是正されつつあるが、女子差別撤廃条約の「選択的議定書」を批准し、それによって再びジェンダーフリーを日本社会に持ち込もうという動きが出ている。議定書が批准されれば内政干渉を招き、ジェンダーフリーを強要されかねないだけに、批准をすべきではない。
不当な内政干渉招く
ジェンダーとは「社会的・文化的に規定される性差」(岩波女性学事典)とされ、それをなくすジェンダーフリーは男らしさや女らしさなどの男女の違いまで否定する考えだ。
例えば、専業主婦を「固定的役割分担」と決め付け、夫婦同姓まで差別とする。雛祭りや端午の節句などの伝統文化も否定し、学校では男女同室着替えや同室宿泊などを推進し、男子トイレの表示が青、女子トイレが赤やスカートの絵を使うのも差別としてやり玉に挙げる。それで少なからず社会が混乱した。 このため政府は二〇〇五年十二月、ジェンダーフリーは本来の男女共同参画社会とは異なるとして男女共同参画基本計画(第二次)で是正方針を示した。ところが、一部の人々は再び、ジェンダーフリーを持ち込もうと、女子差別撤廃条約の「選択的議定書」の批准に動いている。
条約は、締結国の女子差別撤廃の進捗状況を検討するため女子差別撤廃委員会を設置し、締結国(わが国は一九八五年締結)に報告書を提出させ審査している。民間団体が独自のリポートを提出できるが、間接的な関与にとどまっている。これを直接関与できる仕組みを作ろうというのが「選択的議定書」で、国連は九九年に採択した。
選択的とするのは、締結国が批准するかしないか自由に決めることができるからだ。批准すると国の報告を待たず、個人や民間団体が「違反」を直接、国連に通報でき(個人通報制度)、委員会がこれを受理すれば、その国に調査団も派遣できる。
調査団派遣には国の同意などの条件があるが、拒めば「人権侵害国」とされる。また国に委員会の見解や勧告の広報義務を課し、これらによって事実上の拘束力を持たせている。
ジェンダーフリー推進派は、これまで「差別」として(1)従軍慰安婦(2)賃金の男女格差「間接差別」(3)夫婦別姓(4)婚外子差別(5)家庭の無償労働などを挙げ、委員会に働き掛け、日本政府に圧力を掛けてきた。議定書が批准されると、これら主張だけでなくジェンダーフリー是正策も「差別」として通報する構えだ。四月に開かれた自民党外交等合同部会で一部議員が今国会での批准を求めたが、疑問の声が出され結論は見送られた。このため野党に働き掛け、今国会での批准を目指すとしている。
社会混乱生じさせるな
だが、わが国は法治国家だ。差別や人権侵害があれば、国内法で解決が可能である。内政干渉を招きかねない議定書を批准して、伝統文化や家族制度を根底から揺るがし、社会混乱を生じさせるようなことがあってはならない。批准の選択はそれぞれの国の自由だ。わが国には不要である。