2009年5月23日11時7分
【ジュネーブ=前川浩之】世界保健機関(WHO)のケイジ・フクダ事務局長補は22日夕(日本時間23日未明)の記者会見で、新型の豚インフルエンザの感染拡大について「42カ国で1万1168人が感染したが、感染者数は強調しない」と語り、WHOとして今後、感染者数の増加や地域的な拡大よりも、途上国での大流行や重症化を重視していく考えを明らかにした。
フクダ氏は今後数カ月、感染者の増加は続くとの見通しを示したうえで、米国などがすでに感染者の全数把握をやめていることなどを例に挙げて「このインフルはどれだけ人に害があるのか」が重要だと強調。多くの症例が軽度の現状から、南半球の最貧国での感染拡大や重症化への変異など、「変化の兆候」を注視していくとした。
WHOが定める警戒レベルを現在のフェーズ5から6に上げる際には、感染者数や地域的な広がりだけでなく、こうした重症度などに関する「変化」を前提にする考えを示した。
地理的拡大以外を考慮した警戒レベルの「新基準」については「今はじっくり考える時だ。死者が何人だとかではない新たな側面を考えなければならない」と語った。感染拡大が続く日本の状況だけでは「必ずしも警戒レベルを上げることにはならない」と述べた。
またフクダ氏は、ワクチンの製造開始時期が6月末から7月初めごろになるとの見通しを示した。