きょうの社説 2009年5月23日

◎ネットトラブル 親も怖さの実態を知ろう
 深刻化する携帯電話やインターネットを利用したいじめや犯罪から生徒を守るため、石 川県教委は教職員を対象にした「ネットトラブル防止地区別講習会」を今夏初めて開催する。富山県教委も教員研修などを強化しているが、連携すべき保護者の関心が低ければ、トラブル防止の効果は薄れる。親にいじめや犯罪の実態を正しく伝え、子どもの携帯利用に対してより関心を持たせる取り組みも強めてほしい。

 親の側の責任は、とりわけ重い。学校へ携帯を持ち込まなくても、家庭での使用に親が 無関心であれば、子どもを危険にさらしかねない。親は、ネットの仕組みを理解し、「ネットいじめ」などから未成年の自殺、犯罪につながる場合があることを重く受け止めてほしい。子どもたちが、どのように携帯を利用しているのか、日ごろから把握しておく必要がある。

 文部科学省が昨年実施した利用実態調査によると、携帯電話を持つ中学二年と高校二年 の約65%が、他人の悪口などを書き込んで転送させる「チェーンメール」といったトラブルを経験している。携帯の所有率は小六が約25%、中二が約46%、高二約96%で、文科省は、早い段階からの指導が重要と指摘している。

 「チェーンメール」のほか、情報や意見を書き込む「掲示板」や「学校裏サイト」「プ ロフ」などによるネット上のいじめは、親や教職員の目につきにくく、水面下で深刻な状況に陥ってしまうことが懸念されている。学校、PTA、警察、携帯電話会社などの関係機関が連携を強めているが、ネットの匿名性から対策は決して容易ではない。

 携帯サイトへの接続を制限する「フィルタリング」を、子どもから言われたからといっ て、安易に解除するとアダルトサイトや出会い系サイトなどの違法・有害サイトにもアクセスが可能になり、事件に巻き込まれる可能性が高まってしまう。携帯所有の可否や利用する際のルール、マナーなどについて、親子で話し合い、親がしっかりと子どもを見守っていきたい。

◎文化財ボランティア 歴史都市磨く実働部隊に
 金沢市が養成した文化財愛護推進員でつくる「金沢文化財ボランティア『うめばちの会 』」が発足し、市の歴史遺産探訪会の企画や加賀八家墓所での測量補助、さらには市内に埋もれた石造物の碑文調査などに取り組むという。会員には、観光ガイドの「まいどさん」のメンバーをはじめ、金沢の歴史に習熟した人が多い。地味で根気のいる文化財保護の“実働部隊”として、これまで光の当たらなかった史跡の発掘や景観保存への提言なども精力的に行い、「歴史都市」金沢を磨いてもらいたい。

 二〇〇四年に養成事業がスタートした市の文化財愛護推進員には、一期、二期それぞれ 二年の研修を終えた四十八人が登録され、これまでに市内に設置されている「歴史のまちしるべ標柱」のペンキ塗り替えや、市の文化財パトロールなどに参加している。

 登録者の中には、伝統技術の職人なども多く、研修で培った問題意識を土台にして、民 家を改装中に貴重な古チラシ「引札」を多数発掘した人もいる。

 うめばちの会は、推進員がこれまでの取り組みを発展させ、より積極的に自主的な活動 を行うことをめざして作ったボランティア組織である。文化財研究の補助となるフィールドワークはもちろん、会員がテーマを決めて研修会を開くことも検討しており、より一層、市民の目線に立って、文化財と一般市民との距離感を縮める役割が期待される。

 金沢市では、市民ボランティアでつくる景観サポーターが、定まった地点の風景写真を 撮影し、景観の移り変わりを資料として将来に残す取り組みを来月からスタートさせる。このように市民が「わが町意識」を持って、生活の現場の歴史的価値に目を向ける活動が目立ち始めてきた。

 うめばちの会では、今後も順次会員を増やしていく方向だが、書籍などで知識を得なが らも、自ら現場に立って文化財の保存、調査、および普及活動に参加することで、歴史都市への愛着は増すだろう。若い世代も含めて、参加を促していきたい。