ゴーギャン展 2009|7月3日[金]−9月23日[水・祝] 東京国立近代美術館  
 
《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》
本展のみどころ
ゴーギャンは、なぜ熱帯の島タヒチに向かったのか。
文明と野蛮、聖と俗、生と死、男性と女性、精神と物質、
これらの両極に引き裂かれながら、
人間の根源を探究し続けた画家ゴーギャン。
日本初公開となるタヒチで描かれた大作
《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》
を中心に、画家が文明社会に向けて残したメッセージを読み解きます。
 19世紀末の爛熟した西欧文明に背を向け、南海の孤島タヒチにひとり向かった画家ポール・ゴーギャン(1848-1903)。 その波乱に満ちた生涯は、芸術に身を捧げた孤独な放浪の画家の典型といえるでしょう。
自らの内なる「野性」に目覚めたゴーギャンは、その特異な想像力の芽を育む「楽園」を求めて、
ケルト文化の伝統を色濃く残すブルターニュ、熱帯の自然が輝くマルチニーク島、ゴッホとの伝説的な共同制作の
舞台となった南仏アルル、そして二度のタヒチ行きと、終わりの無い旅を繰り返しました。
その過程で、自ずと人間の生と死、文明と野蛮といった根源的な主題に行き着きます。
このような人間存在に関する深い感情や思索を造形的な言語を通して表現すること、これがゴーギャンの絵画の
課題だったのです。
タヒチで制作された畢生(ひっせい)の大作《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》
(1897-98年)は、画家が目指した芸術の集大成であり、その謎めいたタイトルとともに、後世に残されたゴーギャンの精神的な遺言とも言えるでしょう。この展覧会は、日本初公開となるこの傑作を中心に、国内外から集められた油彩・版画・彫刻約50点の作品を通して、混迷する現代に向けられたメッセージとして、あらためてゴーギャンの芸術を捉えなおそうとするものです。
《異国のエヴァ》 1890-94年 《かぐわしき大地》1892年 油彩・キャンバス 大原美術館(7月3日〜8月30日期間限定展示)
《異国のエヴァ》 1890/94年
水彩・紙 ポーラ美術館(ポーラ・コレクション)
《かぐわしき大地》 1892年
油彩・キャンバス 大原美術館
(7月3日〜8月30日期間限定展示)

ゴーギャンの最高傑作
《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》が日本初公開!

この縦139.1×横374.6cmの大作は、ゴーギャンが残した最大の作品であり、タヒチ時代のみならず、
ゴーギャンの全画業の中でも、最も複雑で謎に満ちたものです。1936年にボストン美術館に所蔵されてから、
この作品がアメリカ合衆国外で公開されるのは、今回で3例目となります。

《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》に多角的なアプローチを試みます
展示効果にもご注目ください

ゴーギャンが、この大作を構想するにあたって西欧の伝統的なフレスコ画を意識していたことから、
他の作品と併置するのではなく、大きな空間に1点、まるですべての観客に謎を投げかけるモニュメンタルな
壁画のように展示することにしました。
別のコーナーでは、作品がもつ複雑な魅力に分け入るヒントを散りばめた複数の映像をご覧頂きます。
作品と資料を駆使しながら、この畢生の大作を様々な角度から読み解いていきます。

内なる「野性」を追い求めたゴーギャンの芸術の展開が、代表的な作品を通して把握できます

印象派の影響から脱していくブルターニュ時代の作品から、タヒチでの飛躍、そして《我々はどこから来たのか》以後最晩年の作風にいたる変遷を、造形と主題の両面から辿ることができます。
ボストン美術館以外に、ニューヨーク近代美術館、クライスラー美術館、プーシキン美術館、テートギャラリー、
シュトゥットガルト州立美術館などから、日本初公開を含む厳選された作品が集められています。
絵画の空間構成における試み、あるいは楽園のエヴァや、ゴーギャンの自画像ともいえる「野蛮人」という
テーマに沿って、複数の作品が関連づけられます。
■さらに詳しい章解説と作品解説はこちら
内なる「野性」の発見 熱帯の楽園、その神話と現実
南海の涯て、遺言としての絵画 《我々はどこから来たのか》作品解説