2009年5月23日3時2分
感染者が増え続ける新型の豚インフルエンザは当初、高校生たちの間で広がっていった。思いもしなかった感染を突然告げられ、病院に隔離される驚き。無事に退院した大阪府北部に住む男子高校生(16)が、その体験を語ってくれた。
学校でインフルエンザの生徒が急増した13日の夕方、心配する母に促されて熱を測った。39.4度。「言われてみればだるいな」。自覚症状はほとんどなかった。近くの診療所で簡易検査を受け、季節性のインフルエンザA型と診断された。5日分の抗ウイルス薬リレンザをもらった。
母は異常行動などの副作用を心配して翌日から仕事を休み、外出も控えて見守ってくれた。食欲がなく、せきとだるさは続いたが、熱は2日後に37度に下がった。
16日、兵庫県立高校の生徒が国内で初めて新型インフルエンザに感染していたことが報じられたのを受け、学校の指示で保健所へ。「まさかな」と思いつつ、鼻の粘膜から検体を採られた。同級生の男子の姿も見かけた。
帰宅後の深夜、保健所からかかってきた電話を母が受けた。
「新型が陽性でした。とりあえず入院してください」
「あれ、もう治ってきてるのに?」
自身も「本当?」と耳を疑った。「発熱のピークは過ぎている」と冷静に振る舞っていた母だが、救急車で迎えに行くと言われると、「防護服で来るのですか。サイレンは鳴らしませんよね」と焦っていた。救急車はサイレンを鳴らさずに到着。隊員は全身を覆う水色の防護服を玄関で身にまとった。17日午前2時ごろのことだった。
車内で、保健所で会った同級生と一緒になった。「あいつも」。互いに顔を見合わせた。
府南部の指定病院に着き、専用口から隔離病棟に入った。通された6畳ほどの個室にはベッド、机、いす2脚。窓は開かず、エレベーターに続く扉も施錠されていた。明け方まで寝つけなかった。